次の手5
筒井の陣を兵に姿を変え抜ける。順慶の陣幕が見える。だがそこに黒装束が現れる。これは柳生の下忍だ。後ろに柳生の侍が出てくる。これは京之助の配下だ。狗は覆面を剥いだ。
「狗だな?」
「京之助殿に合わせてください」
「よし分かった。付いてまいれ」
陣幕に入ると順慶の座っている床几が見えるところまできた。30人ほどの武将が取り巻いている。その中に京之助がいる。
「どうした?」
「弾正の忍者が順慶殿の暗殺を企てています。しばらくすると陣先で爆発が起こります。これに乗じて潜んでいる弾正の忍者が」
「分かった」
と言うなり京之助が順慶の元に行って何やら囁いて陣幕の奥に消える。柳生の配下の侍が狗のところに戻ってきて、
「この鎧を着けて警護に付くように」
と伝える。その間に鎧を被った順慶が戻ってきて床几に掛ける。それから武将が入れ替わる。その後に陣幕の先で爆発が起こる。筒井の兵が騒めいて爆発の方に掛けていく。揚羽が仕掛けたのだ。狗は陣幕の周辺を見渡している。いつ入ったのか黒装束が10人陣幕から飛び出してくる。これに対して武将が素早く剣を抜いて立ち向かっている。どうも柳生が入れ替わっているようだ。黒装束の半分が切られている。腕が違う。
次の瞬間矢継ぎ早に手裏剣が順慶に向かって飛んでくる。狗も合わせて手裏剣を投げる。だが同時に黒装束は剣を突き出して飛んでいる。揚羽だ。これは順慶の剣では受けれない。だが順慶は剣を受けると見事に躱してそのまま左腕を切り落とす。だが揚羽は見事に回転をして陣幕に消える。
「狗の手裏剣はなかなかのものだな?」
順慶が兜を取った。京之助だ。
「この手裏剣には毒が塗ってある」
その瞬間に別の影が切り落とされた揚羽の腕を持ち去っている。