199
そう、僕は毎日泣いていた。
何が悲しいのか。
何がつらいのか。
わからなかった。
それでも泣いていた。
いや、わからないからこそ泣いていたんだ。
「そう言えば、瞳はどうして孤児院に?」
「私はね、コインロッカーに捨てられていたらしいの。
だから、孤児院の先生がお父さんだったし。
お母さんだったんだ」
「そっか……」
「そのときはさ。
私が一番下でさ、私より誕生日が遅い真白が来たとき嬉しかったんだ。
『あ~、自分にも弟が出来たんだ』って……」
「そうだったんだ?」
「あのころは、楽しかったね」
「うん」
「お母さんに感謝しなきゃね。
私たちふたりを同時に引き取ってくれたんだから」
「女手ひとつで、すごいよね」
「うん!
凄い!凄いよね!」
「帰ってきたら、親孝行しようね」
「うん!
そうだね」
僕は小さくうなずいた。