バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

パルマの夏、ガタコンベの‎夏祭り その1

 いよいよ夏祭りが始まります。

 今日から各都市のからの出店者の受け入れが始まるため、すでにそれっぽい荷馬車が中央広場へ向かって何台か向かって行っている。

 ボクの店は、コンビニおもてなしは、このガタコンベの街の結構はずれにあるんだけど、
 外部と出入りする門に近く、かつ、中央広場へ続く道の端に位置していることもあって、いつもと違う荷馬車の群れが街中へと入っていくのがよくわかる。

 今回の夏祭りで、我がコンビニおもてなしは
 中央広場のど真ん中に出店を出しつつ、この店舗も営業するという、結構ハードな状況のため、
 コンビニおもてなし2号店並びに3号店へ、ヘルプを頼むことにした。

 
 ちなみに、現在の各店舗の人員と状況はというと

 本店は、
 ボクがメインで、補佐に自称スアの弟子ことブリリアン。
 これに、猿人4人娘と蛙人のヤルメキスと、スアのアナザーボディ4体が加わるのが通常パターン。
 ボクは昼前などに追加調理をするため接客から抜けることが多いものの、
 最近は、ブリリアンの指示の元で、猿人4人娘がうまくローテーションしているので、スアのアナザーボディがでなくても、店はうまく回っている感じだ。

 それをブリリアンに伝えると
「でしょお! だからいつも言うように、師匠のスア様は素晴らしいのですよ」
 そう言いながらドヤ顔をするもんだから、
「いや、ボクは君のことを褒めてるんだよ」
 って、伝え直したんだけど
「そうでしょうとも、そうでしょうとも。
 師匠は本当に素晴らしいのですから、そうやって賞賛されてかくあるべきなのですよ」
 と、見事に会話が堂々巡りというか、かみ合わないため、
 とりあえず、その分時給アップで報いておいた。

 ……もっとも、ブリリアンの場合
 手に入ったお金のうち、生活費以上の部分はすべてスアの著作を購入するのに回している状態なので……まぁ、本人が納得しているので、よしとしようか。

 ちなみに、最近のスアは、ちょっと諸事情あって使い魔の森にこもっている事が多いです。
 いえね、酒の妖精バルンカッスと一緒に、日本酒の再現に取り組んでいるんですよ。
 一応、プラント魔法でコピーすることが出来てるこの日本酒なんですけど
 なんか微妙に違う気がしないでもない……
 ボクが秘蔵していて、ちびちび飲んでいる日本酒……ちなみに、これを元にプラントでコピーしたんだけど、を、酒の妖精バルンカッスに確認してもらったところ。
「こりゃああれですね、発酵というか、なんというか……ただプラントでコピーしただけじゃ、再現出来ない工程が含まれているんでしょうな」
 とのことで、現在、その工程を再現すべく、スアと二人三脚で頑張ってくれているわけです。

 スアも
「……旦那様の好きな飲み物、なの」
 と、すっごい気合い入れて頑張ってくれてて、なんか嬉しくて涙がでそうになるんだけど

「……ご褒美は、夜に、ね」
 そう言いながら、照れり照れりと身をくねらせるスアの姿が
 最近恒例になりつつも、なかもう可愛くて仕方ないんですよね。

 えぇ、嫁自慢ですが、何か?

 で、話を戻しまして
 そんなわけでスア本人が使い魔の森に入り浸ってるため、アナザーボディは期待出来ない……かと思いきや、今も普通に品出し・品補充などをこなしてくれているわけで……
 スアってどんだけすごいんだって話です、はい。


 ちなみに、店の裏手で行っている、ビアガーデンもどきですが
 日中は、基本敵に店で購入した品を持ち込んで飲み食いするだけなので、ほっとけばいいのですが、
 店が終了間際になると、ここで肉焼き……いわゆるバーベキューの実演販売ならびに、スアビールを売り始めるため、人員が必要になるのですが
「それならお任せくだされ」
 と、その時間にはだいたい狩りから戻っている鬼人イエロが
「接客なら任せるキ」
 すっかり狩りの相棒と化している猿人セーテンとともに、この作業に当たってくれています。
「あはは、ここの手伝いならまかせなって」
 と、さも当然のように向かいの工房の店主・猫人ルアも加わって
 毎晩、本店裏のビアガーデンコーナーでは酒盛りが繰り広げられています。

