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誰もいない。
誰も知らない。
私は誰にも必要としてくれない。
だって私は捨てられたのだから……
このコインロッカーで――
でも、ここで待っているときっと誰かが迎えに来てくれる気がする。
優しい誰かが……
暖かい人が。
私を求めてくれる。
そんな気がする。
「ねぇ、こんなところでなにをしているのかな?」
ひとりの男の人が声をかけてくる。
見た瞬間わかった。
この人は白馬に乗った王子様にはなれない人だ。
なので、私は無視をした。
「えっと僕は枚方警察署に来たばかりの久留里大輔っていうんだ」
「私を逮捕しに来たの?」
「逮捕っていうかなんというか」
大輔って人、本当に警察かな?
もしかして誘拐犯?
でも、誘拐されるのもいいかもしれない。
だって私に居場所なんてどこにもないのだから……
「私を誘拐してくれる?」
「え?」
「どこにでもいいから連れて行って!」
私がそういうと大輔さんはうなずいた。
「わかった。
じゃ、ついてきて」
私は、今日死ねるんだ。
お姉ちゃんがいる場所に行ける。
もう殺人犯の娘は嫌だ……
私は、死を期待して大輔さんについていった。