バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

コンビニおもてなし3号店と、魔女集落 その2

 翌日の夕暮れ時
 僕は、スアを一緒にコンビニおもてなし3号店へと顔を出しました。

 で

 いますいます、薬品の買い取り希望の魔法使い達がわんさかと
 
 いつもの、本を読みに来ている魔法使い達とは別に1つ列が出来てまして、
 で、その先頭には、昨日貼った、薬品買い取りのチラシが貼られた壁があります。
 ……律儀にここを先頭にして待っててくれたんだなぁ……なんかちょっと感動が……
 
 で、
 僕とスア、到着と同時にその列の先頭へ移動していくと
「じゃあ、買い取り希望の薬品を見えるように準備しといてくださいね」
 集まっている皆に向かって、僕がそう声をかけていった。

 すると、
 薬品買い取り希望の魔法使い達は、言われた通りに、薬をいれてきている木箱の蓋をあけたりしながら、
 すぐに見えるように準備しています。

 で、
 それを、スアが手をかざしながらまわります。
 で、スアから聞いた話を元に、僕は、その薬の生産者にお金を払って薬を買い取ります。

 これ、
 スアがですね、手の先に魔法陣を展開していまして
 その薬が、販売しても大丈夫なものかどうか
 その品質がAランクからEランクまでのどこにあたるのか

 それをスアが調べ、僕に耳打ちしているわけです。

 なんでスアのチェックが入っているかと言いますと。

 買い取った薬品は、当然コンビニおもてなしのどこかの店で販売するわけです。
 今までのように、スアが材料集めから生成まで、すべてを責任もって携わってくれてるのなら僕も安心して店に並べることが出来るんだけど、

 買い取りした薬にそれを求めることは出来ないわけです。

 中には無免許で薬を作っちゃってる困ったちゃんもいるわけなんですよねぇ。
 そういう人には、免許がなくても作成可能な疲労回復系の飲み物、
 元の世界でいうところのエナジー系ドリンクみたいなのを作ってもらってます。
 これ、意外と売れてるんだよな。


 話を戻しますが
 こうして、スアに、魔法で品質チェックをしてもらい
 その品質によって買取額を決めて、買い取りさせてもらっているわけです、はい。


 で
 この列を見てて気がついたんだけど
 この列、魔法使いより、どうみてもその使い魔の方が数多く並んでるんだよな。

 おそらく、
「薬は作った! じゃ、売ってきて! 私、本を読みに行ってくる!」
 ってなノリで押しつけられてんだろうなぁ

 そう僕が呟くと、列に並んでいる使い魔のみなさん、

 その場で一斉に頷いてきたわけで……そっすか、やっぱそうっすか……

 まぁ、魔法使いさんの方のそういう気持ちも、わからないでもないけどさぁ
 でも、使い魔のみんなが可愛そうじゃないのかな、って思ってもいたんだけど

「むしろ、ありがたいですニョ」
「ここで待ってるだけでいいのですニダ」
「運搬くらいならどうってことないでゲソ」

 とまぁ、使い魔さん達的には、むしろありがたいお話だったようです、はい。


◇◇

 結局、その日仕入れた薬品は、
 いつもスアが作ってる薬品の数の、およそ倍。
 ただ、品質的には、どうしてもスアの作成したものより劣っており、スアの薬と同等に扱うわけにはいかないよなぁ……なんて考えてた僕。

 で、思案した結果、魔法使い達が作った薬品を

『ジネリク医薬品』
 といて、スアの作った薬より若干安くして扱ってみることにしました。

 当然、スア作成の薬には
『スア作成』の説明書きをいれてます。

 で
 こうして販売をしてみたところ、
「……何? このジネリクって?」
 と、まぁ、皆、訝しがってスア作成の薬しか買ってくれません。

 で、これではいかんと思いまして、
 ジネリクの方に、
『効果はスアが確認済みです』
 の文字を加え、
 その文字の後にA~Eの、スア選定による出来上がりレベル
 それと
 この魔法薬を生成した魔法使いの名前と、肖像画までいれ
 いわゆる『私がつくりました』
 的な表記を加えてみました。

「ふ~ん……まぁ、あの伝説の魔法使いが効果を保証してくれてるんなら……」
 ってな感じで、ぼちぼち売れ始めたわけです。

 それでも、まず真っ先に売り切れるのはスアの薬なんだよねぇ。

◇◇

 そんなこんなの試行錯誤の末、
 ようやく薬品の買い取り制度が導入され、集落の皆の生活もそれなりに安定していったわけですが、まぁ、それでも、ここに移住してきている魔法使いの生活が苦しいのに違いはありません。

 で、
 薬品以外にも、何か店で販売する物を買い取りしたり出来ないかな、と思って考えてた僕は
「そうだ、スア。
 味噌玉とか、砂糖玉とかをさ、魔法使い達のプラントで増殖してもらって、それを買い取らせてもらったらどうだろう?」


 プラント魔法がかけられた木っていうのは、
 その木の幹のコブ状になったところに、増やしたい果物や品物を突っ込んでおくと、だいたい一晩で、そのコブの周囲1m範囲内に、コブに突っ込んだ果物や品物がコピーされ、10個前後の実になって精製される仕組みになってます。

 これは、魔法使いが研究に使うために考案された魔法なんだけど 
 僕は、スアがプラントをかけている巨木の家を利用させてもらって、調味料の玉を大量に精製し続けています。

