ララコンベの後日談と、おもてなし2号店
ララコンベは、まだまだ安泰とはいえないけど、どうにかやっていけそうな目処がつき始めています。
元々辺境のド田舎なので、なかなか客の足が向きにくいわけなんだけど、定期馬車が通い始めたこともあり
「じゃあまぁ週末に泊まりがけで行ってみるか」
といった具合のお客さんがそれなりに出始めています。
ただ、そうなってくると、今度は宿泊客向けの料理が問題になってくるわけです。
今は、カウドン丼の目新しさでもっていますが、それだけではリピーターの獲得も難しいですから。
今は、このカウドン丼に、小鉢をいくつか付けたお膳を宿泊客に出すようにしていまして、加えて、期間限定でウルムナギ丼も提供しています。
えぇ、僕とパラナミオが毎晩罠を仕掛けて毎朝回収しているアレです、はい。
ただ、ここからはララコンベの温泉経営係の皆さんに頑張ってもらおうと言うことで、皆さんにもよく話をしてきたわけです。
ただ、皆さんは、思っていた以上にお客さんが来ていることでとてもやる気になっていて、
「ここまでお世話になったんですから、ここからは頑張りますよ!」
そう言って、みんな笑ってくれたのが、よかったなと思ったわけです。
今は、イエロ・セーテン・ルアの3人が週に2,3度ララコンベに赴いて狩っているカウドンについても
「カウドンに報奨金を付けて買い取りをしたらどうかな?」
との案を組合のペレペに提案しました。
と、いうのも、カウドンは王都指定の害獣なので、街が買い取りをしても、その買い取りをした街に対して王都から補助金が出ます。具体的に言えば報奨金として支払った額の8割です。
なので、少し買い取り価格を高めに設定しておいても、街の負担は意外と安くすみます。
この買い取り価格を高めに設定する件ですが、これは街の裁量に任されています。
たとえば
「最近カウドンが多くて被害も甚大なんです。だから早く冒険者に駆除してほしいので報奨金を高くしているんです」
なんて理由も可能なわけです。
当然、その理由が妥当かどうか、設定されている報奨金の額が妥当かどうか、ちゃんと支払われているかどうかなどは王都が査察でチェックするわけですけど、辺境のこのあたりの土地の場合、その地域を受け持っている辺境駐屯地がそのチェックを行うわけで、
まぁ、ぶっちゃけゴルアなわけです。
当然、身内同然なんだから大目に見てよっていう気持ちがなくもないですけど、
設定金額はそんなに高過ぎないし
掲示もちゃんと王都に報告しているとおりを提示していて一切ごまかしていな
それに、支払いもちゃんとしていますので、
1回目の視察にやってきたゴルアも
「えぇ、全然問題ありませんね。この調子でよろしくお願いします」
と、1回目の補助金を申請額通り置いていったそうです。
少し話が逸れますが、この補助金について、
王都の国土が広すぎて、辺境の端の方まで手が回らないため、そのあたりを管轄している辺境駐屯地に結構な額の予算が回されているそうです。
で、それを、申請のあった補助金に割り振り、適正に支出をするのも辺境駐屯地の重要な仕事なわけですが……
まぁ、この辺境駐屯地に送られてくる騎士ってのが、だいたいは出世コースから外れた窓際族か問題児のため、だいたい着服に走って、まともな対応をしていないのが、テンプレなんだそうです。
……まぁ、僕のとこの辺境駐屯地の隊長も2人続けて汚職で首になってますしねぇ。
そんな中、ゴルアは、副隊長のメルアと一緒に経理に公明正大に対処し続けているので、周辺の辺境都市や集落からすごく評判がいいです。
この調子なら、王都に戻って出世コースに乗るのも早いかなって思ったりもしたんですが、元王都の騎士団に勤務していた経験もあるルア曰く
「あ~……まぁ、ここに送られてる時点で出世はないねぇ」
だそうで……ゴルア、僕は応援してるからね!
