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猿人4人娘達と、料理人 その4

 現在、コンビニおもてなしでは、猿人4人娘達がいつ抜けてもいいように、と2人の人を雇ってます。
 魔王のビナスと
 カタツムリ族のテンテンコウ

 魔王ビナスは、僕の世界でいうところの着物風衣装をいつも着て、んで、割烹着姿でせっせせっせと働いてくれていて、すでに即戦力状態です。

 テンテンコウも、お婆さんのお店で料理をしていたってだけあって結構筋はいいです。
 まだ慣れていないため、一動作ごとにメモ帳を確認しながらやってるため、若干手が遅いんですけど、これは慣れてくれば解消されるでしょう。

 ぐぅ

 ……あと、よくお腹がなります、はい。
 とりあえずテンテンコウ、この賄いの残り全部食べて良いからね。

 で、まぁ、黙々と、残りご飯と端野菜と端肉のチャーハンを食べているテンテンコウを見ながら、僕はもう1つの懸案事項に頭を悩ませています。

 猿人4人娘達が食堂をするための店舗です。

 猿人4人娘達達も仕事が済んだら探しにいっているし、僕もガタコンベやブラコンベの組合に何度も問い合わせして調べてもらってもいるわけですが、なかなかいい物件がありません。
 結構つきあいが広いルアや、市場のみんなにも声をして探している最中ですが、今のところ成果なしです。

 先日温泉旅館を中核施設として再出発したばかりのララコンベなら無いかと思ったんですけど、
「あるにはあるんですが、今残っている店舗は相当長いこと放置されてた店ばかりなんでかなりの修理費を覚悟していただかないと……なんですけど、それでもいいですです?」
 組合のペレペによると、そういうことらしい。
 んで、それを猿人4人娘達に伝えると、
「できればぁキ」
「初期投資はぁキ」
「少しでもぉキ」
「抑えたいなキ、と」
 とのお返事だったわけで、いまいち乗り気でない様子。

 セーテンは
「そんな贅沢いったらダメキ、どこででもやってやるって気概を持つのが大事キ」
 そう言って4人を叱咤激励してくれてたんだけど
「ダーリンなんて、どこででも店を繁盛させてるキ、見習うキよ」
 って、いきなり僕に振ってこられたんだけど、

 ……セーテン、あの……僕はさ、元の世界では、このコンビニおもてなし……いつ潰れるかなぁって感じの営業しか出来てなかったので、あんまり引き合いには出して欲しくないんですけど……


 まぁ、ララコンベの案件は最終手段ということになり、もう少し他の物件を探してみようってことになった次第です。

◇◇

 この日の僕は、店の営業時間が終わると、商店街組合へ行きました。
「あ、タクラさん、申し訳ないですけど、空き店舗情報はまだないですです」
 組合の建物に入るなり、蟻人のエレエがすごく申し訳なさそうに頭をぺこぺこさせてきます。
 い、いや、エレエ。そんな僕、いつもいつも空き店舗のことだけでここに来てる訳じゃないからさ。

 と、いうわけで、今日は、雇用情報の更新に来たわけです。

 商店街組合に加盟している店は、新しく店員を雇ったら報告する義務があります。
 これは、犯罪者や、捜索願いが出されているような問題案件を抱えている人が雇われることを未然に防ぐための措置ではあるんですけど、実際問題として、履歴書に記載してもらった内容ってのは店も組合も書かれたまんまを受理して、内容確認まではしませんので、もしこの履歴書に虚偽の内容が書かれていたら、この人が問題案件の人かどうか確認出来なくなってしまうわけなんですよね。
 僕の元いた世界であったような、健康保険証とか、運転免許証的な絶対的に信用出来る身分証明書が存在していないだけに、こればっかりはどうにもならないわけです。

 で、僕は店に提出してもらった、ビナスとテンテンコウの履歴書を持参していて、それをエレエに手渡しました。
「ウチに入った新しいバイトさんなんだ。
 明日から2人とも本採用にする予定なんで届け出しておくよ」
 僕がそういうと、エレエはにっこり笑います。
「タクラさんは、こういう書類をいつもきっちりしてくださるからホント助かってますます。
 みんなにも見習ってほしいですです」
 そう言いながら、早速僕が渡した履歴書の内容を組合の控えに書き写していきます。

 まぁ、ここ、ガタコンベは結構田舎ですし、次の街までの旅代を稼ぐためにちょっとだけ働いてすぐいなくなる人も多いわけです。
 店的には「そんな人までいちいち届け出してたら大変だし面倒くさい」となるわけで
 組合としては「そんな人こそ登録してほしいのですです」となるわけで……まぁ、どっちの言い分もよくわかるので、僕としては、自分の店くらいはきっちりしておきますよってスタンスなわけです、はい。

 んで、履歴書をフンフン言いながら書き写していくエレエ。
「ん?」
「ん? どうかしたかい、エレエ」
「タクラさん……魔王って、マジですです?」
「そうだね……見た感じは普通のお母さんって感じの人だけど、角生えてるよ」
「……そうですか、角ねぇ……角……う~ん……ま、いっか……」
 なんか、最後に妥協が入ったような気がしますけど、ビナスは問題無く? 登録出来たようです。

