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オトネの身体が、ガクッと崩れる。
「父さま?母さま?」
オトネの目に涙が溢れる。
「私は、貴方を許さない」
オトナがそういってナイフを構える。
「あら?そんなんで私を倒す気?」
クレイジー・クレイジーが、嬉しそうに笑う。
「倒す倒さないの問題じゃない。
倒すのです!」
「ああああああ」
オトネが声を出して涙を浮かべる。
「オトネ?」
セロが、オトネの身体を引っ張る。
「ああああああああああああああああああああ!!!」
オトネの声が響く。
その声は、大地を震えさせた。
「あらあらあら?目覚めちゃった?」
クレイジー・クレイジーが、そういうとため息を付いた。
「あああ……あああ……ああああ!!」
「はぁ、目覚める前に殺す予定だったのになぁ」
クレイジー・クレイジーはニッコリと笑って手を降った。
「ばいばーい」
そして、姿を消した。
セロは、オトネの体を抱きしめる。
「大丈夫、もう大丈夫だから」
セロはなにが大丈夫なのかわからない。
でも、そういうしかないと思った。
「悪い」
ジャキがそういってオトネの頭をスリッパで叩いた。
「あああ……ぁぁぁぁ……」
そして、オトネは意識を失った。
「あ」
セロがジャキの方を見る。
「意識奪った」
ジャキがバツが悪そうにそういった。
「どうして?」
セロがそういうとジャキがいう。
「そうしないと壊れるぞ?」
「……そっか」
するとオトナがジャキの方を見る。
「貴方能力者?」
「うん。
記憶操作の能力者でもある」
「そう……だったらお願いがあるの。
セロさまとオトネの記憶を操作して」
「え?」
驚いたのはジャキだけではない。
セロもだった。
「私の記憶もなくして。
あとは適当に記憶をいじって」
オトナがそういうとジャキはなにかを悟った。
「待て!そんなの許さ――」
ジャキはスリッパでセロの頭を叩いた。
セロも意識を失う。
「これでいいんだな?」
ジャキがそういうとオトナがいった。
「ありがとう」
「アンタはどうするんだ?」
「私は、遠く離れた場所からセロさまをお護りします。
記憶があるままだと暴走して『テオスを倒す!』とか言いかねないから……」
「そうか。
じゃ、ヒーローを嫌うように記憶操作しようか?」
ジャキが冗談でそういった。
「それでお願い」
オトナが笑う。
「え?」
「お願いね」
オトナは、そういうと姿を消した。
「マジか?」
ジャキはため息をつきながらふたりの記憶を操作した。