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おっとそう来ましたか その1

 と、いうわけでドンタコスゥコ商会との取引が始まりました。

 とはいいましても、ドンタコスゥコ商会のあるナカンコンベからここガタコンベまでも結構距離がありますし、さらにここからバトコンベまでというとかなりの距離があるわけです。

 そのため、ドンタコスゥコ商会も、月に1回買い付けにやってくることになっています。
 とはいえ、その1回目用に頼まれた武具と薬の数は結構な量でした。
「ご無理言うんですけどねぇ、これくらいはぜひお願いしたいんですねぇ」
 ドンタコスゥコさんも、そう言って何度も頭を下げていきました。

 で、改めて、各生産者に話を聞きに行ったところ

~武具の責任者のルアのお返事

「あ、あぁ、それぐらいの増産は造作もないから、まかせとけって……
 で、よ、用事はそれで済んだんだろ? な、なら早く帰ってくれって。
 へ? い、いや別にだな、オデン6世さんにあ~ん、とかしてもらいながらおやつを食べさせてもらってた最中だったとか、その続きを早くしてもらいたいとか、そんなことは思ってないから……いや、そもそもしてもないから! だから早く帰れって!」

 ……ちらっ

「……あ~ん……って、ぶ、ぶぁ~か! な、何戻って来てんだよ!
 は? 今、オデン6世さんにお菓子を食べさせてもらってただろうって? 
 ぶ、ぶぁ~か! 何、寝ぼけたこと言ってやがんだよ! いいから早く帰れ! で、戻ってくんな、今度こそ! いや、頼むから、マジで……」


~薬の責任者のスアのお返事

「……まず、あ~ん、して
 ほら、お菓子を食べさせてあげる、の……あ~ん」
 
 と、まぁ、あ~ん、を21回繰り返された後で

「薬の増産? 大丈夫、よ」
 そう言いながら、親指をグッと突き立ててくれました。

 ですがどうも
 スアもルアに感化されつつあるようで、今後も「あ~ん」攻撃は続きそうです。

 まぁ、ルアと違って、僕はいつでもウェルカムなんで全然問題ないんですけどね。

◇◇

 というわけで、ドンタコスゥコ商会の荷馬車隊が初めてガタコンベの街へとやってきました。
 店が開店する前にこのあと本店横に荷馬車を横付けにしているドンタコスゥコ商会の皆さん。
 なんか、ちょっと感動ですね。
 こうしてウチの店の商品が、遠くの都市まで出荷されていくというのも。

 まぁ、
 以前バトコンベには、イエロ達の大武闘会の際に出店を出したことがありますので、まったく初めてと言うわけではないんですけどね。

 そんな中

 ルアの工房から直接武具を荷馬車に運び混んでいるドンタコスゥコ商会の皆さんを見ていると、その周囲を見回っている2人の人物がいます。

 どうやら、この人達が先日ドンタコスゥコさんが言っていた傭兵の母子さんなんでしょう。

 お母さんと娘さんが冒険者風の姿で腰に剣をぶら下げています。

 ……あれ?
 ……おかしいな……あの娘さん、なんかすごくいかつい気がしないでもないような……
「ノカザム、行きますよ」
「はぁい、母さん」
 ……うん
 その声も、なんかオネエと言うか……え? 何? そう言う人なの?

 そんなことを思っていると、
 コンビニおもてなし本店の中から、調理作業を終えたパートの魔王ビナスさんが笑顔で出てきました。
「あらあらテリアさん、お疲れさまです」
 魔王ビナスさんは、ニッコリ笑いながら傭兵のお母さんの方へ声をかけていきました。
 すると、この傭兵のお母さんもニッコリ笑顔をかえし
「まぁまぁビナスさん。バイト先ってここだったのですね
 そう言いました。

 あれ? お2人って知り合いだったんですか?

「はい、同じ寮で暮らしているんですよ」
「初めまして、テリアと申します、こちらは息子のノカザムと申します」
「ノカザムです。はじめまして」
 テリアさんに紹介されて挨拶してくれたいかついお姉さんですけど

 今、お母さんのテリアさん
「息子」って言ったよね?
 あるぇ?

「あ、ノカザムなんですが、女性ばかりの商会の護衛をするので、女性の格好をしているだけなんですよ。気になさらないでくださいね」
 そう言ってニッコリ笑うテリアさんですけど……い、いや、その、そのいかついオネエを気にするなと言われましてもですね……普通の女性ばかりの集団の中に、ど~んとミッツ○ング○ーブ並みの大男が混じっているわけです。気にするなと行く方が……ねぇ?

