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 ニート……
 働けるのに働けない人のことだよね。
 確か、政府がそういう人に仕事を与えるべくある組織を立ち上げることになった。

【ニート撲滅委員会】

 でも、いざそういうことをしても経験のない人を雇う民間企業は少ない。
 だから、色々もめたけど。
 民間がダメなら公務員として雇うことを決めた。

 っていうことまでなら私でも知っている。
 テレビで毎日やってたから……
 私の大好きなブリキュアの代わりにこのニュースをずっとやっていた。

 でも、そんなのはどうでもいいこと。

 私には関係ない話なのだから……

「で、どうして私に構うの?」

「んー僕はぶっちゃけて仕事ができない。
 だからできそうな仕事を探し家出の常習犯の君を保護しにきたんだけど……
 簡単にはいかないね」

「保護?大輔さんに私を護れるの?」

「どうだろ……
 僕さ、こう見えてものすごっく弱いんだ。
 僕のキックはパンチ並みってね」

「つまんない」

「だよね」

 大輔さんは困った顔をしている。

「……じゃさ、保護したんだからもうここにいる意味ないよね?」

 冷たい言葉なのは私でもわかる。

「どうだろうね。
 ほっとけないんだ」

「え?」

「僕は家族にこそそういうのは少なかったけど……
 小さい頃からずっといじめられていてね。
 それが嫌で引きこもってしまったんだよ」

「それで?」

「よくさ『学校が嫌ならいかなくていい』って言っているじゃん?
 それってさ逃げたあとの保証はしてくれないんだよ」

「どういうこと?」

「逃げて学校を辞めてもそのあとの仕事先を見つけるのは難しいってこと。
 逃げたらそこで試合終了、逃げてもそこから試合開始。
 頑張って仕事を見つけて働いてもやっぱりいじめられたりしてつらい思いをする」

「そんなの私には、関係ないよ」

「うん。
 だから思ったんだ。
 誰かの逃げ場所になりたいなってね」

「そっか」

「だから君の逃げ場に僕はなりたい」

 この人は馬鹿なのだろうか?
 それが私の本音だ。

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