急に言われても、ねぇ……?
僕の名前は『ルード・アファイン』、『ガルジア帝国』に住むごく普通の15歳の平民だ。
この国は帝国というからには国土が広く周りの国からも恐れられている。
と言うのもこの国の皇帝である『ルヴァン・ガルシア』は数々の策略で国を広くして行った。
その一番の作戦が『自分の娘を他国に嫁がせる』、と言う物だ。
一見すれば娘を政治の道具に使っている、と言う批判はある。
しかし、他国は『ぜひ我が国の王子とっ!』と言ってくるのである。
何故なら皇女様達は国内外で非常に人気がある。
美人でスタイル抜群、性格も良いと聞いている。
皇女たちを巡って他国同士で争いがあったりなかったりとか噂もあるぐらいだ。
まぁ、そんな事は僕には正直どうでもいい話で……、目下の所、僕が今越えなければいけない壁はつい最近長年付き合っていた彼女に振られてしまった事だ。
僕の元彼女は皇女様とはいかないけど美人で有名だった。
僕と元彼女は幼馴染で親同士も友人関係、常に一緒にいた。
変わったのは一年前、元彼女がある貴族の家にメイドとして働きに出た。
まぁ、そこの息子に見事に寝取られてしまった訳ですよ……。
いきなり『ごめんなさい!私、『ユーミア』様と結婚する事になったの!』と言われた時はショックだった。
その隣にいるユーミアという貴族令息の人を見下し勝ち誇った顔……。
正直、その場でぶん殴りたい気分だったけど周りに警備兵がいたりして確実に僕がボコボコにされるのが見えているのでグッと堪えた。
当然だけど、家と元彼女の家との関係は断絶してしまい、元彼女の両親は貴族が納めている領地に引っ越してしまった。
更に運が悪い事は続き、つい最近両親がたて続きに亡くなり僕は天涯孤独になってしまった。
おまけに勤めていた商会が経営が悪くて人件費の削減とかでクビになってしまった。
今、多分僕がいるのはどん底だろうな、と思う。
で、現在何もやる気が起きず家に籠っている状態。
退職金で何とか生活出来ているけど、今後の事を考えると働き先を探さないといけない。
しかし、やる気が起きずベッドで寝転びボーッと天井を見ている。
将来の光も何も見えない、そんな状態だった。
そんなある日である、突然扉をノックする音が聞こえボーッとしながら扉を開けた。
「はぁ~い、どちら様ですか……」
そこには立派な服を着た方がいた。
「ルード・アファイン、悪いが一緒に来てもらおう」
有無を言わせないばかりにと僕は馬車に放り込まれた。
「あの、どこに連れて行かれるんですか、僕何か悪い事をしましたか?」
「心配しなくていい、決して悪い話ではない」
そう言われてもいきなり連れ出されて何もわからない状態で不安しかない。
暫く馬車が動いて漸く止まり降りて目の前に現れたのは立派なお城だった。
「さぁ、私の後について来てくれ」
そう言われて僕は連れて来た人の後をついて行った。
ついた場所は会議室だった。
「皇帝閣下、ルード青年を連れてまいりました」
「そうかそうか、下がっていいぞ」
え? 皇帝閣下?
会議室には如何にも偉い人がいた。
この国に住んでいる住人なら誰でも知っている人物、ルヴァン・ガルシア皇帝閣下だった。
「いきなり連れて来られて混乱していると思う。だが事態は急を催す事だ」
「は、はぁ……」
「単刀直入に言おう、ルードよ、我が娘と結婚してほしい」
……はい?