こんにちは赤ちゃん その2
昨日から酒飲み娘48にプラス1状態の、どうも僕です。
昨日、僕の嫁でありますエルフの伝説的魔法使いのスアが無事男の子を出産しました。
スアの使い魔の森で、パラナミオの脱皮の手伝いをしている最中にいきなり産気づいたもんですからすっごくアタフタしたものの、スアの使い魔の、キキキリンリンをはじめとした女性陣の活躍のおおかげで母子ともに健康です。
「いやぁ、スア様超高齢出産の上に初産ですから、ホント心配しましたよ」
桃色琥珀蜘蛛のエディハがそう言って笑っていたんですが、それに対してスア、首を激しく左右に振っていき、
「……私、まだ20代、よ……だから初産は当たり前、よ」
と、その場にいた全員が大爆笑するようなことを言いだしたりして……あ、スア、笑われて、なんか顔を真っ赤にして横を向いちゃった。
で、パラナミオの脱皮を改めて綺麗に終了させてから、僕ら一家は一度コンビニおもてなし本店裏にあります巨木の家へと帰りました。
で
話を聞きつけて、まず最初に駆けつけて来たのはコンビニおもてなし2号店店長のシャルンエッセンスでした。
「タクラ様! スア様! おめでとうございますぅ」
手に巨大な花束を抱えて巨木の家に駆け込んで来たシャルンエッセンスは、すでに感極まった状態で大泣きしていました。
「私……タクラ様のことを実の兄のように慕わせていただいておりますの! ですから、スア様のご出産がですね我が事のようにうれしいのですよぉ」
そう言いながら、ワンワン泣いているシャルンエッセンス。
以前、メイドのシルメールからこっそり聞いたことがあったんですけど……
シャルンエッセンスは、幼いころから実の兄にべったりだった兄大好きっ子だったそうなんですよね。
それが、貴族だった実家が崩壊しそうになったとき、その兄が全ての責任をシャルンエッセンスに押しつけて行方をくらましてしまうという事件が発生して以後、ひどい人間不信に陥っていたんだとか……。
そんな中で、僕がシャルンエッセンス達が起こしたコンビニごんじゃらす事件を力業で解決してですね、シャルンエッセンスと残っていたメイド達を結果的に救ったことで、シャルンエッセンスは僕のことを実の兄代わりとばかりに慕っているんだ、と。
そんなシャルンエッセンスは、スアの横で気持ちよさそうに眠っている赤ちゃんを見て
「ほわぁ!? な、なんて可愛いのでしょうか」
そう言いながら、また号泣していきまして……いや、もう、すごかったです、はい。
次いで、イエロ・セーテン・ルアの3人が近隣の狩猟から戻ってきまして、ざっと汗を流してからかけつけてくれました。
「いやぁ、さすがお二人のお子様ですな、実に凜々しいお顔立ち」
「ダーリン、アタシへの子種もお待ちしてますキ」
「とにかくこれはもう飲むしかないだろう!」
男の子をひとしきり愛でると、3人は僕をいきなり担ぎ上げ
『ワッショイワッショイ』
と言いながらビアガーデン会場まで連行していきました。
「ちょ、ちょっと待ってってば、今日はそもそも店が休みの日なんだし、今日くらいは子供達とスアの側に……」
そう声をあげる僕に、
「おとなしく諦められよ、これも人徳というものさ」
なんか、いつのまにかララデンテさんに、オデン6世までもが僕を担ぎ上げる輪に加わっていてですね……
いや、それだけじゃありません。
ヤルメキスが、転がりながら走って来て
テンテンコウ♀が躍りながら駆け寄ってきて
4号店のクローコさんやツメバ、黒騎士骨人間のクーログロらが、転移のドアから駆け出して
役場のエレエも街道の向こうから走ってきてます
ブリリアンは……僕を無視してスアの方へ走っていますが
あぁ、3号店のエレまで姿を見せています。
「おい、街のみんな! コンビニおもてなしの店長のタクラさんとこに長男が生まれたぞ!」
ルアが、僕を担ぎ上げたまま、街道に向かって大声をあげました。
すると、今日はお休みの日ということもあって、大半の店が閉まっている中、
「何! ついにか!」
「おめでとう! 店長」
「ヤルちゃまの弟ちゃまができたのですわねぇ」
近隣の家や店からドンドン人々が姿を現してきます……って、え、えぇ!?
