228 ハズレとか
「でも、ハズレMPポーションも必要だろ?雑貨屋で買うより冒険者ギルドで買ったほうが安いんじゃないのか?」
カーツ君の言葉にブライス君が頷いた。
「そうですね。ギルドが冒険者から買い取ったものを雑貨屋などに卸していますから。雑貨屋で買うと少し高くなりますね。冒険者であれば、直接ギルドから買ったほうが安いですよ」
「じゃぁ、決まりなのよ!お肉屋さんと冒険者ギルドに行って、唐揚げ食べるのよ!」
というわけで、今度こそ、街で買い物……って、ゆっくり見て回るほど体力的にも時間的にも余裕はなかった。うん。
みんな、お腹がぎゅーぎゅーなってます。
というわけで、肉屋でそれっぽい肉を購入。
他の店は見ないでさっさと冒険者ギルドへ移動。
「あそこが買い取りカウンターで、ダンジョンで得たドロップ品を買い取ってもらう場所です。その隣が販売カウンターですね」
と、ブライス君の案内でギルド内の左側に足を進める。
「すいません、ハズレMPポーションが欲しいのですが」
ブライス君が冒険者のカードを見せてカウンターのお姉さんに声をかける。
ん?そういえば、ハズレMPポーションやハズレポーションって、タートの出るダンジョンで収穫してリリアンヌ様の馬車にのせて持って帰ってきたんだっけ?買う必要なかった?でも、どこに置いてあるんだろう?どこにあるか尋ねたら「何に使うの?」って聞かれるかな……。料理にとは言えないもんね。
「はい。今でしたら、臭いハズレMPポーションと臭くないものがあります。値段はそれぞれ……」
ブライス君の問いに、お姉さんがカウンターの上に瓶を並べて答える。
臭いって、ごま油のことだよね。もうっ!米を臭い麦って言ったり、ごま油を臭い油って言ったり、失礼よ!
でも、そのおかげで日本じゃサラダ油より高級なごま油が安く買えるのはありがたいけどね。
隣の買い取りカウンターに、男の子がやってきた。
「薬草を買い取ってほしいです」
12歳くらいの男の子だ。
手にはニラみたいな薬草を束にして持ってきている。
そういえば、ローファスさんが毒消し草とか持ってたよね。ダンジョンのドロップ品だって言ってたけど。この男の子もダンジョンで薬草を手に入れたの?
「はい。増血草かな。見せてみて」
少年がカウンターの上に薬草の束を置くと、お姉さんが薬草をふた山に分けた。
「はい、これは増血草ですね。全部で14本。こちらは残念だけどハズレ増血草ね」
ハズレという単語にぴくっと反応してしまう。
「あー残念。今日はいっぱい取れたと思ったんだけど、半分以上ハズレだったか……」
少年が少し肩を落としながら、コインを受け取って出ていった。
「ハズレ増血草どうするの?」
キリカちゃんがカウンターのお姉さんに話しかけている。
くすっ。キリカちゃんもハズレって言葉が気になったのね。
「処分するのよ」
「だったら、キリカに頂戴なのよ!」
キリカちゃんの言葉に、お姉さんが困った顔を見せた。
「あの、私たち冒険者見習いで……」
とりあえずカードを出して見せる。
「薬草のことを知りたくて、えっと、間違えないように覚えたいなぁと……。お金がかかるのであれば、えっとお支払いいたしますから」
と説明すると、お姉さんは納得したように頷いた。
「あら、そうだったの。勉強熱心ね。じゃぁ、特別に当たりの増血草もつけてあげるわ。実物を見たほうが覚えやすいでしょう?」
「え?いいのか?」
カーツ君が声を上げる。
「といっても、ほら、肝心の根の部分がつぶれて使い物にならないものだけど……。増血草は、この根の部分が効果があるの。だから葉っぱだけ持ってきてもダメなのよ?かといって根だけを持ってきても、この葉っぱの部分もないと見分けるのが困難だし、早く傷んでしまうから……こうして持ってくるようにね?」
と、親切にいろいろ教えてくれた。
ん?ドロップ品じゃないのかな?普通に生えてる?どっちなんだろう?
「ありがとうございます!」
「ありがとうなの!」
お礼を言ってハズレ増血草と、当たり増血草を受け取る。
「え?」
増血草を持って目が丸くなる。
……これ、一度だけ見たことがあるけれど……。
ノビル?
根の球根みたいに膨らんだところが食用だ。葉っぱのニラみたいなところを食べるわけじゃない。
珍しかったから調べたことがある。とても鉄分が豊富だって。……鉄分……増血……うん。なるほど……。
って、ノビルの仲間と言えば……。
ハズレって、もしかして……!
ハズレ毒消し草の、根というか球根というか膨らんだ白い部分を見る。
うっわぁーこれ、これから、これっ!
やばい。思わず顔がにやける。
匂い嗅いですぐに確かめたいけど、けど、とりあえずギルドの中ではダメだよね。怪しい人になっちゃうもん。
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きたー!
あたらしいハズレ!
今度はハズレ増血草だぞぉぉぉーい!
あ、もうバレバレ?ノビル知ってりゃ答えは簡単。