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コンビニごんじゃらす その7

 更に一週間。
 エレが1名以外の皆に料理を教えている間に、

 僕はブラコンベでの作業を進めていった。

 役場に依頼しておいた空き店舗に関してなんだけど、
「先日まで、シャルンエッセンス様が無断使用されていた物件でよろしければ、すぐにでも斡旋出来るのですが……」
 と組合の蟻人さん。

 あの店舗は
 やや手狭なのと、窓が小さいのが難点だったんだけど、

 何しろシャルンエッセンスの手持ち資金の残高を考慮するに、このあたりで手をうっておかないと……と思ってしまうわけで……

 僕はこの建物を買い取る契約を行った。


 ちなみに
 今回のコンビニおもてなし2号店に関しては

 店の開店費用はすべてシャルンエッセンス持ちである。

 ただし、
 現在の彼女が、そこまでのお金をすでに所持していないのは確認済みなので
 一時、コンビニおもてなし本店が肩代わりする形をとっている。

 経営が機動に乗ったら、いくらかずつでも返却してもらう方向にもっていこうとおもっている。

 このことはシャルンエッセンスのみに伝え
 メイド達にはあえて教えないことにしている。

 エレの指導でかなり態度が改善されたメイド達だけど
 根が、あの怠け者といいますか……
 なので、必死にやってもらわないといけないので、
「お前らが頑張らないと、この店の購入代金の取り立てがくるぞ! 給料も払えないぞ!」
 と、目一杯脅しをかけておいた。
 そうでもしないと、もし金を全部僕が立て替えているちわかったら、安堵して本気にならない可能性が高い……いや、絶対さぼる。


 さて
 買い取った店に、早速ブラコンベで建築屋やってるおっちゃん達を呼んだ。

 こういうとき、
 地元の人を使って仲良くなっておけば、何かと便宜をはかってもらえるかも……との思惑があったのは当然である。

「この入り口をぶち抜いてですね、そこにこの……」
 と、店の改築希望案をおっちゃんに伝える。

 おっちゃん側からも、修正案をだしてもらいつつ、どうにか店の改造案がまとまった。

 ただ
 店の入り口側をぶち抜いて、全面ガラス張りにしたいと伝えたところ
「そんなガラス、どうやって作るんだよ?」
 って、逆に聞かれてしまった。
 
 あまり意識してなかったけど
 そういえば、コンビニおもてなしの店ごとこの世界にやってきたとき、みんなあのガラス張りにびっくりしてたなぁ、って思い出した。

 で

 そのガラスですが
「……このカガク、すごい」
 と
 結婚する前のスアが、夜な夜な解析し続けた結果、

 今では魔法で生成出来るようになっています。
 うん
 我が妻ながら、パネェ(褒めてます。

 なので、おっちゃん達には、枠だけ作成してもらった。
「本当にいいのか? これで……」
 そう訝しがりながらも、おっちゃん達、予定より1日早く、3日で店の改造作業を全部終えてくれた。

 で

 ここでスア登場。
 
 ……とは言っても、例によって対人恐怖症ゆえに、
 僕の運転する電気自動車おもてなし1号の後部座席に隠れるようにしてやってきたスアは
 そこから魔法陣を展開

 あっという間に、入口側の扉にガラスを設置してしまった。

 スアが隠れていたせいで、おっちゃん達には、僕が魔法を使用したように見えたらしく
「こんなガラス作成魔法を使用出来るなんて、タクラさん、あなた神様ですかい!?」
 なんか、えらく感動され
 なんか、えらく土下座され
 なんか、えらく崇拝されだしたんだけど

 すごいのは奥さんであって僕じゃない。
 と、いくら説明しても信じてくれないので……って、この展開こないだもあったな。

 でまぁ、
 こうしてコンビニおもてなし2号店の店舗は完成。


 レジの奥にあった簡易のキッチンを、厨房レベルにまでかなり拡大した。
 その分、店舗部分が狭くなったけど
 それくらいなら大丈夫だろう、と、判断した。
 最初は、そこまで売り物を準備出来るとも思えないしね。

 前述したとおり、店の入り口は全面ガラス張りにした。

 ここには、太陽光発電システムを持ってくるわけにはいかないので……
 さすがにスアも、あれは模倣できない、と、いまだに研究を続けてるんだけどね

 というわけで
 入り口は手で開ける扉形式に

 店内の照明も魔道灯にしたんだけど
 この魔道灯は、スアが改良した品なので、一般の店で手に入る物よりかなり明るい、
 スア曰く
「ケイコウトウ?……を、参考にした……よ」
 とのことらしい。

 我が奥さんながら
 伝説の魔法使いの能力、パネェ(褒めてます、すっごく褒めてます


 店内の棚も、シンプルに作り直し

 弁当を置く棚
 パンを置く棚

 と、用途に応じた作りに変更。
 厨房で作成した品物を、すぐに陳列出来るよう、そういう面にも配慮した形にした。


 こういった改築に掛かった費用もとりあえず僕が立て替えており、2号店の経営が軌道にのったら返却してもらう約束になっている。
 
 すでに後がない彼女達をとことん追い込んでいるように見えるけど
 軌道にのるまでのバックアップは全てするつもりです。
 その分、僕にもリスクは大きいわけです、はい。

