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「馬鹿なのですか?」
直球だと思う。
「そうだね。
馬鹿だから就職試験に落ちまくるし、要領も悪いから彼女もできない。
なんにもないからね僕には……」
私は思った。
ああ。この人は私なんだ。
未来の私なんだ。
このまま行けば私はこの人のようになる。
そう思った。
だけど、どうでもいい。
私は私。
この人はこの人。
「興味ないよ」
私はどうしてこんなに冷たい言い方しかできないのだろう。
我ながら思うよ。
私、本当に3歳なのかって。
でも、人だから……
成長するんだ。
「まぁいいよ。
人って3歳よりも前の記憶ってあんまりないらしいから。
傷をつけない限り君は僕のことを覚えてないだろう」
「そうだね。
明日にはあなたのことを忘れているよ」
「じゃ、忘れられないよに明日もまた来るよ」
「……」
私は呆れて何も言えない。
「また明日も来てもいいかな?」
「それなに?」
「って、そっか。
知らないよね」
大輔さんは、残念そうにため息を吐いた。
なにそれ?
私が嫌いなのは知識がないこと。
あなたが知っていて私が知らないなんてなんか嫌だ……
そりゃ大人なのだから子どもの私が知らないことなんて山ほどあると思う。
でも、そんなの……
「まって!調べる!」
私は、そういってポケットからスマホを出した。
「え?スマホ持っているの?」
「うん」
私は適当に返事をした。
そして調べた。
「バラエティ番組の終わりの挨拶?」
「そうそう。
このあと『いいよ!』っていうといいだー」
「そうなんだ」
「うん。
かなり昔に終わった長寿番組なんだけど」
「うん。
私の生まれる前だね」
「そうだよね」
大輔さんが小さく笑い私の隣に座る。