 そんなわけで、
 本店のビアガーデンコーナーは儲け云々と言うよりも、イエロ達がいつも普通にやってた酒盛りの延長的な感じで繰り広げられています。

 そんなわけなんで、儲けは当初あまり期待していなかったんですが
「集金は任せるキ」
 と、元猿人盗賊団のボス、セーテンが、酩酊しながらもそこはかっちり抑えてくれているもんですから、結構な収益があがっていたりします、はい……セーテン、酔客からぼったくってないだろうな……


 続いて2号店ですが

 ここは店長シャルンエッセンスと、元メイド長シルメールが中心になってあれこれ頑張ってくれています。
 店員はシルメールの元部下だったメイド達なんだけど、これが今8人にまで増加しています。

 元々シルメール達は、シャルンエッセンスの家が没落する前の貴族時代
 落ちこぼれだったメイド達なわけでして、先輩達の待遇に耐えかねて辞めていった仲間達も多かったんだとか。
 今は、2号店の売り上げが好調に推移していることもあって、そんな元メイド達を何人か雇っているんだとか。

 で
 2号店は、店は朝から夕方まで営業していまして、
 営業時間中は、店で購入した品を店の屋上で好きに飲み食いして貰っています。
 いわゆる持ち込み式ビアガーデンなわけです。

 で、夕方店が閉店するのと同時に、このビアガーデンスペースで、肉焼きを中心にしたバーベキューと、スアビールの販売が開始されます。

 元々料理の腕が壊滅的に……だったシャルンエッセンス達なんですけど
 どうにか、『焼く』に関しては、どうにか人並みレベルにまで上達しているため
 肉を焼くだけ、野菜の串を焼くだけ、といった作業をしてもらいつつ、スアビールを販売しています。

 この2号店のビアガーデンは
 この2号店のあるブラコンベの酒場が、諸事情で閉店に追い込まれていることもあって
 今ではその代わりとして、大繁盛しています。

 ……えぇ、諸事情です
 ……えぇ、諸事情なんですよ……

 で、夜の部は、毎晩日付変更線あたりまで好評営業中でして、
 ここに、常時最低3人が勤務しています。

 で、
 夜勤務した皆は、翌日は遅番にしたり、と
 そういったあたりはシャルンエッセンスが皆の希望を聞きながらうまく調整してくれているんだとか。

 正直
 最初は、ただのお~ほっほっほっほ娘だと決めつけていたんだけど
 シャルンエッセンスは、教えれば素直に聞いてくれるし、すごく頑張ってくれる。
 
 本人曰く
「今までの私は、貴族の娘ということで、何不自由なく暮らしてまいりましたの。
 当然何かを教えられることもありませんでしたわ」
 とのことで、
「ですから、タクラ様のように、悪いことは悪いと、きちんと叱っていただけるのが、とてもうれしいのでございます」
 なんだそうだ。
 そう聞けば、ある意味シャルンエッセンスも苦労してたんだよなぁ、とは思うんだけど
「さぁ、というわけで、タクラ様
 遠慮なさらずにこのシャルンエッセンスを罵倒なさってください!
 ののしってくださいまし!
 蔑んでくださいまし!」
 って、時々、なんか変なスイッチが入った様子で
 その顔を真っ赤にしながらボクに懇願してくることがあるんだよなぁ……大概最後はスアの爆裂魔法で吹っ飛ばされるんだけど……