 以前、お試しで、味噌をコブに突っ込んでみたら
 翌朝そのコブの周囲に見慣れない丸い玉状の実が出来上がりまして、
 で、開けてみるの、その実の中にびっちりと味噌が詰まってたんですよ。

 で、僕はこれを「味噌玉」と名付けて、
 料理に使用するだけじゃなく、店でもいくつか売りに出してます。
 この魔法で増殖させたら、毎日同じ実がそこになり始めるので、この味噌玉も毎日10個ずつ生成されているわけです。
 ちなみに、生成を終了させるには、プラント自身の木の葉を、そのコブに突っ込んでやればOKです。
 それで翌日から、もう実はならなくなります。

 で、
 この味噌玉は店でも好評で、売り出せばすぐに完売しています。
 そんなわけで、そういった調味料系の、味噌玉・砂糖玉・塩玉・胡椒玉あたりを魔法使い達のプラントで増殖してもらい、それを買い取りさせてもらえば

 魔法使いはお金が儲かるし
 僕の店は商品をたくさん仕入れる事が出来る

 お互いにwinーwinな関係になるんじゃ、って思ったんだけど。

 なんかスアさん、
 なんとか懺悔室の神様みたいに両手を頭上に振り上げた後、

 その目の前にでかでかと『×』マークを作りました。

 ……え? なんで?

「……プラント、は……練度、がどうしても……

 え~、話がたどたどしかった上に長かったので、僕が要約すると

 このプラント魔法をかけられた木って、
 プラント化したからといってすぐに品物を増殖させられるようになるわけではないらしい。

 なんでも、
 プラント化された後に、大地から吸い上げた生命エネルギーをそのコブで消費し、それによって増殖を行うそうなんだけど、

 プラント化されたばかりの木って、この生命エネルギーの蓄積が致命的に少ないわけです。

 そんな状態でコブを使った増殖をしようものなら
 そのプラント魔法の木は、木が生きていくために必要なエネルギーまで、あっという間に使い切ってしまい、木ごと枯れてしまいかねないんだとか。

 あぁ、なるほどなぁ
 だからスアが植えまくった苗木から育ててる最中プラントの幼木を、すぐに増殖に使わないんだ。

「……プラント魔法の解説本にも、……そこは詳しく書いておいた、よ」
 と、まぁ
 この魔法を中級以下の魔法使い達に広く知らしめるきっかけとなった本の制作者でもあるスアは
『ゴブリンでもわかる、プラント魔法』って書かれた書籍を両手で抱えて僕に見せてくれたわけです。


 いい案だと思ったんだけど、
 結果的に却下というか、集落の魔法使い達のプラントの家が、スアの巨木の家なみに生命エネルギーを蓄積出来るまで、増殖を手伝ってもらうのは保留ってことになったので、他に何か手はないかな、って、店の前に座ってスアと一緒にあれこれ思案していると、

 なんか、使い魔達が僕の周囲にわらわらと集まってきた。

 そんな使い魔達は、僕に向かって
「「「薬の買い取りを始めてくれてありがとう」」」
 って言いながら、ペコリと頭をさげた。

 なんでも
 ここにいる使い魔のご主人である魔法使いに限らず、
 魔法使いってのは、仲間つきあいや人間つきあいがすごく下手なんだとか
「……なので、ご主人様の代わりに、僕達が人間や亜人の元へ働きに行ってお金を稼いでいたんですけど……店長さんが薬の買い取りを始めてくださったおかげで、この集落の魔法使(ご主人様)いの皆さん、すっごく張り切って魔法薬作ってるんですよ。
 そのおかげで、僕達も働きに行くことなく、大好きなご主人様のお手伝いをしていればよくなったんです」
 そう言って、使い魔達はもう一回、みんなで頭を下げてくれました。

 なんか、
 そうやって表だって言われると恥ずかしいもんだなぁ。

 でもまぁ、そうやって喜んでもらえてるのなら何よりだよな。

 僕は、使い魔達に
「これからも魔法薬、ガンガン仕入れるからね」
 そう約束し、皆と握手を交わしたわけです。

 で
 使い魔達が帰っていくと、
 スアがととと、と、僕の側に寄ってきて、ピトッと抱きついてきました。

 ん? どうした、急に?
「……私の、だもん」
 そう言うと、スアは周囲をキッとにらみつけていきます。

 ん? スアは何をやってんだ、一体??

 と、まぁ、首をひねってみるとですね
 よく見ると、スアがにらみつけた先には、なんか、1人から数人の魔法使いの姿がありまして
 スアに睨まれると、ささっと隠れていくわけです。

 なんだ? あれは……

 そう思ってると、スア
「……旦那様、皆に優しい、……だから、みんなも好きになってきてる、の」
 そう言って、その頬をプゥっと膨らませていく、

 っていうか、
 スアも心配性だなぁ。
 僕がそんなにモテるわけがないだろ?

 よしんばモテたとしても
 僕にはスア以外必要ありません。

 スアの目を真正面から見つめながらそう伝えると
 スア、その顔を瞬時に真っ赤にして、照れ照れ状態に。
 この顔がまた、最高に可愛いんですよね、スアってば。

 いやぁ、お見せ出来ないのが本当に残念です。

しおり