第二話 女子高生切り裂き事件
ここ最近はこの事件で持ち切りだな。
SNSでも話題になっている。
「女子高生切り裂き事件」
世間ではこの呼び名で定着している。
名前の通り女子高生だけをターゲットにして、刃物でズタズタに切り裂くという事件だ。
この事件の一番むごいのは……決して殺さないということだ。
襲われた女子高生は、顔や体に一生消えることのない傷を付けられ、醜い姿に変えられる。
……朝から胸糞悪い。
―――この事件は約1か月前、4月頃から始まった。
最初は、深夜に一人でいる女子高生を襲っていたが、日に日に深夜から夜、夜から夕方。
今では、一日中狙われる危険性がある。
そして狙われるのは決まって田舎の地域だけだ。
多分田舎の方が人目につかないし、警備も緩いからだろう。
俺が住んでいる地域もだいぶ田舎だが、まだこの事件は起こっていない。
この犯人は何を目的にこんな事件を起こしているんだ。
……理解できない。
犯人の呼び名は通称「レッドアイ」。
血のような赤い目をして、黒い装いに身を包み、顔を仮面で隠している。
そしてレッドアイはものすごく強いらしい。
襲われた子の彼氏がボクシングでかなり良いところまでいった人を病院送りにしたり、
警官5人が一斉に襲い掛かっても、逆に返り討ちになったらしい。
本当にレッドアイは何者なんだろう?
「はい、ちゃっちゃと食べちゃいなさい」
声のする方を見てみると、お母さんが朝食を持ってきてくれた。
今日はご飯とウインナーと卵焼きとみそ汁だ。
「頂きまーす」
別に急がなくても学校には間に合うから、ゆっくりニュースを見ながら食べる。
朝食を食べ終わって、テレビを見ていると、あるニュースが俺の目を留めた。
「スーパー女子高生ね~」
俺とはかけ離れた人種だ。
俺と同い年にして空手の世界チャンピオン。
運動神経抜群で、何でもすぐにマスターしてしまう。
その上、可愛い容姿と人当たりのいい性格で、テレビに引っ張りだこだ。
野田茜音《のだあかね》
日本で知らないやつはまずいないだろう。
女子には憧れ、男子にはアイドル的存在だ。
俺はテレビに映っていたら見るが、それ以外は特に見ることはない。
「そろそろ準備するか」
自分の部屋に戻り、制服に着替え、今日の授業の教科書をリュックにつめる。
今日は体育があるから、少々憂鬱だ。
下に戻り、弁当をリュックに入れ、玄関に向かう。
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
運動靴をはき、玄関の戸を閉める。
「今日は暑いな」
そんなことを思いながら、自転車にまたがり、片道10分の道のりを今日も目指す。