コンビニごんじゃらす その6
シャルンエッセンス達が、農家に謝りに行ってる間に
僕は、この商店街の組合へ
今、このコンビニごんじゃらすが、書類上はどんな状態になっているのか確認しに行ったんだけど、
「……え? あの商店街の外れの空き店舗に、何か店が入っていたのですか?」
と、
役場の蟻人さん
僕の心をすさまじくかき乱す一言
で
調べてわかったこと。
今、コンビニごんじゃらすが営業している場所
空き店舗です
無許可営業です
……おいおい
ようやく謝罪行脚から戻ったシャルンエッセンスにこのことを伝えると
「誰も利用していなかった店ですのよ? 有効利用して何が悪いんですの?」
Why? とばかりに両手を広げているシャルンエッセンス。
僕の知ってる格闘家にね、
金髪でさ、手に竹刀持ってさ、相手をそれで滅多打ちする悪役レスラーがいたんだけどさ……
「タクラ様、わかりました、すごくよくわかりました。私が何かいけないことをしていたことはすご~くよく理解しましたので、その木刀もどきみたいな物を振りかざすのは勘弁なさってぇ」
まぁ、
実際問題、ここでシャルンエッセンスタコ殴ったところで何か変わるわけでもないし
とりあえず、僕はその場でいくつかのことを決断し、
どうするか、を、シャルンエッセンス始め不良メイド達へ判断させた。
まず、決断したのは以下のこと
この店を一度閉店させる。
その上で、働いている者達を再教育。
目処が立ったら、店を、「コンビニおもてなし 2号店としてリニューアルオープン」させる。
そもそも、まともな営業許可の届け出もしてなかったわけだし
店として成り立ってなかったのも発覚したわけだし
ここはダラダラ続けず、一度すぱっと切って
人材育成の部分からやり直し、店の名前も変えて完全リニューアルした方がいいんじゃね?
そう思ったわけである。
このことに関して
シャルンエッセンス達は、提案した僕がびっくりするぐらい前のめりで了承した。
「もう、タクラ様が……コンビニおもてなし様がバックについてくださるなんて……あぁ、なんて夢のよう……」
そう言い、感激してるシャルンエッセンスなんだけど、
最初に言っておく
俺は、か~な~り、ヘタレだ
こうして偉そうにいってるけど、お前達を確実に良い方向に導けるなんて約束は出来ない。
むしろ失敗する公算の方がでかいとすら思ってる。
とにかく、
やるだけやってやろう、ってのが本音だ。
そう言う僕に、シャルンエッセンスは
「どうせあのまま続けていても、先はありませんでしたもの……よろしくお願いいたしますわ」
そういい、一礼。
不良メイド達も
「よろしくお願いしたいです」
そういい、一礼
そんな中
「何言ってんだタクラさん……あんたのあの男気、最高だよ……あんたに突き刺された額のフォーク……あれがさぁ、アタシ、今も忘れられないんだ……アタシ、あんたに一生ついていくぜ!」
そう、宣言した不良メイドリーダー。
「アタシはシルメール。気軽にSMと呼んでくれ」
いや無理
気軽にとか言いながら、全然気軽じゃない略称をしれっと出すんじゃない。
しかもお前
なんで僕がフォークでぶっ刺した額押さえながら、恍惚の表情浮かべてんの?
……僕は、やばいやつのやばいスイッチ押しちまったのか……
無理矢理話を進めます。
僕は、とにかくこの店を片付けてから、ガタコンベにあるコンビニおもてなしへやってくるよう、皆へ指示し、一度ガタコンベへ帰宅。
そんな僕に、スアが玄関入るなりに抱きついてきました。
「……寂しかった」
って、スア。
今朝も一緒だったじゃん、そこまで寂しがらなくても
「……3話ぶり……だもん」
スアさん
お願いだから物語の中の人らしからぬ発言は慎みましょうね?
