船長の予感
目映い朝日の光が静かに木造の家壁に差し込み出した。すでに空は明るくなり、小鳥の鳴き声が温かくなり始めている空気を伝って人々の耳に届き始めている時間だった。
梅雨の時期も終わり、初夏を迎えた先週末からずっとお天気日和が続いている。
さあ、今日も一日が始まる。青空を見上げるのがちょっとした習慣になっているティムの褐色の瞳に雲一つないスカイブルーの海が反射した。彼にとって青空はまさに希望の象徴だ。何にでも、どんなことにでもやる気が湧いて物事に対する意欲を生み出してくれる。彼は目をつむり朝の新鮮な空気を大きく吸い込んだ。
頭上から手元に視線を戻し、古びた一枚の羊皮紙を楽しそうに眺め回した。複雑な図形とその周りに点在する文字がびっしり羅列している紙切れを丁寧に丸める。
今日こそこの謎を解き明かしてみせるぞ!
丸めた羊皮紙を肩にかけてある巾着に入れると、縁側に置いてあった一冊の分厚い本を手にし、朝日が照らす裏庭から表の玄関へと足早に歩いていった。
玄関へ回ると、ティムの父が経営する水汲み場にすでに人だかりができていた。夏なので、暑くならないうちに早めに汲んでおこうといつもより多めの人数が押し寄せている。毎回来る人はおおよそ決まっていて、皆愛想がいい。
ティムが玄関を外門に向かって進んでいくと、それに気づいた一人の小柄な中年くらいの男がさっそく話しかけてきた。
「おはよう、坊ちゃん。今日はいつもより暑くなりそうな予感がするよ。今日も学校かい?」
顔見知りである男の顔には小さな汗ばみが見られる。両手で抱えた大きな樽を手前に持ちながら笑顔を向ける。
「おはようございます。学校は今日もありますが、午前中だけです」
空いた午後の予定を聞かれないよう祈ったが、あいにく男は「午後はどうするんだい?」と聞いてきた。
「午後は………」言葉に詰まった。「………友達と遊びます」
半ば適当な表現で返したものの、男は「そうか。若いってのはいいねえ」とにこやかだった。
どちらかというと人見知りなティムには、常連は「水を汲みに来るだけの人たち」と単純な認識で捉えていた。よほど仲の良い間柄でないと開放的な態度で臨めない彼にとってはなるべく手短な会話で終わらせたいものだった。
「それじゃあ、失礼します」
そそくさと門を抜けると、街道へと続く小道へ駆けていった。
その時、ティムの抱えた本の隙間から一枚の小さな長方形の紙がひらりと落ちた。
気づいた男がそれを拾い、「坊ちゃん!落としたよ!」と声をかけたが、ティムの耳には届かなかった。
「おおい!」と声を上げて追おうとしたがすでに彼との距離は遠くなっていた。
「行っちゃったな………」
拾い上げた紙を見てみると、横文字で「ティム・セイバージャスト」と本名が書かれており、その下に住所と学校名、学問の等級が記してある。身分証だろうか。仕方がないので父のレイトンに渡そうと考えた。しかし、後ろに並んでいた年輩の女性が「今日はレイトンさんは外勤じゃなかったっけ?」と聞いてきた。このあたりの町民では顔の広い彼の予定はおおかた把握されていた。
そうだった!
「さて、どうするか………」
考えた末に、また会った時に渡すまで持っていることにした。
ティムの通うメルトレール学院は様々な学問を修めることができる、ポートガルディ島で唯一の民間学校だ。港町から五百メートルほどのところにあり、島に住む人たちは大人になるまでの間、揃ってこの機関にお世話になる。五歳を過ぎた頃から入学し、必要な読み書きを一定期間学習したのち、自分が興味のある分野の学部へと進級し、そこでより専門的な知識を習得していく。等級が進むにつれてその専門性はより深みを増していく。そうして一つの分野を学問として究めた暁には、卒業できるかどうかの見極めを行い、それを通過すると世界に通用する資格または博士号を取得するための大規模な試験を行う。無事合格した者は世界各地で展開される事業や機関に配属できる支援制度を受けられる。そうして周囲からいっぱしの大人として認められるのだ。一昔前までの世代は卒業後も島にとどまる人が多かったが、今の世代は外の世界に憧れてほとんどの学生が島を出ていく。そのため、学校内で知り合った友人や恋人とはその後は音信不通になることが多かった。
