陰謀1
浅井の裏切りがあって信長は逃げるように引き揚げたが。反撃はそこまでで浅井は破れ朝倉は本城に引き上げた。狗は光秀と揚羽の話は報告したがどうしてか柳生宗矩が胡蝶と会うと言ってたことは伏せた。京之助は信用できたが宗矩は会ったこともなく警戒心がある。
浅井の裏切りに合わせるように本願寺が旗を揚げた。これは約束であったようだ。蝙蝠と鼠を光秀に付けた。弾正も怪しいが光秀の動きも怪しい。
「光秀が胡蝶を柳生に送りました。蝙蝠が付けています」
「柳生では争うな。今から行こう」
鼠と夜道をかける。筒井の領地を抜けて柳生に入る。
「今柳生に宗矩が戻ってきています」
鼠の説明を受けて道場の石垣の階段の前に来る。蝙蝠の繋ぎの置石がある。中にいると言うことだ。鼠を逃げ道に配置して潜り込む。さすがに柳生に潜り込む者はいないと見えて下忍の気配はない。だが至る所に侍の姿がある。合図の笛が微かに鳴って蝙蝠が顔を出す。
「先ほどまで宗矩が弟子の稽古をしていました。居間の方に胡蝶が来ています」
と言うと床下を移動する。すでに居間の位置も調べているようだ。蝙蝠を鼠の元に戻して逃げ道を確保させる。剣を交えたらこの二人なら勝算はない。京之助は今順慶の元に戻っているはずだ。
部屋には胡蝶が歩き巫女の格好で座っている。そこに宗矩が入ってくる。手に光秀からの手紙を持っている。
「明智殿からだな?」
宗矩は剣客というより謀臣の臭いがする。胡蝶がすでに白目を剥いている。
「宗矩殿に家康殿に伝えてもらいたい。協力してもらいたいのだ」
光秀の声色になっている。胡蝶は媒体になれるのだ。
「家康殿ができることないと思うが?」
「いえ、今ではない。もう少し先のことです。今の信長殿は長くはない。いずれ消える時が来る。柳生も松永弾正を調べているはずだ。彼には果心居士が付いている」
「確かに」
「今度は直々に家康殿に会いたい」
その時手裏剣が飛んできた。狗は一目散に床を抜ける。そこに柳生の剣士が3人現れる。窓から宗矩が見ている。彼が気付いたようだ。狗は切り込まれて飛び回る。その時蝙蝠と鼠が煙玉を投げる。