駆け引き12
本願寺が秀吉に与力したと言う情報が流れてきてにわかに北ノ庄が騒がしくなった。優勢だったはずの佐久間が孤立した。狗は黒田の忍者の報告を受けて秀吉の大返しの情報を柴田勝家に伝えた。黒田はすでに秀吉の軍に合流したようだ。蝙蝠の話では勝家が兵をまとめて出陣すると決まったようだ。軍師はもはや間に合わないと読みここで一気に攻め込むようだ。
「まさか?」
信じられないと言う顔を勝家がしている。その後前田などの同盟に出撃依頼を出した。すでに1万の兵を集めている。これで城の中は僅かの侍しかいない。狗はひっそりしたお市の方の部屋にいる。彼女は今までの境遇からマイナス思考になっている。
「秀吉が長島から大返しをしたとか?」
「聞かれましたか?」
「今から出陣して間に合うと思いますか?」
「よく分かりませんが、秀吉殿はたらしを得意とすると師匠から聞いています。すでにあらゆる手を打っての攻撃かと?」
「お方様が望まれるならお子様も含めての」
「そこまで来ているの?」
「これは私の推測ですが、すでに後ろの守りも当てにならぬかと?」
「そうね、前田は元々秀吉と近い」
しばらく沈黙が続く。
「また呼び出すから城下にいてください」
狗は挨拶すると城を出る。待っていたようにくノ一が現れる。今度は少し離れた旅籠に連れて行く。部屋に入ると軍師の片腕が座っている。
「こちらには私の他30人が潜入している。秀吉殿の添え状を貰ってきている。この5日のうちに柴田殿に会わせるのだ」
「でも出撃したばかりですよ」
「佐久間の兵は壊滅、柴田は1万、秀吉殿は2万に、周りを本願寺が1万。それだけじゃない。前田は逆に1万5千で攻めてくる」
やはりすでに周りを固めてきた。