20.出会い(2)
すべての盗賊を倒し安全が確保されたのでウィルを呼ぶことにした。
「ピィー」
口笛でウィルを呼ぶ。
「バルト、何をしているんだ?」
マルスが聞いてくる。
「ウィルを呼んだんですよ。」
「ウィル?」
遠目からウィルが来ているのが見えた。
しかし、マルスはウィルの姿を見て、抜刀し構える。
ウィルを知らない者からすれば、ウィルはただの魔物。
警戒して当たり前だ。
「大丈夫ですよ。あれがウィルですから。」
「君は狼を使役しているのかい?」
「ええ、まあ。使役と言うよりは、友達みたいなものですけどね。」
「それは、凄いね。」
街まで1キロぐらいあるが、その帰り道マルスから何があったのか聞いた。
どうやら、隣の国からの帰り道、オーガの群れやグリフォンに襲われたらしい。
普通のパーティーなら全滅するような敵なのだが、何とか逃げ切ったようだ。
その時に、護衛のほとんどが殺られ、マルスも逃げるために全魔力を使いきったらしい。
そして満身創痍のところを盗賊に襲われ、ピンチに陥ったそうだ。
グリフォンか……絶対強いわ。
良く逃げ切れたもんだ。
これもマルスのおかげというものなのだろう。
話を聞き終えたところで街の前まで着いた。
俺の役目はこれで終わり。
ここでお別れだ。
「バルト様、本当にありがとうございました。3日後またお会いしましょう。」
エリナが馬車から降り、またお礼を言う。
「はい。また3日後に。」
マルスともう一人の護衛も軽く俺に会釈をし、エリナ達は街へと入っていった。
エリナ達と別れてから、俺はオーク討伐の報告をしにギルドに向かう。
「あ、バルト様お帰りなさい。どうでしたか?」
「なんとか大丈夫でした。」
剥ぎ取ったオークの耳を出す。
「3体も1人で倒したのですか……流石ですね!」
「ははは、オークの死体ってどうすればいいんですか?」
「魔法のバッグも販売してはいるんですが、少し高価なものなので購入するのは難しいかも知れないですね。それかギルドに報告すれば回収には行きますけど、肉はダメになっている可能性もありますね。」
魔法のバッグなんて便利なものが存在したのか。
それは是非とも欲しい!
「魔法のバッグはいくらするんですか?」
「1番容量が少ないので銀貨10枚ですね。」
高いな。
銀貨10枚あれば4~5ヶ月は生きられる。
今の懐事情では到底買えるものではなないな。
「そうですか……今日はもう遅いので回収は明日でいいです。」
「分かりました。それでは、こちら報酬の銅貨30枚になります。」
「ありがとうございます。それと聞きたいことがあるのですが、アルベルト家って知ってますか?」
「もちろん知ってますよ。貴族の中でもトップクラスの力を持っていますし、その力は政治にも影響を及ぼすほどです。この街に住んでいる人で知らない人はいない貴族の内の1人ですね。それがどうかしたのですか?」
エリナはそんなに凄い貴族だったのか。
凄い人を助けたもんだ。
これは、お礼に少し期待できるかもな。
「いえ、ただその名前を聞いたので気になっただけです。」
「そうでしたか。あ、明日私休みなので、都合が良ければ魔法を教えましょうか?」
「ほんとですか!?よろしくお願いします。」
「それでは明日の朝、憩いの場まで迎えに行きますね。」
「あれ、俺宿屋の名前教えましたっけ?」
「あ……言いましたよ!忘れちゃったんですか。」
何か少し慌ててたけど気のせいかな。
「そうでしたっけ。まあいいや、では明日よろしくお願いします。」
エルミアさんと明日の約束をしてギルドから出た。
宿屋への帰り道、ウィルのご飯用に市場でオークの干し肉を買っておく。
200gで銅貨1枚だった。
オーク肉は一般的に使われている肉って言っていただけに、確かに安かった。
宿屋に帰ると昨日同様ご飯を頂いた。
銅貨2枚でこの美味しさは嬉しい。
元気が出る美味しさだ。
食べ終えると部屋に戻り、ウィルにさっき買っておいたオーク肉を食べさせた。
そしてベッドに寝転がると、自然と今日出会ったエリナのことを思い出していた。
(エリナ可愛かったな……)
エリナは貴族だ。
ど田舎生まれのバルトが知り合うはずもない相手である。
そんな相手と何の巡り合わせなのか、今日盗賊に襲われているところを助け出会ったのだ。
何とか仲良くなりたいと思うけど、多分このままでは無理だろう。
3日後にお礼をするために家に招待されてはいるが、それ以降は会うことも無くなるのではないだろうか。
だったら、どうすれば……そうか、そうすればイケるか……うん、何とかなるかもしれない。