そんな学院に入学してから十年以上が経過したティムの選んだ学問は歴史学だった。志望した理由には彼独自の考えに基づいた選択が端を発していた。それは「歴史の真実を解明することで、世界の根幹的なあり方を真っ向から覆すことができる」という考えだった。つまり、現在の世界を形成してきた本質を歴史という側面から学習し、そのモデルを発見すればそれが新たな世界の規範になる、という考えだ。しかしこの考えには既存の価値観や概念を批判するという傾向も見られ、ともすれば異端として受け入れられがちな部分を併せ持っていた。そのせいか彼を非難したり侮蔑する輩も多くいた。入学当初は元気に満ち溢れ友好的で人見知りのなかった彼も、その影響を少なからず受けて次第に内向的になっていった。今では「あまり話をしない消極的男子」として一部の友人を除いて周りの学生たちから相手にされなくなっている有様だった。
そんな彼にもたった一つだけ心を支えてくれるものがあった。いつだってロマンにあふれ好奇心や想像を膨らませることのできるある伝説の一部を歴史学の視点から学べること。それがすべてだ。今日の授業にはその「伝説」の話を聞ける。それがある度に倦怠感が鬱積した日常を解消してくれる唯一の救いだった。
「その伝説にもし社会のモデルがあるならなあ」ティムは呟いた。街道を歩いて四、五分も経つと自宅の近隣に生えていた大きな広葉樹も姿を消して、代わりにレンガでできたきれいな街並みが見えてきた。朝の通りにはそこまでごたごたした喧騒は見られないが、今日も一日の仕事に励む人々がせわしく歩いている。こんな何気ない日常が一瞬で変わってしまうようなモデルが仮に存在するなら、どんなに生活が楽になるだろう。そこには均一化された価値観で人が左右されることはなく、また迎合されることのない、自由で生き生きとした暮らしがあり、人々は幸せそうな表情をしている。そんなモデルがあるとするなら、人類はまさに地上におけるユートピアを築くことになる。それを実現できそうな可能性があるのは、やはりあの伝説に他ならないとティムは考えるのだった。
行く手にメルトレール学院の正門が見える。すでに多くの生徒たちが登校しており、門を次々に潜り抜けていく。
彼はその流れにひそかに乗って、歩く速度を速めた。
門を抜けると、友達とふざけている小学年や手を繋いでいちゃいちゃしているカップル、難易度の高い議論を繰り広げているエリート学生まで、実に様々な生徒が行き来していた。
「よう、ティム」
不意に後ろから声をかけられ、振り返ると、数少ない親友のバートンが近づいてくるところだった。
隣に追いつき、「今日はお前の好きな話が出るんだってな」と話題を切り出した。
この友人はティムの話に耳を傾けてくれる存在なので、心を許せる。彼はいきなり伝説についての話を持ち掛けられて機嫌が良くなった。
「今日の授業には、古代の建物における建築様式を教えてくれるからね。それに付随してあの都市の構造形態も出てくるって先生は言っていたから、楽しみだよ。建築から生活モデルを見出すのも魅力的だよね」
「前にも言ったけどな、俺はティムの新しい考えを世界に取り込むって考え方は好きだ。今の生活スタイルはあまり面白くないからな。だがそれを仮に発見できたとして、それを実行に移すとなるとめちゃくちゃ大きな総入れ替えが必要になるぞ。つまり、現在の世界にある一切合切を淘汰してそれに順応する必要が生じる、ってこった。それもそれで非常に大変だし、既存の価値観に馴染んでいる人たちは追いついていけないだろう。現状に依存したいわけじゃない。ただ現実に伴った移行ってのもある程度は必須なんじゃないかとこう思うんだ。お前は一気にすべてを変える、って傾向が強いからそれが急進派と見受けられて反感を買うのかもしれないな。どうだ?」
そうか、そういうこともあるのか………。考え方に偏りがあり、いつも猪突猛進して惨敗す自分にとっては、有益な考えかもしれない。けれど………。
「でもなあ、なんかこう、スパッといきたいというか………。時代そのものに大きな転換点が欲しいなあ。なんでかって、今の人たちの生き方はなにか足りないというか………肩書きとか地位とかじゃなくてもっと自分の根本的な幸せを考えてみた方がいいというか。今一つ不足している部分を補えていないよなあ」
バートンはさもよろしくないといったように首を横に振った。
「今までの常識に捉われない新しい枠組みを考えるんだったら、自分の考えがしっかりと明確化されてなきゃだめだぞ。特にそれを机上の空論じゃなく実行に移すんだったら、なぜそれが望ましいのか裏打ちされてなきゃならない。今のお前の言い方じゃあ単なる地に足のつかない理想論として受け取られてしまいかねないぜ」
見えてきた校舎の入り口に向かって歩き続けながら、バートンはティムの口振りをたしなめた。
それでもティムには「モデルさえあればどうにでもなる」という抜けがたい持論を手放すことができなかった。それに固執する理由を人にしっかりと説明できるためにたった今進言を受けたのだが、いかんせん彼の頭の中にはそれこそがすべてを解決するという半ば唯我論に近い思いがあった。だから現実主義的思考を持つ多くの学生たちには享受しがたい考えの持ち主であると否定されるのもまた事実だった。その差を埋めるという作業をティムは怠っているのだ。
