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「ここで、良いです」
いつもの十字路で、水谷さんとお別れ。
「あ、じゃぁね」
「土曜日、楽しみにしています」
水谷さんは、軽く会釈すると小走りで去って行った。
「あ……」
楽しみにしてるか。
なんか、物凄く楽しそうだったな。
なんだろう?
この感じ……
胸の中が温かくなる。
僕は、ひとりで自宅に向かった。
誰も居ない、その家。
家に入るとすぐにテレビをつける。
するとテレビの音が聞こえる。
それだけで、安心する。
暫くすれば、瞳も帰ってくるだろう。
僕は、ゆっくりとテレビの画面に集中した。