おでん狂想曲……いや、6世のほうじゃなくて その2
さて、昨日は味は問題なかったものの、その販売方法で大失敗になってしまったおでん販売なんですが……現在あれこれ対策を検討しています。
そもそも、元の世界のコンビニおでんだって、こんなにレジ前に行列が出来てることを想定している店なんてまずありませんからね……ましてや、向こうの世界では閑古鳥が鳴き続けていたコンビニおもてなしではなおさらなわけです……
で、まぁあれこれ考えてですね、どうにか解決作を考えつきました。
弁当の状態にして販売する方法です、はい。
ただ、この方法には大きな問題点がありました。
早く売らないと冷めちゃうってこと。
今回作成したおでんはしっかり味が染みていますので、少々冷めても美味しいとは思います。
でも、出来ればなるべくあったかいままお売りして、温かいうちに食べてもらえたらなぁ、と思うわけです、はい。
「先にまとめて容器に詰めておいても、ずっと温かいまま保存しておくことが出来る……そんな都合のいい保存方法……」
そこまで呟いて、僕はハタと思いつきました。
「あ!? 魔法袋!」
そうです。
容器に詰めてから魔法袋に保存しておけば、魔法袋に入れた時の温度のまま保存出来ます。
売り場には試食と見本だけ置いておいて、購入希望者はレジで一声してください、にすればどうにかなるんじゃないかな?
そう考えた僕は、この日早速その作戦を実行してみました。
昨日と同じように、弁当の調理を始めると同時に、おでん保温機でクツクツおでんを煮込み始めます。
昨日と違うのは、このおでん保温機を、厨房に置いていることです。
んで、弁当の箱詰めが終了すると同時に、今度はおでんを容器に詰めていきます。
詰めては魔法袋にいれ、また詰めていく。
この作業をえっちらおっちら繰り返していきます。
ちなみに中身は、今のところ具が6種しかありあせんので、全部1個づつ入れました。
ほどなくしておでんの準備も出来ました。
予定通り試食と見本を弁当コーナーの脇にセットしておきまして……さぁ、今日の営業開始です。
◇◇
そして昼を回りました。
コンビニおもてなしの一番忙しい時間帯を無事乗り切ったわけですが、おでんも無事完売いたしました。
今日はレジがおでん思考中で混雑することはありませんでした。
昨日、購入出来た皆さんは
「昨日のあれ、また食べたいなと思ってさ」
そう言いながら買っていきました。
で、昨日突如販売中止になったため購入出来なかったお客様は、
「やっと食べれるんだ、このおでんっての」
そう言いながら買って行ってくれました。
毎度のことですけど、ここ、コンビニおもてなしで新商品を販売すると、とりあえず買ってみようかって皆様が多数存在します。
で、気に入ってくださると、周囲の皆さんに
『おい、コンビニおもてなしの新商品、あれうまいぞ!』
ってな具合で宣伝してくださるもんですから、どんどんお客さんが増えていくわけです、はい。
この調子で、明日も売れてくれるといいなぁ。
で、このおでんですけど、セットしておけば、あとは機械が勝手にクツクツ煮込んでくれますので、まぁ調理方法としてはとても簡単です。
だし汁を作成するまでが大変でしたけど、このだし汁をどうにか完成させることが出来た今となっては、ただ煮込むだけの商品なわけですから。
そんなわけで、毎晩営業していますビアガーデンでも販売してみました。
温暖な気候のこの世界ですけど、さすがにそろそろ朝晩は寒さを感じなくもないかなって気候になりはじめているわけです。
で、この夜早速、おでん保温機を屋外に出して販売してみましたところ
「ほほぅ、これはなかなか……」
「うん、美味しいじゃないか」
と、なかなか好評でした。
スアビールとおでんも悪くはないとは思うんですけど……やっぱ、おでんには酒だよなぁ、と思うわけです。
で、タクラ酒をですね、燗してビアガーデンで出してみるようにしてみたんですけど、
「ほぉ、これはなかなかいいですねぇ」