そんなゴルアでも自由に手を出せないのが公共工事の部分。
先のララコンベ周辺の街道整備なんかがその最たる物なわけです。
公共工事に関する予算は、すべて王都が裁量権をもっているそうで、辺境駐屯地は、王都から金が送られてきたらそれを支払うくらいしか出来ないそうなんでよね。
こういったところの身動きが鈍いのを見てると、やっぱどこの世界もお役所仕事はお役所仕事だなぁ、と思うわけです、はい。
話を戻します。
カウドンに高めの報奨金をかけたことで、その報奨金目当ての冒険者もちらほらやってくるようになっているそうです。
で、
ララコンベの報奨金はですね、
「死体持ち込み必須」
となっていますので、ただ倒すだけではだめなわけです。
魔法袋を所持している者がいるパーティなんかは、まとめて袋にいれて持って来ますけど、そうじゃない冒険者のために荷車の貸し出しもしているそうです。
この荷車ですが、これも以前鉱山採掘をしてたときの残り物でして……結構鉱山時代の物がリサイクル出来ていて、ペレペ達も喜んでいます。
んで、報奨金を稼ぎながら温泉宿に宿泊し、金を落としていくというケースも結構増えてきているそうで、中には
「温泉はなくても良いから、安い宿はないのか?」
との要望も寄せられたため、急遽、こういった冒険者相手の簡易宿もオープンしたそうです。
まぁ、この簡易宿も、元は鉱山に出稼ぎでやって来ていた作業員用の寄宿舎を流用したものなので、街の負担もそうかかっていないそうです。
宿の世話も、入り口に1人常駐し、そこで1泊の宿泊代をもらったら部屋の鍵を渡し、その鍵の部屋を使用してもらうパターン。
連泊なども要相談で、柔軟に対処するようにしているおかげで、報奨金目的の冒険者にも評判がよくなっているそうです。
また、新たな酒場も開店しました。
温泉宿に宿泊していれば温泉内に設置している酒場を利用出来ますし、宿泊していない客でも酒場の利用は可能にしてはいるのですが、
「あの酒場は、家族ずれが多くてなぁ……」
との苦情がというか、ぼやきが聞こえてきたわけです。
確かに、現状の温泉宿はその宿泊客の大半が家族ずれですので、そうなるのも仕方ないと言えば、仕方ないのですが、お金を街に落としてもらうためにも、これは迅速に対応せねば、と、ペレペがすぐに動きました。
んで、この酒場ですが
さすがにそこまで避ける人員がなかったらしく、とりあえず組合の建物に併設する形で営業を開始しています。
んで、組合のペレぺをはじめとした蟻人達が交代で接客にあたりながら、他の者は街の書類仕事をこなしているわけです
この酒場で提供する酒は、このララコンベで造られている安いお酒と、コンビニおもてなしが誇ります、スアビール・タクラ酒の2種類の、計3種。
これに、焼くだけで提供できる食事メニューを提供できるように設備などを整えたわけです。
と、まぁ、
オープンしてからまだ間がないにも関わらず、次から次へとあれこれ起きているララコンベですが、それでもどうにか前には進んでいるようです、はい。
そう言えば、このララコンベで何か店をしませんか的な話を、コンビニおもてなし3号店周辺に住んでいる魔法使いの皆さんにも声をしてみたんだけど、見事に返事がなかったんですよねぇ……
まぁ、あの人達は、コンビニおもてなし3号店に併設してある巨大書店が目当てなわけであって、ハローお仕事掲示板で各地の魔法系のお仕事を在宅でこなしているのにしても、
書店の側を一歩も離れたくないから
なので、まぁ、仕方ないといえば仕方ないんですけどね……
◇◇
さて、そんなわけでララコンベの問題がどうにか片付いた感じになったので、僕は今度はコンビニおもてなしの問題を片付ける事にしました。
コンビニおもてなし2号店の店舗の問題です。
このコンビニおもてなし2号店の店舗は、シャルンエッセンスが、まだコンビニおもてなしの店員になる前に有り金をはたいて購入した空き店舗だったんですけど、
狭い
商店街の端
とまぁ、いいところが全然ないんですよね……
それでも、商品の質がよくなり、店員の愛想もよくなったこと
何より、ガタコンベで人気のコンビニおもてなしになったってことで、人気になってはいるんですが……
とにかく狭いってのがネックでして、お昼前のかき入れ時なんかは、店の前に入店待ちの行列が出来るほどらしく、この時間帯は、接客の誰かが店の前に屋台を出して、弁当と飲み物だけ販売したりしてしのいでいるそうなんですけど、
「正直、そろそろ限界ですわ」
と、シャルンエッセンスも、週に一度の会議の際に肩を落としていたわけです。
ブラコンベの中で空き店舗があればいいんですけど、
ブラコンベは、このあたりでは一番大きな都市だけあって、なかなか空き店舗が出ない上に、出てもすぐ埋まってしまうんですよね。
一応組合にお願いはしているんだけど
「順番待ちもすごいからねぇ」
と、色よくない返事を、すでにもらっているわけです……
となると、今ある店舗をどうにかするしかないわけです。
僕が、夕食後のソファに座って2号店の図面を眺めていると、スアがひょこっと寄ってきました。
「……出来ることがあったら、手伝う、よ」
そう言いながら、スアは僕の肩をもみもみと
「……いつもお疲れさま、ね」
そう言ってニッコリ笑ってくれました。
そんなスアを見たパラナミオがですね
「パパ! パラナミオもパパの肩を揉みます!」
と言って駆け寄って来てくれてですね、肩をぐいっと揉んでくれたんですね
後日、コンビニおもてなし本店前の工房店主、猫人ルアはこう語った
「サラマンダーってのはさぁ、幼体の時でもすっごい力が強いんだよねぇ」
……とまぁ、気合い入れすぎた一揉み目は、ちょっとアレな結果になったわけですが
スアに回復してもらった後は、
「パパ、これぐらいなら大丈夫ですか?」
と、慎重に確認しながらやってくれたおかげで、僕もとても気持ちよかったわけです、はい。
僕と、スアと、パラナミオ
3人でいるのが、なんかもう普通になってるのが、なんか心地良いな、と、思う今日この頃なわけです、はい。