10 目標には、今だ届かず
陣地防衛に成功したグレン等は、前線より少し下がった東部の中規模都市、コールウェルまで後退した。
“やっぱりこんな所にはいねえか・・・”
第二中隊隊舎にて、グレンは報告書の残りを作成しながら、一人物思いにふけていた。
“もう10年か・・・あれから”
10年前、この戦争の開戦の場に居合わせた彼の、深いトラウマを
“あの時、あの先遣部隊が千人隊だったって事までは調べが付いている・・・
帝国軍の皇國東部方面侵攻部隊の先遣隊・・・何故かまるで行方が掴めない・・・”
グレンが従軍を決意したあの“旗”の事を
“どこをどう調べても調べても、あの“鴉旗”を部隊旗にした連中が見当たらねえ・・・
開戦の火蓋を任せられるような部隊ならば、帝国側としても相当自信を持った精鋭集団の
はずだ・・・”
自らの手を、血に染めることになった切っ掛けを
“今、どこで何をしてやがるんだお前らは?・・・あの日、一体どんな気持ちで・・・”
この思考は10年間ずっと付きまとっている物だった。
“・・・まぁ考えたって分かりゃしねえか。下行こ、下”
一人で考え続けていても、何かが変わるわけではない。
悲観的な考えが、浮かんでは消えていくだけだ。
グレンは一端思考を切り替えることにした。