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「チョコレートを使ったお菓子をいろいろ作ってみます。試食していただいて、使えそうなものがあれば、料理人の方に作って持って行っていただければと、思います」
はい。私が作りますとは今度は言いません。持っていく者を作るのはプロにお任せします。
「ユーリちゃんっ!試食する、試食しますわ!いくらでも、試食します!」
リリアンヌ様がむぎゅぎゅっと。
「俺も、俺も試食するぞ!母上、陛下は男だ。味覚は俺のほうが近いはずだからな!」
ローファスさん……。
「ローファス、味覚に影響を与えるのは男女の差ばかりではないぞ。年齢によるものもある。私のほうがより陛下の味覚に近いはずだ」
えーっと。
「あのね、キリカもお手伝いするのよ!」
「俺も!何を作るか知らないが、手伝えることがあったら何でも言ってくれ!」
「ありがとう、二人とも。味見しながら一緒に作りましょうね」
味見しながらなんていった私が悪うございました!
ちょ、貴族組3人、キッチンに行こうとしないでください!することありますよね?その陛下と合う時のためになんか、いろいろ準備ありますよね?
というわけで、チョコレートの入った大鍋一つ。何を作ろうか。
とりあえず、普通に小さく小分けしたチョコレート。
新鮮フルーツにチョココーティング。
パンを一口サイズに切ってチョココーティング。
それから、ドライフルーツ入り、ナッツ入り
プリンもババロアもケーキも、なんだか卵と牛乳がないと作れないものが多い。
そうだ、クッキーならいけるはず。オリーブオイルクッキー作ってチョココーティングバージョンと、生地に混ぜて……って、ダメだ。
ハズレMPポーションを使ったレシピはまだ公開するわけにはいかない。
あと、チョコというとどんなお菓子があったかな……。
とりあえず、チョコバナナはおいしいです。はい。バナナがありました!
あ、そうだ。ポテチにチョココーティングとかも美味しかったよね。って、ポテチもハズレMPポーションレシピか。うーん。制約多くて思っていたほど種類作れませんでした。
試食用のチョコレートのお菓子ができたと伝えたら、ローファスさんが飛んできた。あ、シャルム様も飛んできた。
……これ、言葉通り。なんか、ビューンって。
ビューンって……。魔法じゃない物理的な、地面を蹴ってビューンみたいな……。
リリアンヌ様が後ろで怒っています。
「もうっ!置いていくなんてひどいですわ!」
ですね。
「おお、どれもうまそうだな!」
ローファスさんが手を伸ばした。
パチンッ。
はい。もちろん手を叩きますよ。
「ローファスさん、みんな揃ってからです。それに、ちゃんと手は洗いましたか?」
ガタンと音に視線を向けると、ふらついらシャルム様が椅子に手をかけたところだ。
「ま、まさか……S級冒険者で、公爵家の子息に対して……手を叩くとか……」
ぷるぷると小刻みに震えている。
あ!
不敬罪?
やばい。つい、小屋と同じ感覚で……。
「あ、あの……申し訳ご……」
謝罪の言葉を述べようと思ったら、シャルム様の大きな手が伸びて頭をわしゃわしゃとなでられた。
「うん、いいな。いい。権力におもねる人間ばかりでは国は亡ぶ。嬢ちゃん、ローファスのために、やはり家で働かないかね?」
「な、ダメだ、ダメだ!ユーリはココでは働かせない!俺んとこに来るんだからな!」
ローファスさんが私を背に隠した。
「ちっ。ローファスめ。ここで嬢ちゃんが働けば、お前ももう少し家に帰ってくると思ったんだがな……」
う、確かに。料理のために顔出しそうですね。
「ああ、それなら大丈夫だよ。ユーリ姉ちゃんが、ローファスさんにちゃんと家に顔出さないと駄目だって言って、約束させたもんな?」
「そうなのよー。冒険者として何してるのか話をして心配させないようにするって言ってたのー」
カーツ君とキリカちゃんの言葉に視界からローファスさんの背中が消えた。
「それは本当か?」
シャルム様が、ローファスさんを押しのけたようだ。シャルム様の顔が、近いです。30センチ前で私の返事を待っています。ううう、圧が。
「私たちが文字を覚えるために、絵本を家に取りに行ってくれることになりました」
むぎゅっ。
ぐおうっ!リリアンヌ様に抱き着かれる。
「ありがとうユーリちゃんっ!私、もう死ぬまで息子には会えないんじゃないかと思っていたくらいなの。ユーリちゃんのおかげで……」
あ、はらはらと涙が落ちてる。