「まあともかく、お前のすべてを批判しているわけじゃないから安心しろ。いつだって新しい時代を切り開くのは、異端者として扱われてきた革命児の思想から始まるんだからな。おっと、それともう一つ」
そう言ってバートンはジャケットの片方のポケットから茶色い紙袋を取り出した。いや袋というよりくしゃくしゃに丸まった用済みの紙ごみに近い。彼はそれをティムに「ほい」と渡した。
「なんだ、これ?」
思わずティムが首をかしげると、バートンは面白そうに言った。
「迷信好きなお前にはかなり気に入るだろうと思って知人から入手してみたんだ。裕福な金持ちたちの住むパッサシーダ近隣の知人からな。これは何かって?実際に開いて手に取ってみないと分からないが、謎の声が聞こえるコインらしいぜ。噂によると遠いどこかの国の金貨だったらしいが、今となっちゃそれを確かめる術はない。確かなのは、そのコインに触れるだけで、妙なささやき声が頭の中に聞こえてくるってことだ。全員が聞こえたとは限らないらしいが、耳にした者はそれ以降気味悪がって手放したがるんだ。かの知人も聞こえたとかなんとか言っていたな。ともかく、それを受け取って欲しいと言われた時に、そういえば不思議なもの好きのティムがいたな、と思い出しもらったのさ。俺はそのコインのせいで呪われたりするのはごめんだから、お前にやる。まあ、実際呪われるような魔力が眠っているとは限らないがな。とにかく、お前に渡すよ。あ、間違っても今この場で開けるなよ。いきなり幽霊とか出てきてもらっても困るからな」
迷信を信じているのかいないのか分からないバートンの後半の言い分はもはや耳に入っていなかった。「謎の声が聞こえるコイン」と聞いて、ティムは物珍しそうに紙ごみを手のひらに乗せた。一発で気に入ったらしい。知らないういちに彼の口角が上がってきていた。「ぜひ、頂くよ」とにやにやしながら言った。
「それはよかった」受け取ってもらったことに納得がいったのか、バートンは小さく笑った。校舎は目の前だった。
中へ入ると「それじゃあ、俺の学部はこっちだから、ここでお暇するぜ」と言って左側の廊下を進み始めた。
「ああ。ありがとうな」ティムも手を振って友人を見送った。
一人になると、ティムは近くにあったベンチに座ってさっそく丸まった袋を広げて中身を開けてみた。袋の中にはさらに薄い紙で目当てのものが包まれていた。
取り出そうとして一瞬彼は止まった。バートンによると「声」が聞こえるらしいとのことだが、この時点ですでに聞こえたりはしないのだろうか?恐怖心は不思議と沸き上がってこなかった。その代わりもし実際に何かが聞こえたら自分はどうするんだろう?という動悸が渦巻いていた。今ここで手に取ってみるべきだろうか?でも、今日の授業には大好きなあの伝説が出てくる。授業が始まるまで多少の時間はある。二つに一つだ。いや二兎とも追うべきか?もし声に取りつかれて変な行動を起こしてしまったらどうしよう?頭の中で様々な思いが駆け巡った。そこでいつも取っている決断を選択することにした。こんな時にはどうするか?素直に好奇心に従ってみることだ。何が起こるか分からない不安も多少はあるが、思い切って手に取ることにしよう。
ティムは周りを見渡して誰もこちらを見ていないことを確認してから、紙に包まれたコインを恐る恐る取り出した。
平べったいそれはコインにしては少し重みを感じた。これが世間に流通していたとしたら、皆使いにくくて持ち運びに苦労するだろう。そう捉えられるほど重量に違和感があった。重さを感じながら包装された紙を丁寧に開いていくと鈍い光沢を放つ小さな円盤が顔を出した。ところどころ淵が傷ついたり欠けたりしていて、錆つく箇所も見受けられる。表面には横を向いた人間の絵が模られていた。どこかの有名な人物だろうか。よく目を凝らすとその正体が分かった。生やしたひげともじゃもじゃの髪の間に穏やかな表情を見せ、遠くを見つめているようなこの顔はかの有名な航海家レイツォリットのものだ。レイツォリットといえばガレット金貨を世に広めた存在として貿易関連の事業に貢献した人物として知られている。何年か前に歴史の授業で習ったことがある。とすれば、このコインの実態とはまさにガレット金貨ではないか。今のガレット金貨は新しく鋳造されたのでこのタイプはもう流通してはいないが、一昔前まではこの金貨が手元に流れてくることは当時の人々にとってちょっとした名誉だった。それほど価値があるものになぜそんな噂が結びついたのだろう?
