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奥さまは伝説級魔法使い~ただ重度対人恐怖症


 で、まぁ

 薬草採取に言った帰りに、

 スアさんに告白された僕
 この世に産まれてきて、生涯初の体験に、とまどうことこの上なしなわけです。

 帰りのおもてなし1号の中で
 スアさん、予想通り終始無言。
 真っ赤になってうつむいたまま、じっとしてしまってます。

 こういうとき、もうちょい会話スキルとか高ければいいんだけど
 もともと学生時代からボッチ歴長かった僕に、そういうものが備わってるわけもなく……

 そうこうしてたら、
 スアさん、そっと僕の手に、手を添えた。

 相変わらずうつむいたまんまなんだけど……なんかもう、その仕草が、何この可愛い生き物状態なわけで……

 
 そんなこんなで、店に戻った僕ら。

 店の裏手の駐車場におもてなし1号を止めて、電気充電をセットしている間に、
 スアは採取してきた荷物をてきぱきと巨木の家に運び込んでいく。

 途中、何度かコンビニの2階へ駆け上がって行ってたけど、あれはなんだったんだろう?

 などと思っているウチに

「今日も大量でしたぞ!」
 狩りに行ってたイエロ、ゴルア、メルアの3人が、この日の獲物、巨漢熊を2匹引きずりながら帰ってきた。

 うわ、こりゃすぐさばかないと。

 イエロ達にも手伝ってもらって河原の側でどんどん肉をさばいていく。
 すっごいスプラッタなんだけど、人間慣れてくるとどうも思わなくなってくるもんです、はい。

 巨漢熊は、その名の通りすごい大きく、肉も大量に確保出来た。
 地下にある業務用冷凍庫に入りきらなかったので、
「よし、みんなで熊鍋パーティをしよう!」
 と、思い立ち、店の裏に簡易かまどをしつらえてグツグツ鍋の準備を始めます。

「お、なんか良い匂いすると思ったら、やってるじゃん!」
 早速その匂いをかぎつけた向かいの工房のルアが、酒瓶持参で姿を見せた。
 最近雇ったらしい職人さんらしい人らも一緒だ。
 
 スアのプラントで量産中の味噌玉をふんだんに使った熊鍋は
「このミソってのか、すっごい熊にあうな!」
 って、ルアが絶賛しながら食べまくってる。

 それでも肉はたんまりあるので、さぁさぁ、皆さんどうぞどうぞ、てな具合です。

 しばらくすると、警備の仕事に出ていたセーテンら猿人らも大挙してやってきた。
 当然、来るだろうと思っていたので
「さぁ、遠慮しないで今日は食べてよ」
 って言う僕に、
「さっすがダーリン! 愛してるキ!」
 って抱きついてくるセーテン。

 ん~

 なんていうのか、
 セーテンはスキンシップの一環で僕に愛してるって言葉を連呼してくれてるわけで
 それはそれで、嫌な気はしていない。
 むしろ、嬉しく思ってもいます。

 ただ

 今日の昼間のスアさんに言われた「好き」は、もっと重たいというか……

 なんて考えてたら、僕、大事なことを思い出した!

 料理を猿人料理人4人娘に任せて、僕は自室にダッシュ!
 向かう先はベッドの下
 そう、スアさんがピンポイントで言い当てた、あの秘蔵品の焼却処分を……

 って

 どこにもないんですけどぉ!?

 マットレスを引っぺがして必死に探す僕
 でも
 どこにもないわけで……

 やばいな……どっかで使用して放置した?……いやいや、女性が多いここなので、この部屋以外に持ち出したことは一度もないわけだし……そもそも、ここにこの18禁書物を秘蔵していたことを知っていたのは……

 あ

 僕はここで思い当たった。
 そういえばさっき、荷物を片付けてる最中にスアさん、なんか2階に駆け上がってた……

 あれか!? あの時か!!

 僕は、部屋から駆け出すと、皆が宴会してる横を駆け抜けてスアの巨木の家へ。
 ロックがかかってる部屋の戸をノックすると、カチッと音がして戸が開いた。

 とりあえず僕は、あの秘蔵品をどうにかして返してもらって
 なんて思ってたんだけど

 部屋の中央で僕を出迎えてくれたスアさん

 裸でした

 その手には、僕の秘蔵の……(死亡


 ここから朝までの内容については全て黙秘します。


 朝
 窓から日が差し込む中
 
 スアの応接間のソファの上で目を覚ました僕
 その腕の中には、裸のままのスアがいた。

 僕が起きたのに気がついたスア

 にっこり笑顔を浮かべると

「……おはよう……リョウイチ」
 そう言って、ぽふんと、僕の胸の中に倒れ込んできた。

 うん
 やっぱこれ、可愛すぎる生き物だ。
 僕は、裸のままのスアをぎゅっと抱きしめ返した。

 その後
 服を着直して外に出てみると、昨夜の熊鍋パーティはつい先ほどまで続いていたらしく
 酔っ払いまくっているルアとイエロが肩を組んでなんかまだムニャムニャ言ってるし。
 その周囲も、皆、気持ちよく食って飲んで、楽しんでくれてたらしい。

 気の良い仲間達って感じで、
 なんか良いなって思ってしまう。

 ちょうど視界の端に、組合のエレエが、目を覚まして伸びをしているのが目に入った。
「あぁ、タクラ様、お肉およばれ感謝感謝でしたよ」
 そう言って満面の笑みを浮かべてくれた。
 そんなエレエに
「この世界の結婚って、なんか届け出とかいるのかい?」
 って聞いてみたところ、
「あぁ、この書類を役場に提出すればいいです」
 って、エレエ、いつも持ち歩いてるお仕事鞄から書類を1枚差し出してくれた。

 とりあえず
 僕はその用紙をもらい、調理場に移動。

「おはようございますでおじゃりますぅ!」
 調理場では、すでにヤルメキスがお菓子作りをはじめており
 その横では、猿人調理人4人娘がパンの仕込みを始めていた。
 僕は、皆に朝の挨拶を終えると、いつものように弁当の作成を始めた。

 この日も、店は盛況だった。

 弁当とパン類の売り上げはいつも通りで、
 それに、最近販売をはじめているスアの薬類も相変わらず好調な売れ行きだ。

 昨日、薬草を補充したおかげもあってか
 普段は店頭に並ばない高級薬品が結構並んでたんだけど、速攻これら売り切れていった。
 なんでも
「すげぇ、蘇生薬がこんな田舎の店で売ってるなんて……」
 って、スアってば何気にすごすぎないか!?
「そうなんですよ! スア様はすごいのですよ!」
 って、なんでブリリアンがそこで胸をはってるんだ? おい?

 夕刻になり、片付けを始めた店内に、スアがひょこっと姿を現した。
 
 今朝の今なので、ちょっと気恥ずかしいんだけど……
 そんな僕に、スアはなんか真っ赤になりながら

「……これ」

 って、なんか紙を手渡した。

 広げた僕

 ……あれ……これって、朝、僕がエレエから貰った婚姻届……

「……リョウイチ……落としてた……アナザーボディ……が拾った……の」
 スアの言葉に、僕まで真っ赤になってしまったわけで。

 あぁ、

 なんていうのかな……その、スアも困るよね、1回関係持ったくらいでこんな重いこと持ち出すような

……

……

……あれ?

 すいません、スアさん……私の目の錯覚でしょうか?

 妻の欄に、あなたの名前がすでに書いてあるのですが?

 困惑する僕の目の前で、スアは
「……ふつつか……ですが……よろしく……」
 そう言いながら、深々と頭を下げてくれたわけで……


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