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次の手11

 弾正が戻ってから揚羽がまた城を抜けた。蝙蝠は腕が腫れて動けない。それで鼠を揚羽に付けた。狗は年寄りを使って京之助に繋ぎを付けた。それで3日後京之助から何時もの旅籠で待つと言う知らせを受けた。旅籠に入ると下の居酒屋で京之助が酒を飲んでいる。
「どこにおられたのですか?」
「堺だ」
「また?」
「柳生の手のものから毛利が出てきたと言う知らせがあった」
「そのことでこちらもお知らせがあります」
 京之助が酒を勧める。
「毛利の小早川と弾正が密やかに会っていました」
「やはりな」
「いよいよ毛利が出てくるのだな?信長殿の危機だな」
「どうなのです?」
「筒井も考えている。だが私が見るに毛利には天下を狙う気概がない。徳川殿は慎重だ」
 柳生は徳川の命で動いている。筒井にいる京之助も同様だ。
「だが弾正がこの均衡を破る引き金となるような気がする」
「弾正は自分が天下を取りたいと?」
「初めはそうだったかもしてないが、今は信長に天下を盗らせたくないというところかな。狗には明智の動きを調べてもらいたいのだ」
「今明智ですか?」
「宗矩殿はいやに光秀が気になるようだ。弾正との繋がりも気にしている」
 確かに果心居士と直接話している。その後年寄りを呼んで光秀の居場所を調べさせる。報告では御所の近くの料亭にいると言うことだった。すぐに商人姿になり旅に出る。

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