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「うん」
なんのことかすぐにわかった。
「今日、愛の誕生日だよ」
「うん。
生きていたら16歳だね」
「私には今、彼氏がないよ……」
「作らないんだろ?」
「うん。
王子さまを待っているんだ……」
「王子さま?」
「女の子なら誰もが一度は見る夢。
泣き虫な王子さまと小さいころに約束したの。
ある子の誕生日になって。
その子に好きな人がいて、私に恋人がいなければ迎えに来てくれるって……
でもね……その王子さまは、そのことを忘れちゃっているんだ。
きっと私のことも……」
僕のことを言っているのかな。
ごめん。ごめんね。
その約束覚えている。
だけど……
「ごめん」
「うんん。
わかってた……
彼女が出来たんだよね?」
「うん」
瞳の声が涙声だった。
僕の声も思わず涙声になっていた。