 
 すでに、

 不良のたまり場だの
 食い物じゃない何かを売ってただの
 盗品売ってただの

 と、まぁ、
 散々な噂がつきまとってるコンビニごんじゃらす

 その跡地を利用して
 リニューアルスタートする、コンビニおもてなし2号店。

 ……元いた世界では、僕が店長になってあっという間になくなったフランチャイズが
 まさか、異世界で復活するとは……

 思わず感涙にむせぶ僕
 そこに、そっとハンカチを差し出してくれるスア
 ここで鼻水までやったら、台無しだよなって思ったら
「……いいよ、しても」
 ってスア。

 ずびびびぃ

 うん
 すっきりした。

 その横でスア、ハンカチを魔法ですぐに綺麗にしてた。
 さすがというか、なんというか……

 一度、スアの転移魔法で別荘へ行き、エレの研修を受けていたシャルンエッセンスらを連れて戻った。
「指導した手前、私も1日お手伝いします」
 と、エレが申し出てくれたので、木人形の彼女も一緒にやってきた。

 開店は明日。

 僕は、シャルンエッセンスらを連れてブラコンベの中央通りあたりでビラ配りをした。
「よろしくお願いします!」
 と、パラナミオも元気いっぱいにお手伝いしてくれてます。

 で

 スアさん。
 気持ちはありがたいんだけど
 その、紙袋を頭から被ってチラシ配らなくていいから
 それ、ただの不審者だから!


 そんなこんなで翌日
 この日は、弁当の作成は、僕と、本店から来て貰った猿人娘2人がメインで作業し
 メイド達には、その補佐をしてもらった。

「タクラ様、このシャルンエッセンスも料理のお手伝いを……」
「さぁ、シャルンエッセンス。貴方はこちらで私と店の掃除をしましょう」
 そう言って、厨房に乱入してこようとしたシャルンエッセンスを、エレが拉致して連れて行った。

 うん、
 エレ、GJ

 そうこうするうちに、僕と猿人娘の指導を受けたメイド達の手で
 パンやサンドイッチも本店で出しているのと遜色ない物が出来上がった。

「私達もやれば出来るんだ……」
 メイド達、肩を寄せ合って感涙
 うん、僕や猿人娘達も、そんなシルメール達の姿に思わずもらい泣きを
「タクラ様、だから気軽にSMってよんでくれってば」とシルメール。
 ……だから、その呼び方はちょっと……


 とまぁ、
 色々ありながらも、2号店開店です。

 さすがに、かつての悪評もあり
 なおかつ、店の雇われ店長が、以前ここであのごんじゃらすを営業してたシャルンエッセンスだってのもあり……まぁそんなわけで、開店当初の客足はいまいちだったんだけど
「おい、この店、あのコンビニおもてなしの、本当の関連店になったみたいだぞ。
 本店の店長がいたから間違いない」
 って噂が商店街内に伝わっていくにつれ、客足がどんどん多くなってきた。

 やっぱ、実際に見ないと信用出来ない部分もあるよな

 僕は急遽、店の前に屋台を出して、
 そこで、弁当とサンドイッチを店頭販売した。

 こうすれば、店内で売っている物が、ガタコンベの物と同じだって、一目でわかるし
 店舗にも入りやすくなるんじゃないかと思ったんだけど、

 作戦成功

 この屋台販売で
 以前のごんじゃらすとは完全に別物になったんだ、と、理解してくれたお客さん達がぞろぞろやってきてくれて、お昼頃には、店内はそれなりのお客さんで賑わってました。
 
 さすがに、いきなり満員御礼とはいかなかったけど、

「こんなにお客様がお越しくださるなんて……」
 って、シャルンエッセンス始め、メイド達皆、すごく感動してた。


 ただ
 もし彼女達が、今までの失敗につぐ失敗を経験してなかったら
 この客入りを見ても
「当然の結果ですわ」 
 お~ほっほっほっほ

 ってな具合になってたと思う。

 結果的にだけど
 シャルンエッセンス達は、いい人生勉強出来たんじゃないかな。

 まぁ、僕もそんな偉そうにいえるほど偉い人間じゃないんだけどね

 これで、
 以前、シャルンエッセンスがだまくらかされて持ち逃げされた高価な服や貴金属が少しでも戻ってくれば……なんて思いはするけど、こればっかりはねぇ


 そうこうしながらも、閉店間際まで賑わったコンビニおもてなし2号店。
 初日は大成功といっていいだろう。

 感涙を流しながら、手に手を取り合って喜び合ってるシャルンエッセンス達

「お、開店したのですね、2号店」
 そんな僕の後方に、不意に辺境駐屯地の隊長・ゴルアが現れた。

 あれ? なんでまたこのブラコンベにいるんだい?

「いえね、このあたりを荒らしまくっていた詐欺師夫婦の潜伏情報が寄せられまして……で、先ほど無事捕縛したのです。これからその身柄を駐屯地に移送するところなのです」
 そう言って、ゴルアが指さした先には、拘束用のカゴ車に乗せられてる1組の中年夫婦の姿が。
 あぁ、悪いことしたらああなるって見本みたいなもんだよねぇ。

 ……って

 シャルンエッセンス、あのカゴ車見ながら、何、鳩が豆鉄砲くらったような顔してんの?
「あ。あの2人ですわ! 私から服と貴金属を二束三文で買い取っていったのは!!」

 声をあげるシャルンエッセンス
 思わず振り向く僕
 焦り顔の中年夫婦
 弁当の残りがないか物色しているゴルア

 と、1人違うことをしてる中

 シャルンエッセンスがその場で被害届を提出。
 ゴルアには、手土産として新たに弁当を作ってあげたところ
「最優先事項として扱わせていただきまふ……」

 ……ありがたいけどさ、食いながら話すなって

「いや、今日は昼飯抜きだったもので」
 そう言って笑うゴルア

 とまぁ、こうして
 コンビニおもてなし2号店の初日は幕を閉じたわけです、はい。

しおり