不思議に思いながら金貨を眺めるうちに次第に手に取りたい衝動に駆られるのを抑えるのが難しくなってきた。本当に声が聞こえるのだろうか。一見さして変わりのないごく普通に使用されていた金貨に?確かめたくなって、ティムは広げた紙からそっと金貨を手に取ってみた。冷たくてひんやりした表面からほんの少し冷気が感じられたような気がした。昔の代物ということもあって、かび臭い匂いもわずかにたちこめている。そのままの状態で数秒間が過ぎた。頭の中に声らしきものは何も聞こえてこない。さっきは単なる好奇心で飛びついたが、触れると声が聞こえるというのは、一体どういう仕組みなのだろう?仕組みさえ解明できれば声の正体も察しがつくかもしれない。だがそんなことを確かめる術などあるのだろうか?ティムは金貨を手にしたまま振ってみたり、表面をこんこん叩いたりしてみたが、何も反応はない。どうやらバートンは冗談のつもりで渡したようだった。僕が面白がると思ってちょっとした逸話を思いついたのだろう。
「なんだ、つまらないな」
知らないうちに期待していたのか、ティムの中で失望に似た気持ちが広がった。どちらせよ、真偽を確かめたのだ。
金貨に不思議な力が備わっていなかったとしても、金貨そのものに価値がないわけじゃない。今まで興味はなかったが、ちょっとしたコレクションになりそうだ。
そこまで考えると、再び紙に包んで袋の中にしまって、ベンチを後にした。
風読みのクォイス・テーラーの顔を潮風が優しく撫でた。今こうして宿のベランダから見渡せる景観は商業都市連合の中でもとりわけ美しいと言われる都市国家サンパルシークとは似ても似つかないほどの大田舎だが、それでもそよぐ風にひしめくヤシの木やソテツなどの植物が鬱蒼と茂る大自然を眺望できて、実に心地よかった。クォイスには自身の体と空気が常に一体化したかのように感じられるひとときがある。今この瞬間がまさにそれだ。人間にとって自然に回帰するということは、それだけで本来の生き方に目覚め、またその新鮮さに邂逅できることでもある。現在のせかせかした世間の風潮から最も有効に脱皮できる唯一の方法だった。
「いつまでそうしてるんだ」
後ろから強そうな声音がした。威嚇しているわけではないものの、どうしても厳然たる雰囲気を伴ってしまう。しかし、当の本人バンバーデュにはそんな細かいことは気にも留めていないし、クォイスや他の仲間たちもまるで咎めていなかった。
「いやあ、心地いいんだって。バンも来て見なよ。汗ばんだ巨体も少しは涼めるよ」
冗談めいたクォイスの言葉に答える代わりにバンバーデュは低く唸った。それが今いる場所から動きたくないというサインであることは、これまでの関わりの中ですでに学んでいる。
どうしているのかは検討がつく。念のため振り返って確認してみると、大きい図体の彼は部屋の中央にある肘掛け椅子の背の部分を倒して目を瞑っていた。まあ、いつもこんな感じだ。今さっきクォイスにかけた言葉に特に意味はないことも周知している。要するに彼は気分屋なのだ。
端っこに位置する小さめのベッドに仰向けに横たわって足を組みながら分厚い本を読んでいるトレスハントが目を上げて言った。
「いや涼めるだけじゃこの巨体には意味ないだろう。だって、寝ていようが動いていようがそこにいるだけで放熱する熱血漢の内側には、いつだって超高熱のマグマがうごめいているんだから。今更冷やそうなんてったって、熱し過ぎた鉄に小水をひっかけるのと同じだって。ちなみに小水ってのは、小便の方じゃないぞ?あくまで真水のことだ。まあ真水じゃなくてもいいけどな。どっちにしろ小便であろうと真水であろうと冷やせる範疇を超えてるものに涼みは無意味さ」
行き過ぎた冗談にもバンバーデュはしらばくれている。というよりおそらく、浅い仮眠状態に戻ったのだろう。仲間内のバンいじりならば、たとえブラックジョークであっても決して憤慨することのないこの大男は、一見すると相手の言葉の内容が理解できないように振る舞っているが、それは彼がそうすると決めた態度であって、からかわれていることに喜びを見出す被虐趣味者ではない。そして仲間たちもまた、本心でからかっているわけではなく、クルーとしての信頼感を増すためにあえてそうしているのだ。
「それにしても船長、遅くないか?」
トレスハントがクォイスに何気なく問いかけた。そう言われてみれば、とクォイスは思った。昼頃に帰ると約束してから実に二時間半が経過している。どこかの酒場で昼間から飲みに明け暮れているのだろうか。いや、船長は確かにのんべえだが、日中から飲んだくれになるような人ではない。とすると、若い女性でも引っ掛けている?いや、ハンサムなのはわかるしよく女の子に平気で声をかけるタチだが、今日の彼の表情から洞察するといつもの日常的な嗜好をしている暇はないとでもいうような、そんな感じだった。それにクルーである自分たちと船長は揃って食事を取るのが基本なので、船長がいないことには食事も始まらないのだった。ちなみにここの宿は三食すべて自前だった。
