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次の手12

 言われた御所の近くの料亭に来ると女中から呼ばれた。鼠だ。
「揚羽は明智光秀に今抱かれています」
「ならなぜ近くにいない?」
「それが天井裏に胡蝶がいて結界を張っています。私が囮になりますからその後潜ってください」
と言うなり鼠は黒装束に変え天井裏に入った。狗はその後ろに控えている。しばらくすると鼠が飛び出していく。その後を胡蝶が舞い降りてくる。逃げ足だけなら鼠は負けることはないだろう。天井裏に入ると揚羽の喘ぎ声の聞こえる部屋を覗き込む。光秀の体にとぐろを巻いた揚羽の背中が見える。
 だが途中から喘ぎ声があの弾正の声に変わっている。弾正がいや果心が揚羽を媒体にして話しているのだ。
「いよいよ毛利が出てくる」
「さすがに弾正だな?」
「胡蝶は役に立っているか?」
「朝廷を押えた。だが朝倉は難しい。あれはもう腑抜けよ。それで浅井を使う」
「信長の妹が嫁いでいるな?」
 話で聞く線の細い明智光秀ではなさそうだ。
「いずれ弾正の役割は終わる。信長はそう簡単にはゆかぬ。鬼神が乗り移っている。だから果心の力がいる」
「弾正の体を捨て光秀の中に入れとな?」
「だが光秀が信長に代われるのか?」
「信長は葬り去れると思う。だが天下を盗るにはまだ万全ではない」
「慎重なのだな?」
「だから徳川を調べている。秀吉とも話をしたがあれは根っからの信長信者だ。それで胡蝶をまだしばらく借りる。次は柳生宗矩に会わせる」
 宗矩の名が出た。次の瞬間揚羽が剣を抜いて天井を突き刺した。

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