 というわけで
 2号店からは、メイドを1人、祭り期間中は本店に回ってもらうことになりました。


 そして3号店ですが、

 ここは、現在のコンビニおもてなしチェーン店内で、唯一の24時間営業店舗です。
 書店スペースと、コンビニスペースに別れて営業していますが

 働いているのは
『24時間働けますよ』
 な、木人形5人組です。

 そのリーダー・エレクトラ=アンドゥトロワこと、エレが、主にコンビニスペースを
 その元相棒の、壊れた木人形をスアが集めて再生させた木人形・スシスが主に書店スペースを
 それぞれ取り仕切っています。

 これとは別に、
 この3号店のみで行っている、魔法薬及び魔石の買い取りを
 3体いる小型木人形のうちの1体に専属でやってもらっています。
 小型木人形達には、スアが会話能力まで増設してくれているんですけど
 この買い取りを専属で行っている小型機人形は

 買い取り希望でやってきた魔法使いに
「買い取りお願いね」
 と言われると
「買い取り、お願いされますわん」
 と返答してから、検品・査定に入ることから、いつしか魔法使い達の間で

『マスワン』ちゃんと呼ばれておりまして
 すでにその呼び名が定着しているのですが

 このせいで、小型機人形の他の2体……便宜上「1号」「2号」
 と呼んでいる2体がですね
「店長、私達にも名前を」
 と、事あるごとに言ってくるんですよね……

 で、まぁ、あまりにしつこいこともあって
「そうだなぁ……1号と、2号に名前かぁ……ライダーなら、技の1号、力の2号とかあったけどさぁ」
 なんて思わず呟いたところ

「私は今日からワザンです」
「私は今日からチカランです」
 って言いながら、すっごい喜んじゃって……え? いいのそれで!?

 ボク的にも、呟いただけだったので、付け直すよって言ったんだけど
「これが気に入りました」って、2人ともニッコリ笑ってくれるんですよねぇ……

 正直しまったなぁ、と思いながらも
 喜んでくれてるし、まぁ、いいか、とも思ったりして……

 ちなみに、この3号店は
 客のほぼ全てが魔法使い達で、
 みんながみんな、
「このコンビニおもてなしの迷惑になることはするんじゃないよ!」
「この店は、あのスア様の旦那様の店なんだよ」
「この店のタクラ様は、あの上級魔法使いのお茶会倶楽部を敵に回してまで私達を守ってくれてるのよ」
 と、まぁ、
 そこまで過敏にならなくてもいいんだよっていつもいってるんですけど
「いえいえ、これくらいしないと罰が当たります」
 そう言って、過剰なまでに自分達で自分達を律してくれているおかげもあるので、

 小型木人形の1人、ワザンに補佐に来て貰う事になりました。


 こんなわけで
 夏祭り中の本店は

 2号店からのメイド1名と
 3号店からのワザン

 これに、ボクと、スアのアナザーボディで出店を回し
 店の方は、ブリリアンを中心にして、いつものメンバーで営業する方向で話がまとまりました。

 ただ、
 ボク個人がこのガタコンベ商店街の役員でもあるので
 そっちの仕事が突発的に入って来かねない懸念もあるため、その場合は、
 ブリリアンに出店の管理をお願いしつつ、
 店の方は、猿人4人娘で回して貰う方向で調整しておきました。

 ただ、まぁ、
 何しろ初めてのことなので、とにかくまずはみんなで頑張ろうってわけです、はい。


 そんな話をしながら晩ご飯を食べていると
「パパ! 私も学校が終わったらお手伝いします!」
 そう言って、パラナミオが元気に手を上げてくれました。
 最近は、ヤルメキスとすごく仲良しになっていることもあって、お店の手伝いが大好きになってくれているパラナミオ。
 なので、ボクも
「よろしく頼むね」
 そう言って、頭をなでなでしてあげたら、パラナミオ
「はい! まかせてください!」
 そう言ってニッコリ笑いました。


 ……で、スアさん
 その頭はなんでしょうか?
「……頑張ってる、よ?」
 ……はいはい、わかってますって。

 そう言いながら、頭を突き出してきていたスアも、なでなでしてあげたんですけど
 スアもまた、良い笑顔で笑ってくれました、はい。

しおり