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「なんか警察って感じじゃないですね」
奈留先生がそういうと大輔さんがいう。
「もともとニート刑事って誤認逮捕の捨て駒に作られたものらしいです。
なので、バンバン強引なことしちゃいます」
「そ、そうなんだ……」
「でも、来るの早くなかったですか?」
「うん。
由香ちゃんに渡すモノがあったんだけど。
忘れちゃってて」
「渡すもの?」
私は首を傾げた。
「はい、誕生日おめでとう」
大輔さんが、そういって小さな袋を私に渡してくれた。
「開けてもいい?」
「うん」
袋を開けるとクマのぬいぐるみが入っていた。
「あ……よかったね。
由香ちゃん」
奈留先生がそう言って私の頭を撫でる。
「……うん」
でも、なにか心に残る。
「ダメだったかな?」
大輔さんが不安そうな顔をする。
「うんん。
あの人が私のお父さんなの?」
「それは……」
吾郎さんが言葉に困る。
「そうだよ」
大輔さんがそういった。
「ちょっと!」
奈留先生が慌てる。
「でも、由香ちゃんは由香ちゃんだよ」
大輔さんの言葉が心に残っている。
「じゃ、静って人がお母さん?
私、お母さんに会いたい」
これはわがまま。
それはわかっている。
でも、でも、でも……
わがまま言いたいよ。
だって私は子どもなんだよ。
子どもなんだから……
「会ってみるかい?」
大輔さんの言葉に吾郎さんが戸惑う。
「でも、この子にはまだ……」
「子が親に会うのに理由なんていらないさ。
ただその先にあるのは希望とは限らないよ?
本当にいい?」
大輔さんがそういうと私はうなずいた。
涙をぼろぼろとこぼしてうなずいた。