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ついた場所は見覚えのある場所だった。
「あ……先程の?」
孤児院の奈留先生がそういって私の方を見る。
「はい。では、お仕事完了ってことで……」
大輔さんがそういってその場を離れようとする。
私は大輔さんのスーツを引っ張る。
「誘拐してくれないの?」
私の言葉に大輔さんがうなずく。
「補導かな」
「嘘つき!」
私は、小走りで孤児院の中へ走った。
「はぁ」
大輔さんのため息が聞こえた気がする。
私はひとり。
どこに行ってもひとり。
どこに行けば私はしあわせになれるの?
ただ悲しくて涙が出た。
「泣き虫?」
大輔さんの声が聞こえる。
「なんでいるの?」
「男は泣いている女の子を放っておけないんだよ」
「ナンパ?」
「それはちょっと違うかな」
「ロリコン?」
「それもちと違う」
「じゃなんで?」
「んーなんかドラマでさ。
こういうことが気づかれてあとで揉めるってシーンがあるから先に言っておくね?」
「うん」
「仕事だよ」
「警察ってそんなこともするの?」
「警察って言っても僕は下っ端の下っ端。
いわゆるニート刑事だよ」