「温かいお酒なんて初めてだよ」
と、おでんよりもこっちの方が好評でした。
なんでも、この世界のお酒はですね、燗する習慣がないそうなんですよね。
まぁ、この世界の一般的な酒のエールは、暖めたらアルコール分が飛びまくってしまって、とても飲めたもんじゃないって味になっちゃうので、それも影響してるんだと思いますけどね。
そんなわけで、ビアガーデンの販売品目に、おでんとタクラ酒~熱燗~が加わりました。
そんな感じで、本店で1週間おでんの試験販売を続けてみたところ、右肩上がりで販売数は増えていきました。
作った分だけ、全部売れていく感じですね。
ウインナーに関しては加工が必要なのですが、すでにスアの使い魔の森にいるスアの使い魔達に作り方を教えていまして、ウインナー造りを初めてもらっています。
今のところ、まだ悪戦苦闘って感じなんですけど、徐々に一日の完成数が増え始めていますので、そのうち安定供給できるようになるんじゃないかって思っています。
ロールキャベツも、スアの使い魔達に作り方を教えまして、増産してもらうことにしたんですけど、こっちも徐々に生産数が増えていますので、もうしばらくの辛抱って感じです。
ちなみに、ウインナーとロールキャベツは、別々の使い魔グループに作成をお願いしているんですけど
「おい! ロールキャベツ組になんか負けるな!」
「ウインナー組のがさつな人達になんか負けませんわ!」
と、いつの間にかこの2グループがですね、互いに競い合い始めた結果。
ほんの一週間ほどで、予定していた数量を生産出来るようになっていきました。
……なんて言いますか、ホント何が幸いするかわからないものです、はい。
まだ練り物とか、豆腐、こんにゃくなんかには目処が立っていませんけど、これらの品々も、いつかは挑戦してみたいなぁ、とは思っているんですけどねぇ……
練り物は、白身の魚が手に入らないし
豆腐は大豆
こんにゃくは、こんにゃく芋と……
今現在のところ、この世界では入手出来るかどうかわからない品物が必要なもんですから……はてさてどうなりますやら、って感じです。
◇◇
さて、ウインナーとロールキャベツの生産ラインが無事出来上がったのを受けまして、おでんを他の店でも販売することにしました。
まぁ、加工と容器詰めはすべて本店がして、そのおでんを魔法袋に詰めたものを、ヴィヴィランテスが各地のコンビニおもてなしまで運んでいくわけです。
本店の中にある、転移ドアを使用して移動していくので、あっと言う間です、はい。
で、2号店から4号店まで、すべての店で販売を開始したんですけど、このおでん、どの店でも好評でして、初日準備した分はすべて完売しました。
これは明日からの分も増やしておかないと……そう思っていたらですね、僕の元にコンビニおもてなし食堂エンテン亭を営業している猿人四人娘がやってきまして、
「タクラ店長、このおでんをですね、ウチのメニューに加えさせてもらいたいんですけど……」
って、相談してきました。
確かに、このおでんって食堂で出しても悪くないな、と思った僕は、早速作り方を教えていきました。
まぁ、出汁の取り方を一緒に何度も練習していったんですけど、猿人四人娘達は、やっぱ料理が上手といいますか飲み込みが早いんですよね。
1時間もしないうちにばっちり覚えてくれました。
もう少し練習してから店のメニューに加えると猿人四人娘達は言っていました。
最初はどうなるかと思ったおでん販売ですけど、こうしてどうにか、コンビニおもてなし全店で販売を開始することが出来ました。
こうして、『おでん始めました』の旗を店の前に並べることが出来ますと、あぁ、夏が終わるなぁ、ってつくづく思うんですよねぇ。
ちなみに、このおでんなんですけど、スアとパラナミオもとっても気に入ったみたいでですね、
「パパ、今日のおやつはおでんがいいです!」
って、パラナミオが笑顔で言うもんですから、我が家のおやつは最近ずっとおでんです、はい。