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……やりました その1

 ようやく夏祭りが終了したわけですが……いやはや、年は取りたくないものです……

 スアがかけてくれた回復魔法のおかげで結構無理に無理を重ねたこの数日間。
 結局最終日も、未明までビアガーデンが続いたため、結局つきっきりで最後までこの世話を続けたのですが、あらかたの片付けを終え、残った客を、いまだに飲み続けているイエロ・セーテン・ルアの3人に任せ、僕は店の裏にある巨木の家へと戻っていきました。

 さすがに2日続けてほぼ徹夜で頑張ったそのつけが回ってきたらしく、ちょっとコーヒーでもと思って準備しかけたところで、意識を失ったようです。


 で


 目を覚ました僕は、リビングのソファの上で寝ていました。
 どうやらすでにお日様が高々と上がっているらしく、窓から陽光が差し込んでいます。

 僕がぼ~っとしながら窓の外を見つめていると
「パパ? 起きたのですか?」
 横から、パラナミオがそ~っとのぞいてきました。

 どうやら、寝ているのを起こしてはいけないと思いつつも、起きているのなら話がしたいといった感じで、ややおっかなびっくり僕の顔をのぞき込んでくるパラナミオ。
 僕は、そんなパラナミオを抱き寄せると
「うん、今目を覚ましたよ、おはよう」
 と、満面の笑顔を浮かべながら、パラナミオの頭をシェイクしていきます。
 パラナミオ、
 すごく嬉しそうに笑いながら
「パパったらぁ、もう!」
 と言いながら、きゃいきゃい声をあげていきます。
 いやぁ、
 やってる自分までぽややんとしてきちゃいますよ、これってば。

 そんな親子のスキンシップを満喫していると、スアも、僕が起きたことに気がついたらしく、トトトと階段を駆け下りて駆け寄ってくると、すごい勢いでパラナミオの横から抱きついてきました。
「……おはよう、あなた」
 そう言いながら、僕の頬に、自分の頬をすりすりしてくるスア。

 こんな時、僕は髭が薄くてよかったってつくづく思うわけです。
 僕は、生まれつき体毛そのものが薄いらしく、髭はおろか、手足の体毛もすっごく薄いというか、ほぼ無い状態です。
 ……一応今はふさふさですけど、結構やばいかもな、と、頭の毛の心配は常に尽きません。

 ……死んだ親父も登頂部死滅してたしなぁ……

 んで
 そんな僕に、気持ちよさそうにすりすりしていたスアなんですが、おもむろに僕の顔をのぞき込んでくると、
「……あのね、赤いご飯、つくってほしい、の」
 と、言ってきました。

 ん? 赤いご飯?
「……前に、おにぎりにしてた、あの……」
 あぁ、赤飯のことか、
「……そう、それ、かな?」
 そんなやりとりがあった後、僕は、よく寝させてもらえたおかげで、頭もすっきりしていたおかげで、元気満々な状態で店の厨房へと移動していきます。

 この日は、祭りの翌日ってことで、街の商店街も全店休業しています。
 どこの家や店もみんなのんびりした昼下がりをすごしていると思われるのですが、厨房に入ると、ヤルメキスがいつものようにお菓子作りをしていました。
「あ、お、お、お、おはようごじゃりまするぅ」
 僕の顔を見るなり、満面の笑みで挨拶をしてくれるヤルメキス。
 この女の子は、ホント勤勉というか、研究熱心だ。
 日々、こうして研究を重ねて、毎日、少しでも美味しくしようと努力を続けている結果、カップケーキに関しては固定ファンが何人もついているほどで、すでに近所のお茶のお店に専属で卸しているほどだ。
 このお店へ卸したカップケーキの代金はすべてヤルメキスにあげようとしてるんだけど
「あ、あ、あ、あの、これは練習で使わせていただいている材料代としておさめていただきたいのでごじゃりまするぅ」
 と、言いながら土下座してきて、絶対に受け取ってくれないわけです。
 仕方ないので、魔女信用組合で、ヤルメキス名義の通帳をつくってそこに貯めていっています。
 いつか、ヤルメキスが嫁に行くときにでも持たせてあげようかと思っているわけです、はい。

 ヤルメキスは、僕が作業を始めると
「き、き、き、今日は何をお作りになるのでごじゃりまするか?」
 と、興味津々な様子でよってきます。

 ヤルメキスの方は、ろおるけえきの生地を焼いている最中らしく、今はクリームの準備をしていたようです。

 僕は、赤飯をつくるところだと告げたんだけど、
 そういえば、ヤルメキスには和の物って教えてなかったよな、と思いつつ
「よし、赤飯をつくるんなら、おはぎもついでに作ってみるか」
 と思い立ったわけです。
 
