14話 KamiyoHachiyo その2
美優は瑠偉の問いかけに答えられずにいた、そんな態度に見かねて瑠偉は再び美憂に話しかける
「12年進んでいる、さらにそこから34年進みます。そうしたら医学や科学も発達しているだろうし、きっと会えますよ美憂」
「そうだな瑠偉、日も明けそうだし、織田さんそろそろ戻ってくるかな」
美憂がそう言った瞬間、焚き木の炎が激しく揺れた。
2人の視線が焚き木に向いた時、兼次がいなくなっていた場所に彼がいつの間にか座っていた。
「い、何時からそこに?」
と瑠偉、かなり驚いたのか若干呼吸が荒い。
美憂は口を開けて俺を見ていた。
「今来たよ、たった今な」
言い俺は3人を見渡す、麻衣が目を閉じてなにやら聞こえない音量で喋っているようだが触れないでおこう。
「最後に言った、社会情勢の事が気になるのですが、聞かせてもらえますか?」と瑠偉。
「そうだな、完全に明るくなるまで少し時間があるだろうから、教えてやろう。
俺には遠く及ばないが同じような力を持っている人間はいる。その中で徒党を組み、あることを成し遂げようとしている組織がある。
それがKamiyoHachiyo、日本人の中条希有って奴が仕切っていて世界中にメンバーがいる。彼らは『我々上位の人間が人々を支配しなければ、真の平和は訪れない』と言う理想を掲げ活動を行っている。ちなみに、数年前に俺にもお誘いが来たが断ってやった」
「それは世界征服とか言うやつですか?」と若干笑い気味に瑠偉が返してきた。
「言っておくがテレビや新聞などで騒がせている、テロリスト集団とは桁が違うぞ、国境や検問とか関係なく移動し何の前触れもなく証拠一つ残さず要人の暗殺もできる。
どうやって人々を支配するかはわからんが、各国の政府機関にメンバーが入り込んでいるらしい。それで3年ぐらい前だったかな? 彼らのやり方が気に入らなかったので死なない程度に遊んでやったら、その組織は壊滅寸前までいったな」
「つまりその報復を受けた結果が、今回の事件と言うわけか?」
「美憂よ、今回は理解できたようだな、だからと言って俺に逆恨みするなよ? 俺も被害者だしな、まぁ原因を作ったのは俺だが・・・」
そう言って麻衣を見たが自分の世界に入ったままいまだに帰ってきてない、意識が別の場所に言っているという事は、ちょっと胸とか触っても大丈夫かな?
瑠偉と美憂がそばに居ない時に試してみるか。
「体に触ると気づきますよ、セクハラとかしたら訴えますからね? 麻衣は私から時間を見つけて話しておきます」
見習い心理カウンセラーと名乗っておいて実は心を読む能力を持っていました。
なんてオチはないよな?
「なんだよ瑠偉、俺の心読んでいるのか? まさか・・・」
「読んでいるのではなく推測しているのです、話の流れでの視線を向ける位置や心身の仕草、その他企業秘密の情報を元に考えていることを推測しています」
瑠偉は自信に満ちた表情で答えた、最後に目線を俺に向けたまま顔を少し上にあげる仕草が微妙に俺の心をイラつかせる。
「瑠偉、ある意味お前は怖い子だな、そのうち親友無くすぞ・・・」
「そこはきちんと使い分けているので問題はありません、嫌われてもいい人や関係を持ちたくない人は、一定の距離を保ちつつ徐々に引き離しますから・・・」
「そ、そうか・・・その関係を持ちたくない人に、俺は入っているのか?」
「さあ? どうでしょうね」
なるほど、この性格の悪さは計算された人格なのか・・・
「性格悪いとか以後思わない様に、太ももにペン刺しますよ?」
「お、思ってねーよ・・・」
俺は立ち上がり、体をほぐすふりをして視線をずらす。
「とりあえず、少なからず、若干、俺にも責任はあるような気がするので、地球に戻ったら君たちのサポートはするよ、それに俺の秘密を知っているしな・・・」
「いかにも自分が関わっていない、と主張したそうですね」
美憂を見ると先ほどから焚火をずっと見ている、麻衣はまだ戻ってきてない。
「美憂、大丈夫か?」
「ああ、問題ない」
「お前ら一応は覚悟はしておいてくれよ、両親が寿命を迎えている可能性があるからな、それに東京に核ミサイルが落ちてきて街ごと無くなってるもしれない」
「織田さん」
「なんだ美憂」
「報復のあたりから話がそれた・・・」
「そ、そうか・・・なら続けるか」
辺りが随分明るくなってきたことに気づき、空を見ると半分ほど明るかった空は、すべての領域で明るくなってきた。