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駆け引き11

 狗は浅井に来ている堺の茶人の弟子の一人として城に入るようになっている。この商人の主人は秀吉と懇意で何度か狗も繋ぎをしたことがある。千利休と言う。この時代茶人もある意味では狗と同じ忍者の様相がある。諸国に自由に出入りで来て情報の提供者でもある。
「どうだ清州の様子は?」
「秀吉殿が長島に出かかえられて手薄になっています」
「長島の様子は?」
「秀吉殿が苦戦されていると聞きます。後ろにおられる徳川殿が重石になっているとの噂です」
 弟子の情報は詳しい。
「家康殿とは死んだ明智が親しくどうも肌が合わん」
 柴田勝家は家康をあまり重く置いていないようだ。話が終わると弟子はお市の方に挨拶に出かける。狗は運んできた茶壺を持って部屋に入る。
「利休殿は?」
「今は堺におられます」
「利休殿は秀吉殿に近いと聞いていますが?」
「はい。主人が言うには商人にとっては一番付き合いやすいと」
 弟子は今後出入りは狗がすると説明した。狗は出来るだけ印象を与えて城を出た。蝙蝠はしばらく天井裏に潜っている。城を出るとくノ一が合図を送ってきて横町に入る。そこに商人姿の男がいる。これは軍師の直属の忍者だ。
「今黒田殿は前田におられます」
 徳川との交渉の後前田に飛んだのだ。秀吉得意の作戦だ。
「そろそろお市の方に接触するようにと言うことだ。近々大きな戦いが起こる。準備せよとのことだ」
 それだけ言うと去っていく。やはり長島からの大返しをするのだ。

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