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 私は怖かった。
 親しくなったらくるものがある。
 それは離れるということ。
 さよならをするということ。
 嫌われること。

 今までそんなことばかり。
 だから友だちなんていない。
 だから友だちなんかいらない。
 私はひとり。
 ずっとひとりでずっとひとりでいいんだ。

 だから、このお兄さんに痛恨の一撃を与えようと思う。

「私のお母さん人殺しなの」

 そう、こう言えばみんな離れていく。
 なにこの3歳児って感じだよね。

「そうなの?」

「うん」

 あれ?なんか感触が違う。

「君は人殺しじゃないんだよね?」

「え?そんなの当たり前じゃない」

「でしょ?だったら心配しなくていいよ」

「どうして?みんなそれで離れていくし。
 みんなそれで私を傷つけるんだよ?」

「そうだね。
 悲しいことだよ。
 でも、それは逆に君を傷つけた人は君に対して安心感があるんだよ」

「どういうこと?」

「だって、本当に君のことを怖がっていたら君を傷つけるなんてことできないのだから……
 傷つける人は傷つけることを知らないし、自分は傷つけられないって思っているんだ」

「わかんない」

「んー
 そうだな、君は怖くないってことだよ。
 ごめんね、僕バカだからうまく伝えれないや」

 なんだろう。
 この人、綺麗ごとを言っているわけじゃない。
 傷つけられる人の気持ちを知っている。
 何を言っているかはわかんない。
 でも、なぜか嬉しい。
 嬉しいはずなのに涙が出た。

「……」

 静かに静かに涙を流した。
 声を出して泣いたら怒られる。
 それを知っているから……
 だから私は声を出さないで泣くことを覚えた。
 悔しくて涙が溢れることばかりだった。
 でも、この感情で涙がでることは初めて……

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