第37話:剣術
「とりあえず向かうか」
俺は庭に向かって行った。庭に向かう時にわずかながら足腰が鍛えられている気がする。‥‥‥流石に気のせいか。
「おっ、来たな」
「おはようございます」
まだまだ苦手意識があるけど一応、挨拶はする。
「今日はこの木剣を持ってもらう」
そう言って渡されたのは前に見た木剣よりも薄い色の剣だった。
俺はその木剣を両手で持ってみた。
「軽い‥‥‥」
驚くほどに軽い。俺でも振り回せそうなほどに‥‥‥振り回せはしないか。でもそう思ってしまうほどに前に見た木剣より軽い。
「これは前に持たせた木剣よりも軽い木材が使われた剣だ。早速持って素振りをしようーーと言いてぇが先ずは準備運動をしないとな」
「先ずは『屈伸』。膝を曲げてしゃがんで少ししてから膝を伸ばして立ち上がる。これを繰り返す。あ、膝ってのはここな」
そう言ってバークスは膝を指差した。膝の位置くらい知っているが‥‥‥5歳児には正しい説明だから聞いておこう。
「よーし、それじゃあやるぞ。俺が1、2、3、4って言うからお前が5、6、7、8って言え」
「1、2、3、4」
あぁ‥‥‥久しぶりだな、屈伸をするのも‥‥‥体は違うけど。それと意外と足に負担が来る。頭が重いからか?まあ、どっちでもいいか。
おっと次は俺の番か。声を出さないとな。
「5、6、7、8」
あーなんか、体が伸びてるなー。
「2、2、3、4」
「5、6、7、8」
「次は『伸脚』。片足を曲げて片足を横に伸ばす。ただこれだけだ。これもさっきのようにするぞ」
これも知っているけど‥‥‥やるか。
「1ーー」
ちょっと痛い。片足を思いっきり伸ばしているから痛くなるのも当然か。でも足が伸びている感はあるな。
「2ーー」
反対も同じように痛い。でも不快な痛みではないな。
「次はしゃがんで同じのをするぞ」
「ーー」
今度はより長く足が伸ばせている。それに伴って足の痛みが増した。ちょっとキツイ‥‥‥。
「2ーー」
反対の方はちょっと楽だな。それでもキツイのには変わりないけど。
「次は今やったやつと逆のやつをするぞ。先ず、片足を前に出して曲げる。後はもう片方が曲がらないようにしたらいい」
まんまアキレス腱じゃねーか!!アキレス腱って言わないのかよ‥‥‥と思ったが、異世界に前世のギリシア神話があるわけないか。
「1ーー」
あーもうなにかを考えるのすら面倒になってきたな。この準備運動なんて前世で何十回もやったからマンネリ気味だ。適当にやってさっさと終わらせよう。
「最後は『腕回し』だ。腕を大きく前に回した後、後ろにも大きく回せ」
「1ーー」
やっと最後か。俺は腕を回しながらそんなことを思った。
「準備運動も終わったから剣について教えていくぞ。先ずは剣の持ち方だ。剣は両手でこうやって握る。右手の上部、親指と人差し指の間がカクッと曲がるようにな。ただし、力を入れて握ったらダメだ。ずっと握っていると疲れるからな。やってみろ」
そう言ってからバークスは俺に木剣を渡した。俺はさっき見たものを思い出しながら木剣を握る。
えーと‥‥‥両手で握ってでも、力を入れない‥‥‥ちょっと難しいな。
「別に力を入れてもいいがギュッとキツく握るんじゃなくてフワッと軽く握れよ」
フワッと軽く‥‥‥フワッと軽く‥‥‥これでいいかな?
「これでいいですか?」
「ちょっとダメだな。親指と人差し指の間が曲がってない。こうやるんだ」
V字になるように曲げるのか‥‥‥できた!
「これでいいですか?」
「それでいいぞ。次はーー
『キーン、カンカーン』
あ、12
ーーっと、鳴ってしまったな。続きは明日にやるか。んじゃあなー」
「ありがとうございました!さようなら」
俺は礼を言った。心ではどう思っていようが外には出さない。
ーー毎度のことながらいいところで時間がくるよな~。俺はそう思いながら家の方面に向けて駆け出した。
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日常回はどうしてもマンネリ気味に…主人公に血反吐を吐きながら身体中からいろんなものを垂れ流す奇妙な病にでもかかってもらうか…。え、主人公の人間としての尊厳?そんなものは…ネタの前には些細なことです。
剣の持ち方については『剣道』を参考にしています(作者が経験者なので…雑魚かったですが)。『西洋剣』についてはネットで調べてもあまり良い例がなかったです。今の時代に『西洋剣』について知ろうとしたらマニアくらいしかわからないかもしれないです(個人の感想)。ですので『西洋剣』について詳しい方がいましたら教えてください。他力本願ですみませんがこの部分についてはギブアップしていますのでどうかよろしくお願いします。
m(_ _)m
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