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230 二度揚げ

 小麦粉もらいに行ったキリカちゃんの後ろには料理長が。
 お皿をもらいにいったブライス君の後ろにはロッテンマインさんが。
 ハズレポーションを取りに行ったカーツ君の後ろにはセバスティンが。
 いやいやいや!なんでついて来たんでしょう!
 見なかったことにして、ドア閉めていいですか?
「あ、あの、勉強会をするんです。ハズレポーションと当たりポーションの見分け方とか、えっと、ハズレ増血草と当たり増血草の見分け方とか……」
 へらへらと笑いながら、ポーションの瓶やら増血草やらを持ち上げて見せる。
「なんと!なんと勉強熱心な!」
 ばばぁーんとセバスティンさんが両手を広げた。
「元S級冒険者の私に、何かお手伝いできることがあれば、何なりとおっしゃってください!」
 カーツ君の目がきらりと光った。
「お、俺、剣の使い方とか教えてもらいたい」
「僕は、ダンジョンごとのモンスターの特性などの情報があれば知りたいです」
「あのね、キリカはね、ハズレ魔石が欲しいのよ」
 あわわわっ、キリカちゃんっ!
「大丈夫ですよ。ポーションの見分けよりも、魔石は簡単ですよ。キラキラしてるのが魔石。光ってないのはハズレ。魔石の種類が違っても、それは同じですよ」
 セバスティンがキリカちゃんの頭をなでなでする。
 ほっ。勉強の延長上だと思われた。
「では、カーツ君、明日の朝は早起きできますか?日が昇ったら毎朝私は訓練をしています。カーツ君もぜひ参加してください。剣をお教えしましょう。ブライス君にはその時にいろいろ教えて差し上げましょう」
 セバスティンいい人です。
 カーツ君とブライス君が嬉しそうにうなずく。
 でもって、ハズレポーションとか取りに行ったのは勉強会の話は信じてもらえたようで、3人とも帰っていきました。
 うん。そうだよね。普通、料理とか思わないよね。……よかった。肉が見つからなくて。
 さぁ。では続き続き。
 ポーションとハズレ増血草につけてある肉に、さらにハズレポーションの醤油と料理油を加えて肉になじませます。
 その間に、鍋にハズレMPポーション菜種油を投入。
 火の魔法石ぽいっと。
「170度に温め維持」
 そう。170度。今回は二度揚げします。せっかくなので、一番おいしい状態で食べたい。
 味をしみこませた肉に小麦粉まぶして油に投入。表面がきつね色になったら引き上げ、余熱で火を通す。
「出来上がりか?」
 カーツ君がわくわくした顔をしている。
「まだよ。その間に……」
 ニンニクの匂いが苦手な人ように、ニンニクなしバージョンも作る。
 揚げて引き上げ余熱で火を通す。
 一つを二つに切って、念のため中まで火が通ったか確認してから、二度揚げ開始。
「180度に温め維持」
 外はかりっとさせるためにね。
「ユーリお姉ちゃん失敗したの?なんで、もう一度入れてるの?」
「ふふふ、二度揚げって言うのよ。醤油などで味付けしてあげると焦げやすいから低めの温度で揚げて火を通してから、最後にからりとさせるためにもう一度高めの温度で短時間揚げるの」
 キリカちゃんが首を傾げる。
 うん、揚げ物とかまだなじんでないから分からないかな?もう少し大きくなったらまた教えてあげよう。
「クラーケンの時とかポテトの時はしてなかったよな。すげーな。ユーリ姉ちゃんの料理はすげぇ!ハズレMPポーションでゆでる……揚げる?のにもいろんな方法があるんだな」
 そうか。確かにポテトは二度揚げしなかったね。よく覚えてるね。カーツ君。
「さぁでできた!まずはニンニク入りの方。あ、ニンニクってハズレ増血薬のことなんだけど、臭いが苦手なら無理して食べないでね。入れてないのもあるから」
 と説明しつつ、早速味見というなの実食。
 あつ、あつ、はふ、はふ。
「おっいしぃー!」
 やっぱりニンニク最高です!うーん。
 揚げたてアツアツ。なんの肉か分からないけれど、ジューシーで臭みもなくて、ふっくら。
 ニンニクの香りと生姜の香り。それから少し香ばしい醤油の香り。混ざり合って、油と絡んで……。
 はぁー。これぞ、唐揚げ!味の濃い系の唐揚げ!
 ああしまった。これ、ご飯欲しくなる。
 ご飯欲しくなる!
「ユーリさんがとても幸せそうな顔をしている。ハズレ増血草はそれほど美味しいんですね。いただきます」
 ブライス君が唐揚げを口に運ぶ。
「あ、ちょっと待って!」
 忘れてた。


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ニンニクだよぉぉぉ!
ニンニクあれば、料理の幅がぐっと、ぐぐぐぐっと広がる。
ああ、そうだ。吸血系モンスターと戦ったりするときに、相手の力を弱らせる効果付き……
とか、ありそうだね。うん、絶対あるさ。わははははは

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