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コンビニおもてなし3号店と、魔女集落 その3

 その日の夜、
 いつものように、スアとパラナミオに加えて、ブリリアンやイエロといった店の皆との夕食を終えた僕は、巨木の家の中の部屋でくつろいでいた。
 その時、ふと気になったので、スアに聞いてみた。
「この世界の魔法使いって、どうやって魔法を勉強してるの? やっぱり魔法学校みたいなとこに通ってるの?」


 僕の元いた世界では
 4つの学部にわかれてて、なんか帽子が「君がどこどこ所属!」とかやってる、そんなでっかい魔法学校があったりしたんだけど……まぁ、映画の中の話だけどさ……んで、この世界にはそんな魔法学校的な物はないのかな? と、思ったわけです。


 すると、スア。
 露骨に嫌そうな表情を浮かべて
「……魔法学校は、ある、よ……でもね、王都にだけ」

 あ~……
 その王都って言葉でだいたい想像が付きました。

 王都と言えば、最近、事あるごとにその姿をみかけている、あの、お~っほっほっほな、上級魔法使いのお茶会倶楽部が絡んでるんじゃないの?

 僕が、苦虫をかみつぶしたような表情でそう言うと、スアもまた、同じような表情を、その顔に浮かべながら、こくんとうなづいた。

 スアの説明によると
 なんでも、王都にある魔法学校に入学する・もしくは教職員として働くには

 人族なら、貴族か、貴族の推薦状を持参することが必要となり
 魔法使いなら、魔法学校で魔法を教えている魔法使いの面接を受ける、合格する必要がある。

「……ひょっとしてさ……魔法学校で魔法を教えている魔法使いって……」
 そう僕が聞くと、
 スアは、再びその顔に露骨に嫌悪の表情を浮かべ
「……全員、王都で暮らしてる上級魔法使い……ね」
 そう言うと、その頬をプゥと膨らませて怒っていく。

 ……そう、怒ってるスア 

 ……なんですが
 この、頬をプゥってする、スアの怒り顔ってですね、
 なんかもう、抱きしめたくなるくらい可愛いんですよねぇ。
 いやぁ、お見せ出来ないのが本当に残念です。


 で、まぁ
 話を戻しますと

 この上級魔法使いのお茶会倶楽部会員達は、自分達の意に沿う人材以外を、魔法学校に受け入れていないんだとか。

 それでも、一昔前の
 魔女全体の魔法レベルの向上のために、このお茶会倶楽部を作った初期メンバー達は
 それでも、会員であるかどうかの分け隔てなく、その魔法の実力のみに着眼し、面接を行っていたそうなんだけど、
 ここ数十年で、一気に堕落し、
 自分達の既得権益を守ることだけに固執している今のメンバーに落ちついてからは
 魔法学校に採用される魔法使いのレベルが目に見えて悪化しており、王都での評判も絶賛がた落ち中なんだとか……

 ここまでくるともう、害悪以外の何者でもないよな……お茶会倶楽部のヤツらって……

 とまぁ、こんな感じで
 魔法学校から、教員としても生徒としてもはじき飛ばされちゃってるのが
 今現在の、中級以下の魔法使い達の現状

 そんな魔法学校に愛想を尽かした、多くの中級以下の魔法使い達は、
 皆、森の奥深くへと引きこもっていき、そこで独学で勉強し続けているんだとか……
 

 ここまでの話が小難しかったせいか
 パラナミオは僕の膝に頭を乗せて、すでに寝息を立ててます。

 そんなパラナミオの頭を撫でながら僕は

「まぁ、学校の件は追々考えるとして……まずは魔法使い達の収入確保だよなぁ……」
 僕は、う~ん、と唸りながら再び考え込んでいく。

「そういえば、スアって森に引きこもってる時ってどうやってお金を稼いでたの?」
「……私は、本が売れてた、から……」
 
 あぁ、そっか、
 そりゃそうだよねぇ、僕と出会う何十年も前から大ベストセラー作家なんだし……

「……何十年も、わ、言わないで」
 そう言い、またもプゥと頬を膨らませるスア。
 はいはい、わかりましたってば。

 で、まぁ、これは現実的じゃないよなぁ。
 中には、そういった才能を持った魔法使いもいるかもしれないけど、皆が皆、それで稼げるとは思えないし……

 なんて思っていると
 ここでスア、思い出したかのように
「……後は、掲示板の依頼をこなした、よ」
 そう付け加えた。

 ……掲示板の依頼?

 スアによく聞いて見ると
 なんでも、いろんな街の冒険者組合や酒場に張り出されている依頼の中から、魔法案件を選んでは、それをこなしていたんだとか。
「……修行にもなった、よ」
 そう言うスアなんだけど

 ……ちょっと待ってスア
 スアが各地の冒険者組合や酒場を回ってたの?
 ……いや、スアが、転移魔法ですぐに移動出来るのは知ってるけどさ
 スアってば、人族や亜人に耐性がないというか、極度の人見知りじゃない?
 そんなスアが、人族や亜人でごった返してる冒険者組合や酒場の中に行ってたのかと思うとさ……

 そう僕が思っていると
 スアは、腰の魔法袋から何やら取り出した……ん? 水晶玉?

