悪事は見逃せません
私は城を出て、直ぐに頂いた袋の中身を確認した。
「えっ!? 金貨がたくさん!」
大きな声で叫びそうになったが私はなるべく抑えて小声で言った。
周りをキョロキョロと見渡して今の声が聞こえていなかったのを確認する。
「ふぅ、良かった・・・・・・。しかし、気前良すぎるんじゃない? 候補になっただけでこれだけ貰えるなんて・・・・・・、それだけ聖女が国にとって重要な役割て事よね」
あのギスギスした会場の空気を思い出した。
あれ、絶対殺意もあった筈だ。
私の知らない所で色々あるのかもしれない。
うん、早めに逃げて正解だった。
あんな悪意に満ちた部屋にいたらこっちにも影響が出てくる。
「これだけあるんだったらお土産を買っても良いよね、余ったら貯金しましょう」
私はアレコレとお金の使い道を考えて歩いていた。
「いやっ! 離してっ!?」
「いいからこっちに来るんだっ!!」
ん? 何かしら、この声。
私は声がした路地裏を覗きこんだ。「明らかに誘拐の現場よね・・・・・・」
明らかに地位が高そうな少女が覆面をした男二人に浚われようとしていた。
ここで私が取るべき行動はただひとつ。
「憲兵さ~ん! 人浚いがいますよ~!!」
大声で憲兵を呼んだ。
「っ!?」
男達は私の声に驚いて固まっていた。
「どうかしましたかっ!?」
「あの人達、誘拐犯ですっ!」
「なにっ!? お前達っ! 大人しくしろっ!!」
「くそっ!? 逃げるぞっ!」
「待てっ!!」
誘拐犯達は慌てて逃げていき憲兵は誘拐犯達を追いかけて行った。
「あの・・・・・・、ありがとうございます」
「いえいえ、犯罪は見逃せないので」
誘拐されようとした少女は恐かったらしくガタガタと震えていた。
それから直ぐに誘拐犯達は憲兵に捕まって、私達は事情聴取をされた。
王都て物騒だなぁ、て思った。
が、この少女が実はこの国のお姫様で私はこの時気に入られた事に気づかなかった。