で、その光景を見たイエロ、
「うむ、これはこの界隈だけにお伝えしたのでは不義理でござる」
そう言うと
「皆の衆、酒盛りの前に、このままガタコンベの街を一周し、このめでたきお知らせを喧伝して回ろうではござらぬか!」
「キ! 異議なしキ!」
「よっしゃ、いっちょ派手にいくぜ!」
「テンテンコウも躍っちゃうよぉ!」
「はっはっは、いいなこの雰囲気! 現世の祭りは最高だな、うん」
ちょ、ちょ、ちょっと待ってぇ!?
それは勘弁してくれぇ……マジで、これ恥ずかしいってばぁ
悲鳴を上げる僕のことなどお構いなしとばかりに、イエロ・セーテン・ルアを中心にしたタクラ神輿実行委員会の面々は、どんどん人数を増やしながらガタコンベの街道をぐるっと一周していきました。
気がつけば、猿人の衛兵やら、街の人達やらが、担ぎ上げられたまま運ばれていく僕の後をドンドンついて来ていまして……な、なんなんですか!? このすごい行列は!?
そのまま、街を一周した一行は、ようやく店の裏側の河原、コンビニおもてなし本店のビアガーデンスペースに到着しました。
ここでようやく神輿状態から解放された僕なんですけど、気がつけばすごい数の人・人・人がですね、僕達の後方に連なっていまして……
……あぁ、これはもう飲むしかないですね
と、観念した僕は、そこから大宴会の主役として、飲まされまくり始めたわけです、はい。
◇◇
そして、冒頭にいたるわけですよ
昨日から酒飲み娘48にプラス1状態の、どうも僕です、なわけですよ。
昨日、街を一周させられた後、ずっとビアガーデンで飲まされ続けているわけです。
正直、途中で何度か意識が飛んでいます。
なんか、途中でゴルアやメルア、魔王ビナスさんや猿人四人娘の顔が見えたような気もするんですけど……えぇ、もうなんか全ては夢の中状態なわけですはい……あんなに飲まされたのは……おそらく産まれて初めてだと、思います、はい。
で、
ようやく意識が少しはっきりしてきた僕が周囲を見回しますと、
イエロ・セーテン・ルアに加えてララデンテさんの4人はいまだに酒を飲み続けているのですが、他のメンバーは軒並み酔いつぶれていまして、ビアガーデンスペースのあちこちで横になって寝息をたてています。
その死屍累々ぶりが、もう半端ないんですよね、これが……
僕は、自分の体を確認しました。
……なんか、上半身は裸になっていて……そのシャツを、近くで寝ているシャルンエッセンスが大事そうに抱きかかえています……おいおい。
で『本日の主役』と書かれたタスキが肩からかけられています……って、これ、店の在庫のパーティグッズじゃないか、おい。
ズボンの隙間にはいっぱいの花が差し込まれていて……って、誰だ生魚まで突き刺した奴は!?
とにかく、すごい格好で意識を失っていたわけです、はい。
僕はそっと立ち上がると、一度コンビニおもてなし本店の2階にあるシャワーで体を洗いました。
その後、巨木の家に戻ると、スアとパラナミオはベッドで気持ちよさそうに寝息をたてながら眠っていました。
2人の間では、産まれたばかりの男の子が気持ちよさそうに寝息をたてています。
スアが魔法の適性を強く持っているから、この子も魔法使いに……あ、そうか、男の場合は魔道士って呼ばれるんだったっけ、この世界では。
で、その魔道士になるのかな、と思ったりしてはいるものの、この世界ではなぜか魔法能力を有した男性は滅多に産まれないらしく、魔道士の数そのものが極めて少ないんだとか。
伝承では、この世界が出来て間もないころに女神からの求愛を断った魔道士がいてですね、それを女神に逆恨みされて「この世界には魔道士が産まれなくしてやる」って呪いをかけられたとかいう話があるらしいんだけど、どこまで本当なのかはわかりませんけどね。
まぁ、正直な話、魔法の適正とかそんな事はどうでも良いです。
元気ですくすく育ってくれれば。
僕は、そう思いながら男の子の頭をそっと撫でました。
気のせいか、気持ちよさそうに笑ってくれた気がします。
名前は……実はもう決まっています。
男の子だったときと、女の子だったときの名前をスアとパラナミオと僕の3人で話し合って、すでに決めていましたので。
良一の良をとって、リョータです。
と、いうわけで、これからよろしくね、リョータ。