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秀長2

 侍勤めも疲れる。狗は秀長に呼ばれない限り天井裏を動き回っている。天井裏ではそろりの手のもの交代で見張っている。だが時々軍師の下忍も出くわす。
「蝙蝠です」
「どこかに行っていたのか?」
 この真下は茶々の部屋だ。
「秀長殿と秀次殿の元へ行っていました。出来は悪くはないのだが運のない男と秀長殿が言っておられます。どうも秀吉殿に今後後継ぎがない場合は秀次殿らしく秀長殿が気にかけられています」
「ところで茶々は?」
「こちらで交代で見張っていますが、始めは毛嫌いされているようでしたが、どうも最近は茶々から誘っている節があります」
「それは胡蝶のだろうな。天海が後ろで糸を引ている」
「やはり天海は光秀ですか?」
「間違いない」
「それと揚羽は調べたか?」
「はい。黒田家に腰元として召し抱えられています。くノ一の報告で調べに行ったのですが、軍師は揚羽が徳川のくノ一と知っているようです。というより宗矩の繋ぎとして使っている節があります」
 狗は蝙蝠に目配せした。蝙蝠は梁に隠れて狗はゆっくり剣を抜いた。服部の忍者だ。だがただものではない。押し付けられるような圧迫感がある。この忍者はどこかの部屋から上がってきたのだ。
「狗か?」
「服部半蔵?」
 家康は柳生とは別に服部を動かしている。半蔵自身が動いているとなると、いよいよ大坂城に家康が来ると言うことだ。宗矩と半蔵は張り合わされていると言う感がある。
「いずれ戦うことになる」
と言うなり姿を消した。この先と言えば千利休?

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