「もう昼の時間はとっくに過ぎてるし、ちょっと食材の買い出しがてらに船長を探してみるか」
そう言うとクォイスはベランダから部屋に戻ってバンバーデュの横を通り、ドアノブに手をかけた。
「船長が来るまで待っていた方がいいんじゃねえか?俺たちの方からわざわざ動くこともないだろう」
トレスハントが止めたが、クォイスは腹に手を当てて言った。
「いや、そこまで不安じゃないさ。単に飯を食うついでに船長を探すだけのつもりさ」
「当てはあるのか?」
「この俺を誰だと思ってる。”風読み”の異名のついたクォイス・テーラー様だぞ」
自信満々に胸を張るクォイス。
「そこまで行きたきゃ、行ってらっしゃいまし。ついでにこの島の名物フィク鳥のから揚げ棒を買ってきてくれると助かる。金は後で払う。東通りのドラ屋台の系列にある。前から三番目だ。金利はあってもいいぞ」
「じゃあ料金の四割」
「高えよ」
「お使いさせといて『高い』はないだろう。しょうがないな。じゃあ一割」
「承諾した」
指を鳴らしたトレスハントを尻目にクォイスは部屋のドアを後ろ手で閉めた。
数分後、宿を抜け出した彼はまず目的の船長を探すことにした。普通の人間には何の情報もなしに見つけ出すことなど到底無理だが、クォイスにはわずかな空気の動きと船長の匂いを頼りにその位置を知ることができる珍しい能力を持っていた。「お前は、犬か!」と仲間たちからからかわれることはあっても、その正確さは尋常ではなかった。たとえ十キロ以上離れた島の反対側にいる人間も、その匂いさえ覚えてしまえばわずか数分の後にたちどころに居場所を特定できる。その桁外れに強い超感覚は犬をも凌駕するほどだった。
「さあてどこにいるかなあ、キャプテンバーティは」
愛称で船長の名前を呟きながら、クォイスはぶらりと歩き出した。
ヤシが点在する小道を三、四分も歩くと大通りに出た。この島は今は世界の中心地と称されるトランズメリアと呼ぶ商業都市連合地帯から帆船で出航して五日ほどで到着できる、ヴィンモーフェナス海域に位置する諸島の一つで、謎の多いトレクトファンズ海域に向かう多くの船乗りたちが経由する中継地でもある。そのため、大自然に囲まれた田舎であっても港町に行けば多くの商人や船員で溢れかえっている。今日も大通りは水兵服に身を包んだ人で賑やかだった。通りを挟んだ両脇には雑貨や食事処、鍛冶屋に靴屋、航海用具を揃えた専門店まで多様な店舗が所狭しと隣接している。目の保養にはもってこいだ。
「船長捜索の前に少しだけ寄っていくかな。腹も減っていることだし」
一人呟いて、手前にある古風の建物へ歩を向けた。
日よけの屋根から垂れ下がっているのれんをかきあげて中を覗いてみた。最初に目に入ったのは壁に張り出された大小様々なサイズの地図だった。店頭に並ぶ棚には丸められた地図がぎっしり詰まったかごが段差ごとに置いてある。
どうやら地図の専門店らしい。
「いらっしゃい」
奥から店主が出迎えてくれた。丸坊主の頭と眼鏡をかけた風貌が印象的だった。中から覗く緑の瞳は中年ほどの年齢層を伺わせ、口元から柔和な表情がこぼれているのが見てとれる。
「航海士さんかね?これから向かう目的地がおありなら、必要な海図を見つけて差し上げるで」
人懐こそうな接待に好感を持ったクォイスは、「いや、お店巡りがてらに立ち寄っただけなんですよ」と正直に答えた。それからふと思いついて「船長が行くと決めた場所の地図を持っていなければ、是非探してもらいたいですけれどもねえ」と付け加えた。
「そうなんですな」店主は言った。「船長はどちらに?なんなら今見つけて引っ張ってきてもらった方が手っ取り早いですぜ」と促した。
「いやあ、店に入る前に先に探そうとしたんですけどねえ。あんまり面白そうな店舗が立ち並ぶもんで、後回しにしちゃいました」
思わず苦笑いしたクォイス。
「そうなんか。てことは、うちは探索の一番乗りってわけですな。ありがたいことだわす。そしたら、船長が無事見つかった折にはどんな地図でも負けてあげますぜ!」
「それは朗報だ!」クォイスは嬉しそうに眉を上げた。「そいつぁ、キャプテンも喜ぶってもんですよ」
「それはよかった」店主の顔に笑顔が広がる。「ところで、島は広いですぜ。一体全体どうやって探すおつもりで?」