 スアは、その水晶玉を机の上に置くと、その上に右手をかざして詠唱し始めた。
 すると
 水晶玉から無数の光が発していき、天井に何やら映し出していく。

……って、これって、依頼掲示板かい?

 天井を見上げる僕の視線の先には
 無数の依頼掲示板が映し出されていた……っていうか、これ、全部で100近くあるんじゃないか!?

 で
 スアの説明によると
 この街々の掲示板が設置されている冒険者組合や酒場には、スアが作り出した、目玉使い魔ってのが潜んでいて、掲示板の今の状況を、スアの求めに応じてリアルタイムで思念波送信してくるんだとか。
 で
 その思念波を、この水晶が集約し、こうしてまとめて表示しているんだとか。

「……受けたい依頼があったら、目玉使い魔を人型にしてその依頼を受けさせておく、の。
 完了したら、その人型に、完了報告もさせて、報酬も受け取って貰ってた、の」

 なるほどなぁ……
 確かに、こんだけの数の都市の掲示板を網羅してれば、魔法使いに向いた仕事の依頼も、そりゃあるわなぁ。


 そこで僕は考えた
「スア、このシステムを、コンビニおもてなし3号店で使わせてもらっちゃダメかな?」

 要は
 コンビニおもてなし3号店の、書籍コーナーの一角に、常にこの各地の掲示板情報を表示しておき
 魔法使い達が、受けたい魔法を見つけたら、それを目玉使い魔に受領してもらい……んで、後はスアがやってたように、報酬受領まで目玉使い魔にやってもらい、コンビニおもてなしとしては、その紹介料として成功報酬の1割を支払ってもらう。

 こんな感じの物を考えたんだけど
 ここで、すぐに思いつく問題点ってのが

・目玉使い魔に依頼を受領させるのって、スアがいないと出来ないのかな?
・現地で受領した報酬って、スアが転移魔法で受け取りにいかないといけないのかな?

 ってなあたりだったんだけど、
 これを話すと、スア、水晶玉に向かって何やら詠唱を始め

「……対処完了、よ」
 って、え? もう?

 スア曰く
 ・受けたい依頼が表示されている掲示板画像を手で押すと、
  その画像を映し出している目玉使い魔が自動で人型化する。
 ・魔法使いは、その画像に向かって受けたい依頼を言葉で伝える
 ・すると、
  人型化している目玉使い魔が、その依頼書を手に取り、仕事受領手続きまですべて行ってくれる。
 ・作成系の依頼なら、
  作成が完了した後、該当掲示板を再度手で押し、その旨を言葉で言い、
  水晶の前に完成した作成した品を置けば、依頼掲示板のある冒険者組合や酒場へ自動で転送される。
 ・それを、人型化している目玉使い魔が換金処理し、受け取った報酬をその場で送り返してくる。
 ・その際、紹介料は自動で天引きされている。

 とまぁ、簡単に復唱するとこういうことらしい。

 っていうか
 こんなシステムを、僕のあんなつたない説明だけで作り上げちゃうスアって、やっぱすごいな、と、改めて実感したわけで、

 それを伝えると、スア
 顔を真っ赤にしながら照れり照れりと、クネクネダンスを始めます。
 あ~もう、何、この可愛い生き物ってば!


 さて
 翌日、早速このお仕事紹介システム
「ハローお仕事依頼掲示板・全国版」
 を、コンビニおもてなし3号店で稼働開始してみました。

 最初こそ、魔法使いのみなさん
 おっかなびっくりな様子だったんだけど、

 初級魔法使いの女の子が、農場の肥料魔法薬作成依頼を受領し、それをその場で作成、
 で、その場で納品から、報酬受領まで行ったんだけど、その流れを実際に目の当たりししたところで

 皆一気に殺到

 壁に表示されている各地の最新お仕事掲示板情報の前には、常に魔法使い達が殺到し
 次々に魔法絡みの仕事を受領していきます。

 結構多いのが
・魔法害獣駆除薬
・魔法農薬
 こういった品の作成依頼

 主に農場を多く抱えている冒険者組合や酒場の掲示板に多く掲載されてるんだけど
 やっぱ農場が多いせいか、その依頼の数がまた半端じゃない。

 一度に千個とか5千個とか依頼があるわけです。

 で、
 魔法使い達も
 掲示板の前で
「誰かこれ、一緒にしませんか?」
 とか、声かけあったりしてまして
 いつしか、コミュニケーションの場としても成り立ち始めています。

 お試しのつもりで始めたこのシステムですが
 予想をはるかにこえて好評です。

 そのおかげで、魔法使い達の懐事情も一気に改善し
 そのおかげか、コンビニおもてなし3号店の書店ブースの売り上げも右肩あがりなわけで

「これもスアのおかげだよ」
 掲示板の前に、魔法使い達が殺到しているのを見つめながら、僕がスアの肩を抱き、そう伝えると
 スアはにっこり笑って
「……私じゃ、この発想は出来なかった、よ」
 僕にギュッと抱きついてきます。

 で

 そんな僕を物陰から見つめてる魔法使いさんの姿が
 なんか日に日に増えているんだけど

 スア
 そんな魔法使い達に向かって。
「……私の、よ」
 そう言って、にっこり笑っていってます。

 うん
 いい笑顔だ。

 僕は、そんなスアをギュッと抱きしめた。

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