反逆8
「弾正の兵が織田屋敷を取り囲みました。すでに京に赤松の兵も入ったとのことです」
と鼠が知らせてきた。
「みんなは洞窟に戻ったか?」
「はい。六角とは話がまとまらなかったようです。本願寺は山を下りてきています」
揚羽が知らせに走ったようだ。ほとんど弾正の読み通りに動いている。だが代官が抜け出したことは知らない。
「鼠は揚羽を見張ってくれ」
鼠が走ると狗は床の下を這っていく。その先に猿がイライラして下忍が現れるのを待っている。
「待っても来ない」
狗が猿の首に短刀をあてがう。
「誰だ?」
「分からぬか猿?」
「狗?」
「よくも揚羽と組んで仕掛けてくれたな?」
「なぜ分かった?」
「それより猿は式神だってな?果心居士の紙人形だな?」
「そこまで知っていたのか?」
「揚羽も式神だな?弾正もまた式神か?」
「弾正は式神じゃない」
「果心が体に棲みついているわけか?猿は狗の代わりに死ぬのだよ」
と言うなり首を切り落とし顔を剥いだ。これを狗の黒装束に包んであの川に捨てた。すでにこの頃は織田京屋敷は弾正の手に落ちた。ほとんど抵抗がなかったようだ。
狗が旅籠に戻ると鼠だけでない気配がして天井裏に潜った。
「狗私を忘れた?」
何と座敷に座っているのは狐だ。
「弾正から大和から京屋敷に30人が呼ばれたの。私も選ばれたわけ」
狐のことだから家老でも口説いたのかもしれない。