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「ユーリさん、これくらいあればいいでしょうか？」
ブライス君がカウンターの上に並べられたハズレMPポーションを指さして尋ねてきた。
唐揚げなら揚げ物なので、油の量はある程度必要。
並べられた瓶の数は２０本ほど。……うん、まぁ足りるかな。
「大丈夫です。あ、お金」
今日はローファスさんのブラックカードを持っていない。
でも、まだ買い物した残りがあったかな？
とポケットを探ろうと思っていたら、ブライス君が紫色のカードを出して支払いを済ませていた。
「今のは？」
「僕のカードですよ。冒険者になって、えと、不本意ながらB級になったので紫色のカードが持てるようになりました」
とブライス君が自嘲気味の笑みを見せると、カーツ君がこぶしを握り締めて主張する。
「なんで不本意なんだ？B級なんてすごいじゃないか！さすがブライス兄ちゃんだよ！」
そうだね。すごいよね。
「僕としては、まだいろいろと勉強不足な点が多いので、その、実際にダンジョンに潜った経験とか足りませんし……。いきなり上級ダンジョンに単独で潜れと言われても右往左往するだけですから、もう少しゆっくりと上がっていきたかったんですよね」
あ！
「分かるよ！それは分かる！ステータスオープン。レベル開示」
と、ステータスを表示して見せる。
「うわー、すごいのよ！ユーリお姉ちゃんレベルが５になってるの！この間まで１だったのに！」
キリカちゃんがほめてくれるけれど、苦笑してブライス君を見る。
「なんの実力も伴っていないのに、運よくモンスターを倒しちゃったから、レベルだけが上がっていくの。ちょっと怖い」
きっとブライス君も同じような気持ちなんだよね？
レベルが５になったのは、たぶんドラゴンタートの卵をたくさん壊したからだと思うんだけど。私、泡だて鬼を投げただけなんだよね。
戦ったとか倒したとかそんな実感ゼロ。
すべて武器のおかげ。あ、武器と、命中率がアップのオリーブオイルのおかげ。
「ユーリさん……。これから、実力が伴うようにお互いに頑張りましょう」
「そうだね。うん。ブライス君は実力は伴っているんだから、経験が伴うように、だね。私は実力も経験も知識も……いろいろ頑張るね」
「お、俺も！俺ももっともっと頑張る！」
「キリカも頑張るのよ！」
ふふ。
「じゃぁ、まずみんなで、お腹いっぱい食べて力をつけようね！」
気持ちがはやり、速足で屋敷に戻る。
「キリカちゃん！キリカちゃんのおかげ！」
ハズレ増血草の白い部分をガッとつかんで割って匂いを嗅ぐ。
「これ、このくっさい匂い！間違いない！」
あら？臭い麦、臭いハズレMPポーションに続いて、今度もまた臭い……自分で言っちゃったよ。臭いって。
でも、本当にこれは臭いのです。臭いけど、臭いけど……。
「臭い？うわ、本当だ。臭い」
カーツ君が匂いを嗅いで顔をしかめた。
「これだけ匂いが強ければ、増血草とハズレ増血草を間違えることはなさそうですね。はやり実物で確認すると分かりやすい」
とブライス君が小さく頷いた。
「あれ？ハズレのやつでもユーリお姉ちゃんならお料理に使えるかと思ってもらったけれど、これは本当にハズレだったの？キリカ、捨ててくるよ」
いやいやいや！
「ま、まって、まってキリカちゃんっ！ダメ、やめて、捨てないで！他のみんなが臭くて食べられないって言っても、私は食べる！食べたい！食べさせて！ニンニク美味しいのよぉぉぉぉっ！」
そう、ニンニク！
ノビルは野蒜、ニンニクは大蒜、蒜と呼ばれる仲間。ノビルが増血草で、ハズレ増血草がニンニク……。
私にとっては、ニンニクこそが大当たり！嬉しい！
では。ユーリ先生の唐揚げ教室でーす。ぱちぱちぱち。
と、心の中でテンション高めに調理開始。
ポーション……生姜風味の強いジンジャーエールと、ハズレ増血草……ニンニク。
炭酸でお肉が柔らかくなるおまけつき。
あ、ダメ。やっぱり醤油と料理酒も使いたい。
「カーツ君、タートのいたダンジョンで収穫したハズレポーションが使いたいんだけど……」
「分かった。持ってくる」
「キリカちゃん、片栗粉……はないから、小麦粉をもらってきてくれる？」
「うん、キリカ小麦粉もらってくるのよ」
「僕は何をすれば？」
「ブライス君はお皿とか箸じゃなくて、えーっと、フォークとか」
ああ、部屋でこっそり料理のつもりが、あちこちにいろいろもらいに行ったらばれちゃうよね。
まぁ、大丈夫……かな？もともといろいろチョコレートのお菓子とか作ってたし。何か食べるものをまた作るんだなぁくらいに思われるだけかな？
と、思っていた私が悪かった。
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ちくしょーっ！
チョコレートが食べたいじゃないかぁぁぁ！
誰のせいだ！
誰が悪い、ノォォォォ
(´・ω・`)って思ったのよ。
