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駆け引き2

「秀吉が天王山に陣を敷きました」
 街道を張っていたくノ一からの知らせが入った。何という速さだ。続いて半刻遅れて光秀の陣が麓に敷かれた。信長の亡骸にこだわり後れを取った。山にいた服部が消えた。狗は蝙蝠を連れて光秀の陣に潜る。陣の中には床几に光秀と斎藤利三が座っていて、その前に鎧姿の武将が8人いる。その中に京之助もいる。
「細川も筒井も来ぬか?」
 苛立ちが出ている。その中を家老が袋を手に入ってくる。
「服部がすでに天王山に来ています。兵は出さず約束は守るようです」
「家康らしい」
「狗がお棺を燃やしました。これは灰を入れています。煎じてお飲みください」
 自分の灰を飲むのか。家老が去ると斎藤利三が口を開いた。
「先手を取って攻めましょう?私が軍を率います」
「やも得ぬか?」
と言う声を聞いて慌ただしく3人の武将を率いて陣幕を出て行く。
「京之助参れ」
 光秀が京之助を呼んだ。
「宗矩から繋ぎは入ったか?」
「山崎の麓に来ているようです」
「よし私を守ってくれ」
 京之助は立ち上がると陣幕に鎧の侍を10人を入れた。柳生だ。1刻が経つと伝令が入ってくる。
「斎藤殿が討ち死にされました」
「そうか。残りも出るのだ」
 その声で座っていたすべての武将が立ち上がる。あまりにも早い総崩れだ。家康はこの結果を見据えていたのだろう。

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