で
とりあえず、スアに状況報告
まぁ、予想はしてたけど
スアはこの内容を、僕にこっそり憑依させていた思念体で聞いていて、すべて把握していた。
うん
僕、絶対浮気できないな……しないし、する気もないけどさ
で
スアは、街の声もあれこれ拾ってくれてたんだけど、一言
「……無理ね……ひどすぎ、る」
あ~……街の声レベルでこれなら、潜在的には相当根深い気がするなぁ
やっぱ、店を閉めてゼロからってのはいい決断だったかもしれない。
とにかく、ブラコンベの組合には、正式に店舗の斡旋依頼をだすこととして、
まずは社員教育だな。
あのお嬢様気質バリバリのシャルンエッセンスと
まともな接客勤務を経験していない不良メイド達に、いかに接客技術を叩き込むか……
彼女達の手持ち資金のことを考慮すると、
短期集中型で結果にコミット出来る……そんなで~、で、で~、な教育をしてくれるようなとこ、ないもんかねぇ……、いっそ泊まり込みでも構わないんだけど
そう悩んでいる僕に、再度スアが
「要は、接客……技術……だよ、ね?」
うん、まぁそうなるね。
「……1つ、心当たり……ある、よ」
え? マジ!?
「……でも、その……前に、ね」
そう言って僕の首に腕を回してくるスア。
ここから翌朝までの内容は黙秘します。
で、数日後
ブラコンベの旧コンビニごんじゃらす店舗をすべて片付けたシャルンエッセンス一行がやってきた。
そんな一行と僕は、スアの転移魔法で、即座に移動
例によって、重度の対人恐怖症のスアは表にでてこず、巨木の家から遠隔操作でこの魔法を使用したんだけど、そのせいで、シャルンエッセンス達には、僕が魔法を使用したように見えたらしく
「こんな転移魔法を使用出来るなんて、タクラ様、あなたは神様ですか!?」
なんか、えらく感動され
なんか、えらく土下座され
なんか、えらく崇拝されだしたんだけど
すごいのは奥さんであって僕じゃない。
と、いくら説明しても信じてくれない一同なので、
説得をすべて放り投げた僕は、
そのまま転移先にあるお屋敷へ
そこで僕を出迎えてくれたのは、木人形メイドのエレこと、エレクトラ=アンドゥトロワ
「ご主人様、5話ぶりにお会い出来てうれしいです」
あ~、エレさん
君も、お願いだから物語の中の人らしからぬ発言は慎みましょうね?
で、
事前に、スアの思念波で、お願いしたい案件を伝えてあったんだけど
エレは、僕を前にして改めて一礼すると、
「旦那様の後ろの方々を、ビッシビシしごけばいいのですね? ビッシビシですね」
木人形のため、表情がないエレだけど
なんだろう、魔界からの使者に見えてきそうで……
で、そんなエレに一同を預けました。
で、こちらにありますのが、預けてから1週間後の一同でございます。
「タクラ様、ようこそいらっしゃいました」
シャルンエッセンス始め、あの不良メイド達が、優雅でエレガントな立ち振る舞いで僕を出迎えてくれました。
はっきり言えば
結果にコミットしすぎでしょう。
そういう僕に、
「痛かったのは最初だけでしたわ……」
そう言って頬をポッと赤くするシャルンエッセンス。
うん、詳しく聞いたらやばそうなので、聞かない。
これ、詳しく聞いたら、あれだよね? ヅカな話になっていく気しかしない。
とにかく
エレのスパルタ教育のおかげで、シャルンエッセンスとメイド達の接客に使える目処はたった。
ブラコンベに依頼している空き店舗の斡旋に関してまだ返事が来ていないので
今度はここに調理技術を叩き込むことに
それをエレに伝えると
「そうですね……しごき方に、天界・邪界・地獄界の三段階ありますが、どれで行いましょうか?」
と、エレ。
……とりあえず、次の1週間で、まともな弁当が作れて、パンを焼けるくらいのレベルに……
そう言うと、エレは腕組みして
「……そこまでとなると、この3つのしごき方では難しいですね……」
ちょっとまって
今聞いた3つのレベルって、どれも結構やばそうだったけど、それじゃあ無理ってことなのかい?
「えぇ、皆、お茶を煎れるのは問題無いレベルに引き上げておきましたが、こと料理となりますと、
壊滅的に素質がないといいますか、人類レベルを凌駕して、パナい方が約1名おられますので、その方の料理レベルをそこまで引き上げるとなりますと……」
エレ、よくわかった
シャルンエッセンスには料理をさせなくていい
あとのメンバーだけを仕込んでくれ。
「それなら、しごかなくても1週間で仕上げて見せますわ」
と、エレ。
そうか……そこまでだったのか、シャルンエッセンスは……
シャルンエッセンスが、なんかすごく抗議したそうだったんだけど
さすがエレの躾だね
あのシャルンエッセンスが、ちゃんと黙って良い子にしるよ。