 僕がそんなことを思っていると、ドンタコスゥコさんが僕の近くにスススと寄って来て言いました。
「あのいかついオネエのお兄さんのおかげでですね、逆に妙な男達から絡まれなくなって助かってるんですよね」

 あぁ、なるほど
 言われて見れば確かに、ミッツ○ング○ーブが混じってる集団にわざわざ絡んでいこうという命知らずはそうはいないよなぁ、と、妙に納得したわけです、はい。


 ちなみに、ドンタコスゥコ商会の皆さんですが、朝一で荷物を積み込んだというのに一行に出発する気配がありません。

 一応、店の営業の邪魔にならないように馬車は街道の奥へと移動させてくれたんですけど
 荷馬車の周囲で談笑しながら、そのままです

 で

 コンビニおもてなしが開店するやいなや
 全員が店に入ってきたかと思うと、全員スアビールを制限数いっぱい購入していきました。
「いやぁ、やっぱりこれは外せないですね」
 にっこり笑うドンタコスゥコさんとドンタコスゥコ商会の皆さん。

 ついでにお昼の弁当やパンも買ってくれたし、タクラ酒も結構購入していってくれたのはいいのですが、予想外に多く買っていかれたもんですから、僕と魔王ビナスさんが慌てて弁当を追加作成したわけです、はい。

  こうしてやっと出発していったドンタコスゥコ商会の荷馬車を見送った僕らは、ようやく通常業務へと戻って行きました。

 しかしあれですね、これからは月に1回、こんな日がくるんだな、と思うとなんか妙に楽しい気持ちになってくるわけです。

 決して、ミッツ○ング○ーブなノカザムさんに会いたいわけじゃありませんからね?

◇◇

 あ、ちなみに今日からパラナミオの学校も始まりました。
「パパ、ママ、行ってきます!」
 朝一、満面の笑顔で、僕とスアに手を振りながら街道を走っていくパラナミオ。
 すぐ隣の店の娘さんとも仲良しなので、待ち合わせて一緒に登校していきました。

 パラナミオは、誰とでも元気に話をして、誰とでも仲良くなっています。
 うん、ホント良い子です。


 となりますと
 今までお店で接客のお手伝いをしてくれていたパラナミオがいなくなるわけで
 誰かに、店の接客対応をお願いしないといけなくなるわけですが……

 副店長のブリリアンと、魔王ビナスさん、それにヤルメキスの3人はレジ作業に従事してくれています。

 それ以外に、店の品出しとか、と商品の問い合わせがあったときに答えてくれる人材がほしいわけです。

 スアのアナザーボディは、商品補充とかをがんばってくれていますけど口がきけませんので……

 で、まぁ、やはりここはテンテンコウに頼むしかない、と
「出来るかな? テンテンコウ」
 と、僕は一応確認しました。

 と、いうのも、テンテンコウはかなり引きこもり気味と言いますか、
 普段も、調理作業が一段落したら調理場の隅に引きこもってジッとしてるような子なんですよね……

 ただ、この性格を克服する良い機会でもあるな、とも思った訳でこの話を振ってみたところ
「じゃあ……お、女の子になります……」
「は?」
 なんか、テンテンコウ
 そう言うと部屋に戻って、カタツムリの殻の家に一度入って行きました。

 そして、待つこと10分少々

「おっ待たせしましたぁ! テンテンコウ♀でっす!」
 ……と、なんか、すごくハイテンションな女の子が、殻の中から出てきたんですが……

 いつものテンテンコウはですね
 ……便宜上、テンテンコウ♂といいますが……その時は、ショートカットで、目が前髪で隠れてて猫背で少し陰気な感じです。

 ところが、今のテンテンコウ♀はですね、セミロングまで伸びた髪の毛をポニーテールにまとめてて、とにかく元気で明るいです。かなり胸も出ている感じです。

 え? なんで?
 と僕が疑問に思っていると、テンテンコウ♀は、僕の前でニパッと笑うと
「あたし達ぃ、カタツムリ族はですね? 両性具有なんですよぉ。それで、殻の中で性別を入れ替えるんですけどぉ、♂と♀で、まったく別の人格が存在してるんですよぉ、きゃは♪」
 なんか、躍りながらそう説明してくれました、はい。
「あ、ちなみにですね、テンテンコウ♀は料理はさっぱり出来ませぇん」

 え? そうなの?
 
「ね、個性的でしょう~」
 そう言って、ニパッと笑うテンテンコウ♀なんですが

 ……なんだろう、女の子の店員が増えたってので、スアにまた怒られる気がしないでもないんですが

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