駆け引き1
光秀は信長に亡骸を探すのに手こずっている。だが朝廷からは予定通り宣旨が出た。光秀が天下を取ったと言うのにはまだ早い。光秀を倒そうと言う動きはない。光秀軍は手勢の5千のままだ。
「狐からの繋ぎです」
狐についていた年寄りが戻ってきて文を渡す。
「家老が山崎に向かっています」
「山崎?」
どうして今山崎なのだろうか?確かに京を光秀が制圧した。朝廷も認めたが四方の軍がどう動くのかが問題だ。
蝙蝠が光秀の陣から戻ってきた。
「光秀はあれから弾正の忍者を各陣に参戦の依頼を送っています。とくに揚羽を堺の家康の元に送っています」
「胡蝶は?」
「今どこにいるか不明です。どうも光秀は京から動くような動きを見せています」
「やはり果心のいうようにここからが見えないのだな」
狗は蝙蝠を初めに手勢を5人連れて山崎に向かうことにした。途中で年寄りとくノ一を西国街道の入り口を見張らせた。山崎には一番高い天王山がある。山に登り始めた時に手裏剣の応酬を受けた。狗は山に登るのを諦めて麓に降りた。服部がすでにきている。まさかここで家康が合流するのだろうか?だが家康本軍の動きは伝えられていない。
「どれほどいる?」
「百はいるようです。宗矩が指揮を執っているように思います」
夜はここで野宿をする。夜明けに草の動く音に剣を握った。鼠の笛が鳴った。
「鼠か?」
さすがに速い。だが相当疲れているようだ。
「秀吉殿に渡しました。高松城を和解して全軍の大返しを始めました。恐らく服部は情報を得たようです」
さすがに早い判断だ。あの軍師は準備を始めていたに違いない。家康が一番恐れているのは秀吉だ。