 で、次のテンテンコウの書類を見た途端、エレエが固まりました。

 すると、なんか棚の中の書類をば~っとめくり初めて、その中の1枚の書類を僕に見せてくれました。

◇◇

 はい
 今の僕は、その書類に記載されていた空き店舗の前に立っています。
 横には、テンテンコウも一緒です。

 この店舗、コンビニおもてなし2号店がありますブラコンベにあります。
 2号店のある表街道から1本入った裏通りの一角にあるこの空き店舗。

 あ、裏通りと言っても一本中に入った通りってだけで、割と人通りはある普通の通りですよ。

 で、この空き店舗には、『でんでん亭』って看板がついたまま放置されています。
「そうです……ここ、お婆ちゃんとやってたお店……お婆ちゃんが病気になってから営業してない」
 そう言いながら、少し寂しそうな顔をしているテンテンコウ。


 え~、事の次第を説明しますと
 この店舗ですが、元々はテンテンコウが、彼女……じゃなかった、彼のお婆ちゃんデンデンテイさん……え? 店名そのまんま!? 
 と、まぁ、2人でやってたお店なんだとか。
 ただ、数年前にお婆さんが病に倒れて、あっという間に亡くなってしまったんだとか。

 組合によると、
 その息子のテンテンコウさんは、お婆さんと住んでいた借家を引き払ってそのまま行方不明になってしまった、と。
 ただ、この店舗に関する手続きを何もせず居なくなってしまったため、ブラコンベの組合としても勝手に処分するわけにもいかず困っていたんだとか。

 で、テンテンコウによれば
 お婆さんが亡くなって、自分一人では店を営業する自信がなかったので、借家を引き払って森に行ったんだとか。
 時々、冒険者組合の薬草採取の仕事なんかを受けながら細々と暮らしていたそうで、店の処分については「借家を解約、それで一緒に終わったと思った」
 だそうです、はい。


 で、店を見て見ますと、こじんまりとしてはいますが、しっかりした作りになっています。
 キッチンの前とその2階部分に客席があって、一度に20人くらいのお客さんが入れるかなって感じ。
 カウンターとか作って、個人客をそこに配置出来ればもう少しいけるかも、な、感じです。
 キッチンも、猿人4人娘達が入っても十分動けるスペースがありました。
 
 店自体も、そう痛んでいないので、営業を再開するにしても簡単な清掃・補修でいけそうです。

 で、ブラコンベの組合に、この店舗の状況をあれこれ確認してみると、組合費の未納と年度更新処理が滞っている状態とのこと。  
「名義上は、デンデンテイさんが亡くなったことで、自動的にテンテンコウさんに書き換わっていますので、テンテンコウさんがお金を払って、年度更新処理をしてくだされば、お店をお返し出来ますよ」
 とのことでした。

 僕とテンテンコウは、2号店の転移ドアを使って本店に戻ると、猿人4人娘達を交えて相談しました。
 その後、すぐに、猿人4人娘達を連れて店舗を確認に行き、その場で再度話合った結果。

 猿人4人娘達はここで店を始めることになりました。

 その後、早速手続きを勧めていった僕らなわけですが、
 まず、未納だった組合費を猿人4人娘達が支払いました。
 次に、テンテンコウから猿人4人娘達にお店を譲渡してもらう手続きを。
 猿人4人娘達は最初、
「お店の名義は、テンテンコウのままでいいキよ、店を貸してくれればいいキ、借賃払うキ」
 そう言っていたのですが
「ボクの中では、もう処分して終わったお店。だから、いい」
 テンテンコウはそう言って、快く店の権利を無償で猿人4人娘達に譲渡してくれました。

 譲渡の手続きが終わると、猿人4人娘達達はコンビニおもてなし本店の仕事が終わると、すぐここにやって来て掃除と片付けに明け暮れています。
 で、このお店には住居スペースがないため、4人は今まで同様にコンビニおもてなし本店の寮に済みながらここに通ってもらうことになりました。
 家賃代わりに、コンビニおもてなしの社員には、1人につき月に1食半額サービスをしてもらうことにしておきました。

 もう猿人4人娘達も、家族みたいなもんですから、今更お金を取る気もありませんしね。

 気がつけば、セーテンも足繁く店に顔をだして掃除や片付けを手伝っているそうです。
 元部下のことだけに、何かときになるようです、はい。
「ち、違うキ、これは、開店したら食事代をまけてもらうためにキね……」
 照れで顔を真っ赤にしながら必死に否定するセーテンが、なんか可愛かったんですよね。

 で、この店には、テンテンコウもバイトとして雇われる予定になっています。
 コンビニおもてなし本店の仕事は午前で終わりますので、午後からってことで。
 これは、猿人4人娘達が、
「せっかくなんだし、一緒にやろうキ」
 って、テンテンコウに、持ちかけた結果なわけです、はい。

 そんなわけで、猿人4人娘達の食堂の開店準備も着々と進んでいます。
 気がつけば、ブラコンベ在住の魔王ビナスさんまで片付けや掃除を手伝ってくれているそうです、はい。

 で、お店の名前ですが、猿人4人娘達の強い要望もあって、
『コンビニおもてなし食堂 えんてん亭』
 になりました。

「看板ならまかせとけ!」 
 と、店の看板もルアが鋭意制作中です。

 
 そんなコンビニおもてなし食堂えんてん亭は間もなくオープン予定です。

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