味噌の実
猿人の女の子を4人、料理人としてかかれるで雇ったり
スアの薬がすごく売れたり
その影響でブリリアンが新しく店員になったり
……ち、ちょっとスアさん、そこでなんで叩きますか!?
とにかく、
そんなこんながありながら、店の方はどうにか良い方向に向かっている気がするのですが、あまり実感する余裕はないわけで……
といいますのも、することが多過ぎでマジ死にそうなわけです、はい
……あ、スアさん、今度は滋養強壮剤くれるのね。
現在のコンビニおもてなしの店内で販売している商品はその大半のものは店内で作ったものを売っているわけです。
弁当やおにぎり、パンにサンドイッチと
まぁ手慣れて作っていくとどうしても同じメニューが続いちゃうわけなので、通常営業しながら、その上で新商品なんかを考えたりもしないといけないな、と思ったり、今後の長期的販売戦略とでもいいますか、
元の世界でいえば、
夏には冷たい物、
秋には肉まん、
冬には、加えておでんとか、
と、まぁ、そんなことを考えながら、それを実現するための仕入のことなんかも考えていかないといけないわけで……正直、何をどうしたらいいのか全然わかってないんですけどね………
というのも、元の世界では
夏になれば
「そろそろ冷たい物とかどうですか?」
って、メーカーが売り込んでくるし
秋になれば
「そろそろ肉まんとかどうですか?」
って、メーカーが売り込んでくるし
あ、でも、冬のおでんだけは、全部自家製だったんだよなぁ
おかげで、おでんの味にはかなり自信あります、はい。
ってな感じで
特に長期的展望なんて思って無くても、勝手にどんどん話が来てたわけです
あれがどんなにありがたかったかっていうのを再認識している今日この頃なわけです、はい……
まぁ、愚痴ってもしょうがないので、現状の確認から
弁当とパン、サンドイッチに関しては、例の猿人料理人4人娘のおかげで状況が劇的に改善してはいるのですが、それ以外の食べ物、特に菓子類やスイーツ系が、かなり寂しい状態です。
フルーツを切って凍らせただけの簡易シャーベットと、即席の棒アイスなんかを作って販売したりはしているのですが、ケーキや饅頭、焼き菓子みたいなものもなんとかラインアップに加えたいなぁ、と思うわけです……えぇ、自分が食べたいからですが、何か?
で、そんなこんなで在庫なんかをチェックしてたところで、僕はある事実に気がついた
味噌です。
味噌が枯渇してのです。
味噌は、主に自分用に量を節約しながら使ってたんですけど
最近は、店売りを始めた豚汁なんかに結構使ってたせいもあって在庫が一気に減ってたのに、その場しのぎで、あまり在庫量を確認してなかったせいで気がついてなかったわけです、はい……
日本人である僕にとって、味噌はソウルフード。
えぇ、欠かせません。
ないとマジ泣きます。
実際、味噌がもうすぐなくなるかも……そう思っただけで、なんかじわっときました、はい。
でも、この世界には味噌はないんです……
大豆らしい豆類は見つけてはいるんですけど
味噌の造り方なんて、僕、知らないし……
やれやれ、これは本当に困ったぞ……
そんな感じで、店の倉庫で途方に暮れてた僕。
そこに、不意にスアが現れて、僕に近づき
「……リョウイチ……どうか、した……の?」
上目遣いに、僕に聞いてきた。
僕が、これこれしかじかと、味噌事情を説明すると、スアは少し考え込んだ後、僕が持ってた使い賭けの味噌カップの中から味噌をひとつかみ手に取り移動。
そのまま巨木の自宅の研究室へと上がっていくと、2階の高さにあるその部屋の窓を開け、おもむろに何かを呼び始めた。
すると、木の葉の中から大きな蜘蛛がわらわらと出現し、
スアの前に集まっていく。
スアは、その蜘蛛のうちの1匹の腕に、自分の手に持ってた味噌を塗り込めるようにして渡していく。
すると、その蜘蛛、
木の上の方の方へと上がっていったかと思うと、なんか木の葉の奥にあるコブみたいな部分にそれを突っ込んだ……何やってんだ、あの蜘蛛?
そう、「?」状態の僕に、スアが説明してくれたんだけど
「あれ……木……コブ……プラント……牙目クモ……1日……
え~、翻訳します。
スアの住んでる巨木にはプラントっていう魔法がかかっているそうだ。
木の葉の中、幹にあるコブの中に、増殖させたい果物や植物を突っ込んでおくと、1日くらいでそのコピーを、実として生成することが出来るそうだ。
……何それ? すっごい便利じゃん!
ただ、このプラント、問題もいくつかあって
まず、一度に生成される量が少ないらしい。
そのため、普通は
収穫出来た実から種を採取し、これを地植えしてあとは普通の手法で増やしていかないといけないそうだ。
で、もう1つの問題
この作業、木のかなり高いとこでやらなきゃなんない。
コブが、木の上の方にしか出来ないからなんだそうだ。
で、本来なら、はしごかなんか使ってあがっていかなきゃならないんだけど
そこで活躍してくれるのが、さっきの蜘蛛なんだそうだ。
あの蜘蛛、牙目クモっていう益虫らしい。
プラント魔法がかけられた木に住み着く習性をもっているそうだ。
スアは、この牙目クモをペットとしてテイミングしているそうで、
プラントのコブへの素材の挿入
出来た実の収穫
害虫の駆除
などを全部自動でやってくれるんだそうだ。
スアの会話の翻訳はここまで
で、こっからが本題
味噌は、まぁ大豆から出来てるので
ひょっとしたら、このプラントで増殖出来るかもっていうのがスアの推論
んで待つこと1日
ドキドキしながら待ってる僕とスアの前に
牙目クモが、なんか見慣れない茶色い実を持って来た。
僕は首をかしげながらこれを2つに割ってみると、
中にぎっしり味噌が詰まってた……ま、まじか!?
残念ながら、種らしきものは見当たらなかったため、プラントだけで増殖出来るみたい。
1度に出来る実の数は10個くらいなんだけど、これ1個で味噌樽1個分はありそうなくらい大量に詰まっているのでそれでも十分な量になる。
しかも、プラント魔法で出来る実って、毎日同じ数出来るらしく、この味噌のみ、この日からしばらくの間出来続けるそうだ。
さすがにこのペースで出来続けると、今度は在庫がとんでもないことになってしまうので、今後は味噌の店頭販売なんかも少し考えてみてもいいかもしれない。
なんか
そんなことをあれこれ考えてたら、
なんか僕、うれしさのあまり無意識にスアを抱き上げて踊り回してた……
やべ
紅葉手形が頬に……そう覚悟した僕に、スア
「……そんな……に……喜んで……もらえて……うれしい……」
そう言いながら、なんか真っ赤になって黙り込んでしまった。
思わず僕も無言になってしまい……なんか、このまま、しばし無言で向かい合ってしまった僕とスアだったわけで……
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数日後、
定例の組合の会合に出席。
近々開催される春の花祭りのについてのお話だ。
辺境都市ガタコンベの周囲には、同じ規模の辺境都市が4つ、小規模の都市が10近くあり、ガタコンベ規模の辺境都市が持ち回りで、この祭りを行っているとのこと。
ちなみに、夏と秋にも同規模の祭りが持ち回りで開催されるとのことだ。
今年の花祭りは、近くの辺境都市ブラコンベで開催されるとのことで、ウチの街からの出店希望を募ることになった。
組合の蟻人(アントピープル)・エレエによると、
「タクラさんのお店はガタコンベの超大目玉でございますですので、よろしくなのでございます!」
だそうで、なんかプレッシャーです……