 興味津々で僕に付き従ってくるヤルメキスと
「パパ、何かお手伝いしましょうか?」
 と、満面の笑顔で寄ってくるパラナミオ。
 そんな2人を従えた僕は、まずは材料チェック。
 
 確か、餅米もどきは市場で見つけて仕入れてたはず……っと、あったあった。
 あと、小豆もどきも仕入れてあったので、これに砂糖や塩を準備していきます。

 んで、小豆を煮たり、煮終えた小豆を、2人に潰してもらったり、炊飯器にあれこれセットしたりと、台所の中で2つの作業を同時進行していく僕。
 こういうとき、つくずくオール電化住宅にしていてよかったと思うわけです……
 お米は釜で炊いてますからねぇ、この世界では。
 魔法コンロで炊く用の、小型の釜もありますけど、まぁ、ぶっちゃけ、炊飯器の方が万倍美味しく炊けるわけです、はい。
 店の弁当を作る際に、毎日フル稼働してくれている業務用炊飯機3台にも、1日でも長く頑張ってもらいたいものです……もしくわ、スアの研究が……

 さてさて
 そうこうしているウチに、赤飯もおはぎも、制作が着々とすすんでいきます。
 おはぎの方は、合間に冷やしたりする時間が必要なんですけど、そのあたりはスアが魔法でちゃちゃっと短縮してくれるもんですから、どんどん作業が進んでいきます……ホント、魔法ってすごいよなぁ。
 んで、作業を開始してからおよそ2時間。

 無事、赤飯とおはぎが歓声しました。

「うわぁ、なんか赤茶色いでごじゃりまするなぁ」
 と、大量に出来上がったおはぎをマジマジと見つめているヤルメキス。
 パラナミオも、その横で、それをマジマジと見つめていたんですけど、ここで2人揃って


 ぐぅ


 と、お腹の虫がなったわけです。
 そういえば、僕は寝起きだったのもあってあまり気になってなかったんだけど、もう昼を回ってたんだよな。
「じゃ、赤飯もあるし、これでお昼にしちゃおうか」
 そう言いながら、僕は出来上がった赤飯やおはぎをリビングに持って行きます。

 すると
「なんですかぁ?」
「なんかすごくいい匂いぃ」
 と、部屋でまだ寝ていたらしい猿人4人娘達が起き出して来ます。

 まぁ、この参戦は予期していたので、その分多めに作ってあります、はい。

 んで、みんなで早速試食会。

「甘い! 甘いですパパ!」
 と、おはぎを1口食べたパラナミオが、目を丸くしながら喜んでいます。
 よほどこの甘さが気に入ったのか、一心不乱におはぎをぱくつくパラナミオ。
 で、あっと言う間に1個食べ終えると、ジッと僕の顔をのぞき込んできます。

 いえね
 パラナミオなんですけど、こうやっておかわりとか欲しい時って、必ず僕かスアに許可をもらってから、ってのが癖になってるんですよね。
 別にそこまでしなくても、と、パラナミオにも言ってはいるんだけど……
「いいよ、好きなだけ食べて……結構作ったからね」
 そう言う僕の声に、嬉しそうに頷いたパラナミオは、ここでやっと2個目のおはぎを口に運んでいきます。
 その横では、ヤルメキスが
「ほ、ほほう、こ、この甘みはですな、もごもご……なんちょも、もごもご……上品なといいますかで、おじゃりまするな……」
 そんな感じで、食べながら味を分析してるんだけど、
 うん、
 ヤルメキスはしっかり食べ終えてからしゃべりなさいって。

 で
 まぁ、そんな感じでみんながおはぎと赤飯を美味しそうに食べていく中

 僕もスアに赤飯のおにぎりを渡しながら、
「そういえば、スア、赤飯なんてどうして食べたくなったんだい?」
 そう僕は聞いてたんですが、
 スア、なんかちょっと小首をかしげて
「……お祝いの時に、食べる……って、あなたの本で読んだ、の」
 あぁ、なるほど、そういうことか。
 夏祭りが無事終わった、そのお祝いってことか

 ふるふる

 え? 違うの?
 僕の言葉に、顔を左右に振ったスア。

 おもむろに僕の顔を真正面から見つめると
「……やりました」
 と言いながら、顔を真っ赤にしながら、自分のお腹を指さしてます


 ……え? それって……

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