バトコンベの大武闘大会 その3
予選1回戦が済んだこの日
バトコンベでは、参加者や関係者を集めた夕食会が開かれるとのことで
予選に参加した、イエロ・セーテン・ルアの3人と
コンビニおもてなしの出店を出していた僕達にも参加のお知らせが回ってきた。
「せっかくなんだし、皆で行かないか?」
そういう僕に、イエロは
「いやいや、拙者、こういう目立つ場所は苦手でござるゆえ……」
苦笑しながら首を左右に振っていく。
「アタシはダーリンが一緒なら行ってもいいキよ」
セーテンを、そう言いながら、僕の顔をにまぁ、と見つめてくる。
うん
この顔は、確実に
『アタシ、酔っちゃったキ』
か~ら~の、お持ち帰りを期待してる顔だな、うん。
すまないセーテン。
僕にそんな甲斐性、微塵も無いから。
「なら、今ここで押し倒……
どっこおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
僕に向かって、宙を舞ってきたセーテン。
瞬時に、僕とセーテンの間に、転移魔法で出現してきたスアの爆裂魔法で派手に吹っ飛ばされていった。
……うん、ほんと懲りないというか……
「アタシは、酒さえ飲めればどこでもいいよ」
って笑うルア……と
さて、そうなると
「じゃあ、慰労会しますかね? 裏庭で?」
そう言う僕の言葉に、皆嬉しそうに頷きながら
「拙者、それが嬉しいですな」
そう言い、嬉しそうに笑うイエロ
「なら、とっておきの酒、もってくるぜ」
そう言い、アハハと陽気に笑うルア
「じゃあ、仲間も呼ぶキ、皆で楽しくやるキ」
って、……あんだけ派手に飛ばされたのに、戻ってくるの早いなセーテン!?
と、まぁ、
そんなわけで、
スアの作成した転移魔法陣をくぐって、ガタコンベにあるコンビニおもてなし本店裏へと帰宅した僕らは早速、すでに恒例となっているバーベキューの準備に入った。
すると
「お! 店長! 今日はなんの宴会だい?」
と
早速、商店街のご近所さん達が、僕の動きを察知して駆け寄ってくる。
ホント、
こういうときのみんなの察知能力はすごいよな。
「さっきね、イエロ達がバトコンベの大武闘大会で予選突破したんでさ、そのお祝い会しようって話になったんですよ」
「なんと!? あの大会で予選突破って、そりゃすごいじゃないか!」
そう言うとおっちゃん、すごい勢いで商店街の中へと走って行った。
すると
程なくして、商店街のみんながワイワイ言いながら集まってくる。
皆、手に、酒やら料理やらを、思い思いに手にしており
手慣れた様子で、コンビニおもてなしの裏手に、勝手に持参してきた机を並べたり、地面にシートを敷いたりして、どんどん宴会の準備を進めていく。
こういうときは
遠慮なく参加し、遠慮無く満喫するのが、ガタコンベ商手街の皆さんの流儀といいますか
この日も、あっという間に商店街全ての店の皆さんが集合したわけです。
店の裏手では収まりきっておらず
一部は店の前の道路にまではみ出して、シートを敷いて酒を飲み始めているんだけど
周囲からそれを注意する人はいない。
なんせ、それに注意をすべき人達ほぼ全員がここに参加しているわけだしね。
んで
僕は早速店の地下にある巨大業務用冷蔵庫の中から弁当用の肉をどんどん運びだしていく。
この業務用冷蔵庫は本当に重宝している。
何しろ、この世界では、物を冷やすとなると、魔石を使用した魔法冷蔵庫を使うしかないんだけど
あんまり大型なのってないんだよね。
しかし
太陽光自家発電システムを導入しておいてホントよかったって思う。
そのおかげで、
この店の電気や、IHクッキングシステム、電気温水器、電子レンジやオーブン、電気自動車おもてなし1号などなど、スアが『カガク!』と呼んで目を輝かせる物達を、この異世界で使用出来てるわけなんだしね。
いつかは壊れちゃうだろうけど
それはまで大事に使わないと……って思ってる反面
日々、このカガクの研究に余念がないスアが、いつかこの太陽光自家発電システムまで魔法で作り出しちゃうんじゃないかって思ってる僕がいたりするんだけどね
……もうすぐ、できる、と、思う
ん? スア、今何かボソッといったかい?
声が小さくてよく聞こえ無かったんだけど。
肉を運び出してると、そんなスアと、パラナミオの2人が僕のそばにやってきた。
スアは、いつものように、凍結して固まってる肉に解凍魔法をかけていってくれる。
で
その解凍が済んだ肉を、僕とパラナミオで、店の裏へ運んでいく。
ん
「僕」と「パラナミオ」だよね?
なんか、パラナミオの後ろにぞろぞろ続いているような気が……
「えへへ、パパ。すごいでしょう! パラナミオやりました!」
そう言って、嬉しそうに笑うパラナミオ。
そんなパラナミオの後ろには、大量の骨人間(スケルトン)が続いていたわけで、
あぁ!? これ、パラナミオが召喚したのか!
サラマンダーの子供であるパラナミオなんだけど
なんでも地の龍、サラマンダーは、こういったアンデッド系の使い魔を召喚する魔法を産まれながらにしてもっているんだとか。
パラナミオも、我が家にやってきてすぐの時に、これを試してみたんだけど
その時は、骨が1本しか召喚出来なかったんだよなぁ
「昼間のお姉さんに、コツを教えて貰いました!
