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「いるよ」
「そうですか……」
水谷さんの声のトーンが下がる。
「その子の名前はね水谷奈々って言うんだ。
内緒だよ?誰にも言わないでね」
水谷さんの顔が、みるみる赤くなる。
僕も、自分で言って恥ずかしい。
こんな、告白の仕方。
バカみたいだ。
いや、僕は実際バカだけどさ。
「約束して下さい」
「え?」
「どこにも行かないって……」
「うん」
「約束して下さい。
私から離れないって……」
「うん」
「大切にしてくれますか?」
「もちろん!」
僕は、あいつらとは違う。
でも、なんだろう?
でも、なぜだろう?
涙が溢れる。
水谷さんが作った味噌汁の汁がしょっぱく感じる。