おっとそう来ましたか その2
パラナミオが学校に行き始めましたが、夏休み中の朝の日課はそのままです。
はい、家の裏を流れている川の上流に仕掛けている罠です、はい。
なんといいますか、相変わらずとれ続けています、ウルムナギ。
弁当の売り上げも悪くないし、何より
「パパ、今日も魚を取りに行きましょう!」
そう言いながらコンビニおもてなしの厨房にやってくるパラナミオの笑顔のために頑張っています。
で、この夏休みの間中、コンビニおもてなしの接客を手伝ってくれていたパラナミオ。
その代役として店の接客を担当することになったのが
「コンビニおもてなしのアイドル、テンテンコウちゃん♀だよぉ、きゃは♪」
とまぁ、底抜けに明るいテンテンコウの女の子バージョンです。
もともとカタツムリ族は両性具有のため、テンテンコウも自分の殻の家の中で体の構造を変化させることおよそ10分で男の子から女の子へ姿形を変形させることが出来ます。
……まぁ、発覚したのからして昨日の今日なんですけどね。
ただ、このテンテンコウのバージョン違いには性格に加えて能力にもかなりの違いがありまして、
~テンテンコウ♂の主な特徴
真面目だけど引っ込み思案
人と話すのは苦手
料理はかなり上手~ただしやや手が遅い
~テンテンコウ♀の主な特徴
かなりの気分屋で超社交的
人と話すの大好き
料理の腕はからっきし
と、まぁこんな感じです。
ちなみに、♀バージョンの時、♂バージョンのテンテンコウは彼女の脳内で♀バージョンの行動を見守っているらしく、♀バージョンが仕事以外のことに気をとられそうになると、その脳内で注意をしているらしいんだけど
「もう、わかってるって、♂ちゃんてばぁ」
ってな具合で、他に誰もいないところでいきなり会話を始めるのは、慣れるまでちょっとびっくりだったわけです。
ちなみに、♂バージョンの際の♀バージョンも、彼の脳内で待機している感じらしいんですけど、
『暇~』
『たいくつ~』
『なんかしてあそびた~い』
と、まぁ、そんなことしか言わないため、完全に無視しているんだとか……
なんとういうか、あれこれ大変なんだな、両性具有ってのも……そう実感している今日この頃です、はい。
ちなみに、テンテンコウ♀ちゃんから見ての僕は
「ん~、店長ちゃんってばぁ、真面目で働き者だけどぉ……アタシ的には『アリエナイ』かなぁ、きゃは」
だそうなので、スアが背後に『来る、きっと来る』状態になることはなさそうです。
そんなわけで
テンテンコウは、開店までは♂として調理を担当~主にパン関係
開店すると♀に変化してブリリアン、ヤルメキスと一緒に接客。
昼過ぎにパラナミオが学校から戻ってきたらブラコンベのエンテン亭へ♂として移動し調理に従事。
で、エンテン亭の営業時間が終わったら、そのままコンビニおもてなし本店2階にある社員寮の自室へ戻ってくる。
とまぁ、テンテンコウが1日に何度も♂と♀を入れ替わることになったわけです、はい。
「体的に大変なんじゃないか? 無理はしないでいいからね」
そうテンテンコウには伝えているのですが、テンテンコウ♂曰く
「あの……♀が脳内で『暇』『出せ』『遊ぶ!』とか言わなくなった……むしろ助かる」
だそうで……まぁ、本人も喜んでいるようなので、まぁ、いいかと思っている次第です。
ちなみに、アフター5は、お互い相談の結果、1日交代で♂と♀の状態を変えているらしく
♂状態の時のテンテンコウは、僕に料理を習い
♀状態の時のテンテンコウは、ビアガーデンに入り浸って酒飲み娘の新メンバーとして大活躍しているそうです。
なんでも
「うむ、こやつは見所があるでゴザル」
「飲みっぷりがいいキ」
「歌も悪くないねぇ、まぁ、アタシほどじゃないけどさ」
と、酒飲み娘の神3ことイエロ・セーテン・ルアの3人からもお墨付きが出ている次第です。