参考にしたら、なんかうまく出来ました!」
パラナミオは、満面の笑みを浮かべながら僕を見つめてきます。
うん、
「パラナミオ、よくやった! 感動した!」
と、どっかで聞いたような台詞に、満面の笑顔をセットにし、全力のハグとともにパラナミオにお届けしたところ、
パラナミオ、
なんかいきなりボロボロ涙を流し始め
「パパ、ありがとうございますぅ、そんなに喜んでもらえて、パラナミオは……パラナミオは……」
って、鼻水まで流し始め……
……でも、無理もないか
パラナミオは、我が家に来るまでは、物心ついた時から山賊達に、奴隷としてこき使われてたんだもんなぁ……
なんか愛おしくなって、僕はパラナミオをさらに抱きしめた。
その後方から、スアも寄ってきて
「……よく頑張った、よ」
そう言いながら、僕と一緒にギュッとパラナミオを抱きしめていく。
もう、こうなると、パラナミオは言葉を発することも出来ず、ただその場で嗚咽をもらすしか出来なくなっているわけで……
っていうか……なんか、パラナミオが召喚した骨人間達までが、いつの間にか僕らを抱きしめにきてるんだけど!?
と、まぁ、
我が家的にすごく嬉しいこともあったりしながら
「じゃあみんな、今日はイエロ・セーテン・ルアの、バトコンベの大武闘大会活躍おめでとうってことで、まぁ、ぱ~っとやってください!」
肉を焼き始めながら、僕がいつものように挨拶して、さぁ、宴会が始まりです。
すでに開会前から酒を飲みまくってる集団もいて
「店長、肉早くぅ」
って、飲み屋のウエイトレス達が集団でやって来る。
ってか、
いつもついで回る彼女達がすでに真っ赤な顔してご機嫌ってのも、なんか新鮮というか
そんな感じで、
コンビニおもてなしの倉庫から引っ張り出してきたバーベキュー網焼き機を駆使し、僕はどんどん肉を焼いては、僕の前に皿を持ってまってる皆に配っていく。
まぁ、みんなも手慣れたもんで
自分の番が来るまでは、酒を飲んだり、持ち寄った食べ物を口に運んだりしながら、皆ワイワイと過ごしていて
「早くしろ!」
「いつまで待たせるんだ!」
とか、苦情を言ってくる人は一人もいないわけです。
ホント
この街のみんなって、気がいいよな
僕は、本気でそう思ってます。
転移したのが、この街でホントに良かったとも。
会場の一角では、いつもの岩場に陣取ってるイエロが、セーテン・ルアと一緒になって酒を酌み交わしてる。
何があっても、何も無くても、イエロはこの岩場で酒を飲むのが大好きで
気がつけば、向かいの店のルアも、一緒になって晩酌してて
いつのまにかセーテンも加わり、3人でワイワイしてるのが常なんだけど
こうして皆が集まった席でも、それは変わらずで
「皆、心ゆくまで飲みましょうぞ!」
そう言いながら、ハッハッハと笑い、酒を豪快にあおっていくイエロ
そこに
「かんぱ~いキ!」
って、自ら手にしてる酒瓶を掲げたセーテンが、そのまま酒を口に運んでいく。
セーテンの酒は笑い上戸なんで、酒の場にいると、皆を楽しくさせてくれるんだけど
「ぱいぱ~い!」
って言いながら、自分の豊満な胸を誇張するルア
……うん……この世界に来てまで、そんな寒い親父ギャグを聞かされるとは夢にも思ってなかったよ、ルア。
いつもの調子でワイワイ賑わうコンビニおもてなしの周囲。
そこには、商店街にみんなや、店のみんな、
いつの間にか、組合の蟻人達まで加わってきたわけで
さぁ、宴はここからだ。
◇◇
みんなに
「お酒を持ってきました!」
「お肉の追加はいりますか?」
と、みんなの間を忙しそうに駆け回って、お手伝いをしてくれていたパラナミオが、睡魔に負けてうとうとし始めたため、僕は肉焼きを自称スアの弟子・ブリリアンに任せ
「おまかせください店長殿、このブリリアンが、ここはばっちり仕切って見せます!」
そう言った後、僕の耳に口を寄せてきて
「……つきましては、奥方であられますスア様に、弟子入りの件について、是非口添えを……」
と、いつものセリフを忘れないブリリアン。
うん
ある意味、気持ちいいくらいしつこい。
それを言葉半分に聞きながら、
僕は、パラナミオを抱っこして巨木の家へと移動。
スアに家の魔法ロックを解除してもらい、中に入ると
僕は、そのまま寝室へ移動
スアがここで、パラナミオの体に洗浄魔法をかけてくれたので
お風呂には入れてないけど、お風呂に入る以上に清潔になったパラナミオ。
確かに、この魔法って便利なんだけど
やっぱり、僕はお風呂に浸かって、ふ~ってやるのが好きだなぁ
で、まぁ
そうやってパラナミオをベッドに寝かしつけると
なんかスアが僕にピトッと
家に戻ってからは、いつもの魔法ローブを身につけていたんだけど
スア
僕に抱きついて、おもむろにローブを脱ぎ去った。
その下には、バトコンベで買ってあげた、あの白いワンピース姿のスアがいたわけで
「……似合ってる、の?」
スア、頬を真っ赤に染めながら、モジモジと……
うん
これはあれですよね
僕は、
「うん、とっても似合ってる」
そう、思った通りの言葉をスアにかけながら、彼女を抱き寄せていく。
いつものように唇を重ねた僕らは
っと、ごめんなさいね
ここからはいつものように黙秘させてもらいますよ、っと
さて、明日もバトコンベで出店を頑張らないといけないけど
まずは目の前の奥さんに……