うわ………きた。鼻で探すなんて口が裂けても言えないしなあ。いつも仲間たちに冗談で「お前は、犬か!」と軽く笑い飛ばしているネタが本当の意味で突っ込まれそうだ。
返答に困っていると、一人の男がのれんをかきわけて入ってきた。店主が顔を向けて「いらっしゃい」と声をかけた。
男はあたりを見回しながら二人のところへやって来ると、「ここは地図屋さんですか?」と話しかけてきた。
ありがたい。「鼻がきくならいっそのこと本物の犬の糞でも嗅いでみるか?」なんて言われたりしなくてよかったぜ。
少しばかり感謝の念が湧いてきてその男を見た。一見すると背が高く大人びた雰囲気を醸し出していたので三十代くらいかと思ったがよく見ると顔立ちは二十代ほど、せいぜい見積もっても二十五歳くらいだ。きりっとした目の形とそこから覗くスカイブルーの瞳は何があっても揺らがなそうな強い意志が感じ取れる。薄手のシャツから盛り上がる胸筋や肩はまるで悪者を締め上げてとっちめるのに役立ちそうだ。女の子なら間違いなく夢中になるに違いない。細身のクォイスとはまるで対象的だ。
ちらちら見やるクォイスの視線に気づいたのか、一瞬だけちらりと見やったが「そうです、そうです。うちがこの島で唯一地図を扱う専門店ですよお」と返答した店主に目を戻した。
「ここで、ポートガルディ島が載っている地図ってありますか?」
少し真面目な表情になって質問を繰り返すと、店主は「うーん」と唸った。
「ポートガルディ島と言えば、確か白石海の西側にあった小さな島だったかなあ。多くの船乗りはあまり来訪しない土地だねえ。メルトレール学院っていう島の中では著名な学校があるけれども。ちょっと待って下さいねえ。今探すんで」
そう言って店の奥に姿を消した。店主が去ると、男は腕を組んで壁に張られた地図を眺めながらゆっくりと店内を回り出した。彼を目で追うクォイスの中で、なんとなくではあるものの男に親近感が増したような気がした。特に話したわけではないのに縁というか、目に見えない繋がりを感じる。ような気がする。
数十秒が経ち、店主が一本の巻紙を手にして戻ってきた。
「ありましたよ~。白石海周辺域の地図。作成されてから何年か経過してるんで、十二ガレットのところを八ガレットにお値引き致しますぜ」
「ありがとうございます」
丁寧な口調で軽く頭を下げるとポケットから金貨をまとめて取り出し、それを手の中で数えると、八枚分のガレット金貨を「お願いします」と店主に渡した。
「はあい、まいど~」
片手で受け取るともう片方の手にあった地図を差し出した。男はそれをこれまた丁寧にもらうと、「どうもです」と軽く頭を下げた。それを店主も好印象と見たのか、島への行き方を説明し始めた。
「ここから行くには、レイツォン航路に沿ってトレクトファンズ海域の一歩手前の島オードレット島が見えた頃に北北東の方角に舵を切ってから白石海に入って半日ほど経てば、着きますぜ。大体二日、三日はかかるかもしれんけどもそこまで遠くはないはず。しかし、あそこは先ほど話した学院と文明遺産以外には何もないですぜ。おそらく観光ではないとお見受けするが、友人か知人でもお探しかね?」
聞かれた男は迷うことなく事情を切り出した。
「実は、ある人物を探しているんです。ティム・セイバージャストという名前の人です。年齢は自分と同じ二十代くらいで、学院に通っていると思われます。多分ご存じないですよね?」
だめ元で聞いてみたが、店主は「うーん………ティム・セイバージャスト。聞かない名ですなあ。セイバージャストという苗字も珍しい」と首を傾げた。
「そうですよね」男は笑った。その表情も爽やかで見る者に元気を与えるようなそんな印象だった。
「ポートガルディ島はあまり有名ではないですもんね。けれどもこれからの時代にとって彼は大事なキーパーソンになるかもしれないので、ご留意されておくといいかもしれないですね。まあ彼が有名になるというわけではないんですけれども」
何かを知っているような言い方だったが店主は「はあ………これからの時代のキーパーソンですか」とぼやいてあまり追及しようとは思わないようだった。
「これから時代は大きく変わっていくんでね。あ、あとそのティム君を見かけたら彼に『シーバースという人がホエールテイル島に来るように呼んでいた』とお伝えしてもらってもいいですか?シーバースは僕の名前です。シーバース・ボロンズクェイルと呼びます。まあ、仮にお会いしたらの話になりますが」
クォイスには分からなかったが、ホエールテイル島と聞いて、店主は「ふげえ!」と仰天した。
「あなた、あのホエールテイル島から来たんかい?パーム・ダイヤモンド海域の中心に位置する幻の島?あんた、そこの出身なんかい?」