◇◇
そんな賑やかになったコンビニおもてなし本店に、ブラコンベの2号店からシルメールがやってきました。
まぁ、やって来たといっても、2号店のメンバーはスアの転移ドアを利用してコンビニおもてなし本店2階にある社員寮で暮らしてるわけです。
寮は、朝晩のご飯もついています。
で、僕・スア・パラナミオの、タクラ一家と一緒にご飯を食べていますので、毎日顔を合わせてはいたわけですが、改めて勤務時間に本店へとやってきたわけです。
2号店店長シャルンエッセンスから推薦を受けた、ララコンベに開店を予定しているコンビニおもてなしの4号店店長としての研修を受けてもらうためだったんですけど、そんなシルメールは僕の前に来るなり
「……あの、すっごく悪いんだけど、この話はなかったことにしてもらえないかな……」
そう言いながら、頭を下げてきました。
で、シルメール曰く
「あ、あのさ……シャルンエッセンスお嬢様はさ、すごく頑張っておられるよ、お仕事も無難にこなせるようになってるしさ。以前の傲慢なとこもなくなったしさ……でもさ……お屋敷に住んでた頃からさ、落ちこぼれメイドだったこのアタシの面倒をずっとみてくださってたシャルンエッセンスお嬢様にさ、まだ全然恩返し出来てないと思うんだ……だから悪いけど、そういうことで……」
あ~
これを言われちゃうと、僕もこれ以上は言えない感じです。
って、いうか、シャルンエッセンスからシルメール推薦の話があったとき、こうなるんじゃないかなって予感はちょっとあったんですよね……
シルメールをはじめとする元シャルンエッセンスのお屋敷落ちこぼれメイド部隊は、とにかくシャルンエッセンスのために、と、頑張っているからなぁ。
シルメールの気持ちはいたいほどわかったので、今回の件はなかったことにしました。
で、その足で、シルメールと一緒にコンビニおもてなし2号店へ移動。
僕の口からシャルンエッセンスにそのことを告げたのですが
僕の後ろですごくバツが悪そうにうつむいてるシルメール。
で、僕の話を聞いたシャルンエッセンスは、
「あなたって、ホント大馬鹿者ですわ」
そういいながらも、どこか嬉しそうな感じでシルメールを抱きしめていました。
そんなシャルンエッセンスを抱きしめかえすシルメール。
そして、そんな2人を他のメイド達が抱きしめていって、コンビニおもてなし2号店流抱擁の輪が出来上がったところで、めでたしめでたしだったわけです、はい。
そんなわけで、コンビニおもてなし4号店の店長候補がまた白紙に戻ったわけですが、こればっかりは慌てることなくやっていこうと思っています。
ララコンベの組合のペレペに
「ララコンベの中で、店長希望者とか、推薦出来そうな人がいたら紹介してくれるかい?」
そう打診して、その結果を待つことにした次第です、はい。
で、
今回の結果を受けて……
「タクラ様、さぁ、あ~ん、してくださいませ」
「あ、手揉もうか? 足も揉むよ」
「「「私達もご奉仕しますわ」」」
と、ですね、
コンビニおもてなし2号店のシャルンエッセンスとシルメールとその仲間のメイド達がですね、恩返しとばかりに、食事中の僕の周囲を取り囲むわけです、はい。
「い、いや、そういうのはいいからさ……」
と、必死に断る僕なんだけど
「いえいえ、これは我らの気持ちですので、受け取ってくださらないと気が済みませんわ」
とシャルンエッセンス、一歩も引きません。
「さ、あ~ん、なさって……あ~ん」
そう言いながら、僕にスプーンにのせたご飯を近づけるシャルンエッセンス。
すると
「……あ~ん」
と、反対側からスアが同様に、僕に向かってご飯をスプーンにのせて近づけていました。
ちなみに、目が座っています……
とまぁ、そんな心落ち着かない食事時がしばらく続くことになった我が家の食卓だったわけです、はい。