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うとうと。
うとうと。
うとうと。
私はベッドのうえで眠りにつこうとしていた。
すると奈留先生の大きな声が聞こえる。
「なんですか?貴方たちは!」
先生が怒っている。
でも、次に出る言葉を放つ男の人の声が怖い。
「おい!ここに由香って子どもがいるだろ?
だせ!」
なんだろう?
私に用があるの?
私は、何も考えずに出た。
「なに?」
「お?お前が由香だな?」
男の人がそう言って私の方を見る。
「だからなに?」
「ははは。
あいつの面影あるじゃないか」
「あなた誰?」
私がいらついていると男の人が言う。
「俺は武だ。
お前の父親さ」
何を言っているの?
「由香ちゃん聞いちゃダメ!」
奈留先生が目に涙を浮かべてそういった。
「うるさい!」
そう言って武って人が奈留先生の顔を殴る。
「やめて!」
私は大きな声を出した。
「なんだ?お前も殴られたいか?」
武って人が私を睨む。
怖い。怖い。怖い。
「子どもを殴るって酷いことをいうね」
そういって現れたのは吾郎さんだった。
「お?お前知っているぞ。
静の元旦那だろ?
確か英雄だっけか?」
「……」
吾郎さんだよね?
英雄さんじゃないよね?
私の頭は混乱した。