身の上を話す必要に迫られて気まずくなったのか、シーバースと名乗った男は片手を頭に持ってきてくしゃっと掻いた。
「そうです、そうなりますね。あまり世間には受け入れられない名前の島なんで、自己紹介する時にはいつも冷や汗かくんですよね」と言ってまた笑った。
「それじゃあバルキウス金貨の伝説は本当なんかい?島が存在するなら金貨も存在するはずでしょう?」
店主の二つ目の質問でクォイスにも合点がいった。思い出した。バルキウス金貨と言えば伝説の海賊ゼルディアード・ジャリスティスが残したと呼ばれる、魔力を持つ金貨のことではなかったか?しかし、それは世間にはあくまで伝説として認識されており、空想上のおとぎ話に尾ひれのついた眉唾ものとして扱われていた。実証しようのない逸話は価値のないものと同義である。この伝説は今までそうして人々の間で長きにわたってあしらわれてきたのだ。
シーバースはさらに気まずそうにし、いかにも恐縮といった面持ちで一語一語しどろもどろに言った。
「まあ、あまり多くは語れませんけれども、そうですね、実在の可能性はあったんじゃないでしょうか」
「いや、本当にその島から来たっていうんなら、あなたは生きた証人じゃない!」
「あはは、そうか、そうなるんですね。確かにそうかもしれない」
控えめに反応しつつそわそわしているシーバースをクォイスは眺めた。へええ、あの伝説にまつわる島の出身者なのか~。ふうん。
シーバースはそろそろしびれを切らしたのか、「じゃあ、これで失礼しますね」と言ってそそくさと出口まで大きく歩み寄っていった。
「出航には気を付けてくれな!貴重な情報をありがとさん!また来てくんなすってなあ」
「はい!」短く答えるとのれんをかき分けて、颯爽と姿を消した。
「いやあ、世の中には珍しいお客もいるもんだねえ」
店主が脱力したように呟いたが、クォイスの耳には届かず一人で感心していた。ホエールテイル島か。伝説がいまだに健在している場所に住む人もいるんだなあ。
しんみり考えるクォイスに店主は「あんたはどこの出身ですかい?」と聞いてきた。
「俺ですか?」さも大したことのなさそうに肩をすくめて「俺はトランズメリアのアッダーシェ地方から来た者ですよ。殺風景で何の変哲もない、ごく普通の島ですね」
「そうなんかあ」店主はクォイスの顔を見て言った。「まあ、どこの出身かということは今の時代人間を見るための一つの基準になってやすが、一番大事なのはお人柄っすねえ」
「かもしれないですね」クォイスは適当に相槌を打った。そろそろお暇しようと考えていたところだった。
「そいじゃあ、俺もこの辺で失礼しますかねえ。また彼が来たら俺のことはよろしく言っといて下さいよ」
「了解しやした」店主はにやついた。「ところで、あんた名前は何だい?」
「クォイス・テーラーです」聞かれて自己紹介をした。「ちょっとした有名な船乗りのクルーでもあるんですよ」
「へえ、どんな船乗りだい?」なおも質問を繰り返す店主に、クォイスは右腕のシャツを捲し上げ、二の腕に彫られた入れ墨を見せた。太陽を背に一匹の鷹が翼を広げて、嘴にロープをくわえている。そのロープは下に向かって円状になり、その環の中に「B」と大文字で刻み込まれている。
店主には見たことがないのか、首を傾げた。
「これは、船長か何かのシンボルで?」眼鏡を押し上げて聞く。
「特別に教えてあげますよ。この鷹は船長のミドルネームの「ホーク」、そのまんまです。で、下の「B」は船長の名前ですね。彼の異名は”高跳びのホーク”。世界中の海を股にかけるトレジャーハンターです」
店主はびっくりして目を上げた。
「あんた、まさか………トレジャーハンターって………。今は確かこっち側の海で名を轟かせてるあの………」
「それ以降は秘密でお願いしますよ」クォイスは指を唇に当てた。誰がいるわけでもないのにまるで自分が船長のクルーであることを秘密にしたいかのようだ。
「それじゃあ、俺もこれで失礼しますね!」
拳を作りガッツポーズを取ると、彼は驚いたままの店主を残して外に出た。
大通りはさっきとは打って変わり、たくさんの人でごった返している。
「さあて、ちょっとした収穫もできたことだし、そろそろ船長を探すかな」
一人呟くと人差し指を舐め、目の前にさらした。わずかな風の動きを読み取ろうとするかのように、ぐるぐる円を描いた。数秒の後にクォイスの中で大幅な察しがついた。
「こっちだな」
人ごみの中に入り込み、到達すべき場所を目指して黙々と歩き始める。
途中でスパイスの効いたスープのいい香りやエキゾチックな異国の服に付着した独特の匂いなどがごちゃ混ぜになって彼の鼻を刺激したが、それでも一つの指標を失うことはなく、ただひたすらに風の導く目的地へ向かっていった。
