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駆け引き10

 狗はしばらく長島にいて筒井順慶の工作に手を貸した。伊賀周辺豪族を2千集めることに成功した。徳川も表向き手を貸さないと言ったそうだ。だが実は滝川と条件が折り合わなかったようだ。交渉に出てきたのは柳生宗矩だったそうだ。その後狗は柴田の城に走った。
 途中の噂では柴田に付く信長の武将が多く戦いは劣勢だと言うことだ。越前北ノ庄城は戦いの匂いもなく平穏だ。城下に入ると女が近づいてきた。これは蝙蝠に付いたくノ一だ。旅籠に入ると部屋に案内する。1刻して雑兵姿の蝙蝠が戻ってきた。
「どうだ?」
「柴田は戦勝気分です。前田など入れると3万の軍勢です。到底今の秀吉軍では勝ち目がありません。なぜ秀吉殿の本隊が来ないのですか?」
「いま長島にいる」
「ところで秀吉殿に内々に頼まれていることがあるな?」
「直接聞かれましたか?お市の方には娘が3人おられます。もちろん浅井長政の子です」
「秀吉殿がお市の方を慕っていると?」
「そうです。だから救い出せと言うことですが今の戦況では無理です」
「忍び込めるか?」
「それは問題ありません。ほとんど警戒がないのです」
 その夜蝙蝠と城に潜った。彼は何度も行き来しているようでお市の方の部屋の天井裏にすぐについた。これは戦時の体制ではない。部屋には3人の娘に囲まれてお市の方が座っている。確かに美しい。そこに柴田勝家が入ってくる。
「戦いは?」
「ほぼ勝ったようなものだ。滝川に手を取られている間に片が付く」
「でも秀吉は怖い男ですよ?」
「近々清州に登る」
「お味方は信じられるのですか?」


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