風が運ぶ匂いから推察すると、彼の居場所はどうやら港町の外れにある小さな小屋の中らしかった。
かつてこの町に来た記憶を辿れば、そこは占い師や呪術師が集まる場所だったような、そんな気がした。
島民ですら滅多に訪れないその場所に、一体どんな用事があるというのだろう。
彼を目指して歩いていると、その彼が動き出したような空気の変動を感じ取った。そして、ほんの数秒の後にその「位置」が上空に一気に上昇した。一見すると何が起こったのか理解に難しくなるような変化も、クォイスは十分承知していた。彼が”高跳び”と称されるそれも、今起こった空気の変化がまさにそれを証明していた。
その「位置」はまるで建物の上を飛び跳ねていくかのように、点々と移動し続けている。その動きがこちらに向かってどんどん近づいてくる気配を掴み、クォイスは事態を把握して近くの白く塗りつぶされた建物の壁に身を寄せた。
「位置」はそれを知ったのか自分のところへ接近してくるのが分かった。そして………。
後方でドスッと大きな音がしたかと思うと、「待たせたな」と声がした。
振り返ると薄手のジャケットを羽織った、長身の男が立っていた。上空を移動してきた割には大した息切れさえ見せていない。
船長はクォイスに歩み寄ると「さあ、飯でも食うか!」と肩を叩いてきた。
「用事は済んだんで?」
「ああ、済んだ。ちょっと芳しくない用事だったけどな」
芳しくない用事?一体何だろう?
クォイスが疑問に思うより先に「さあ、飯だ飯」と促し、二人で大通りに出て歩き始めた。
「俺はジャンバラヤが食いたいぜ。お前は何にしたい?」
食事の好みを聞かれてクォイスは「ラオソースの入った肉包みがいいっすね」と答えた。本当はどんな用事だったのか聞きたいが、船長はすぐにでも食事を取りたそうな表情をしている。
「そうだ。宿にいるみんなに今すぐチェックアウトするよう伝えてきてくれないか?話したいことがある」
「先の用事ですかい?」
「そうだ」横に並んだ船長は短く言った。「かなり大事な話だ」真剣な面持ちで付け加えた。
「そうなんすね。了解しやした!」
「頼んだぜ」にやりと笑う船長。しかし真剣な表情を崩さないその彫りの深い顔の裏にはわずかに何かを憂慮しているような表情が見てとれた。
「なるべく早く頼むぜ。いつ何時、いや、明日にでも世界に危機が訪れないとも限らんからな」
クォイスは耳を疑った。「世界に危機?」
「ああ」笑顔の裏に隠れていた表情が姿を現した。やはり何かを気にしているように見える。
「どうやら俺たちに重要な任務が生じたようだ。しかもその任務は世界の存続、またはその運命を左右するような危険なものになるかもしれん。それに、近いうち俺の名は俺の名でなくなるかもしれんな」
名声に汚名がつくということだろうか?一気に捲し立てる船長の横顔をクォイスはまじまじと見つめた。
「それは、一体どういうことで?」クォイスを始めとするクルーたちの船長に対する信頼は揺るないものだったが、いきなり虚を突かれて彼に少しばかり動揺が走った。
「いや、そのまんま、俺の名前が変わるという意味だ」クォイスの反応に気づいたのか安心させるように船長は言った。「それについてはまだまだ先の話になるな。今においては俺は、かの有名なトレジャーハンター、バートニック・ホーク・シュナイダーのままさ」
ほっとしたクォイスに安堵感が広がったものの、やはり気になる。名前が変わる?今までの本名は実は虚偽の名前で、本当の名前が別に存在するということか?ということは俺たちに嘘をついていたとでも?
それには答えずに、バートニックは続けた。
「まあ、世界の危機に関して言えば、俺たちはこの時点でかなり大きな重役を買ったってことだ。それを全うするためにはまず、ちょっとした海に向かう必要があるかもな。」
「どこの海で?」
「それはまだ分からない。それに関してはまだ一種の予感に過ぎないからな。あえて言うなら白石海あたりか。ポートガルディ島とかそこらへんだな。今の直感で言えば、ポートガルディ島には世界に分布する文明遺産の一つがあったと思ったが、それに何か異変が起こるかもな。ちなみに、あれはただの文明遺産なんかじゃない。遥か太古に栄えた、巨大な海洋王国の一部が切り取られた名残さ。まあ、今の時点じゃ分からないが、もしもの時に備えて今から動いておく必要がある」
話しているうちに動悸が激しくなったクォイスは具体的に何が起こるのか、聞いてみた。
「一体、これから何が起きようとしているんで?」
バートニックの真剣な面持ちの上に厳しい表情が走った。
「神なる種族の復活さ」